表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

愛する二人の女性と夕食を

三十六歳くらいの清酒さんのバレンタインデーの様子です。

 職場に到着しロッカールームでカバンを開け必要なモノを取り出そうとしたら、見慣れる小さな赤い何かが入っているのを見つけた。巾着状にラッピングされた手のひらに乗るくらいのサイズのそれは多分中身はチョコだろう。

「さっそくチョコですか~もうモテる男はちがうな~なんで既に結婚している清酒くんに渡すのかな~! 俺なんて誰のモノでもなくフリーなのに」

 俺の様子に気がついた同じ課の徳丸さんがからかってくる。俺はその言葉に苦笑しながら首を横にふる。

「いや、これはそういうものではないよ。多分娘からのもの。家を出る前にコッソリ俺の鞄に入れてきたんだろう」

 この包装紙には見覚えがあった、リビングの隅に置いてあったから。幼稚園で誰と誰と誰と……だかに渡すのとかで妻のわかばと一緒にお菓子作っていたようだ。案の定リボンに繋がっているハートのカード広げると『パパダイスキ♥』という子供の字のメッセージがある。

 しかも娘の言うところの『まだオトモダチ』に配ったとされるモノのサイズよりやや大きめなこの包みを見ているとにやけてしまうものがある。娘からのバレンタインプレゼント恋人や妻にもらうのとはまた違った喜びがあるものだ。

「どっちにせよ、リア充自慢か~? カワイイ妻と娘から愛されて幸せ者ですってか! ムカつくな~」

 その言葉、否定する要素もないので『まあね』と言いながら頷くと叩かれた。

「そう言っている内に、『パバ臭いしウザいから近づかないで!』とか言われて嫌われるんだからな! その時泣くなよ~」

 徳丸さんの言葉に苦笑を返しつつ考える。妻からは兎も角、いつまで娘からのバレンタインプレゼントを貰えるのだろうか? という問題を。俺は世間で娘に嫌われる親父的な不潔でだらしない事はあまりしないから、臭いとか言われる事はないだろうが……娘は幼稚園児でありながらもう女子な会話をしてきている。彼氏なんか出来るのも早い気がする。今だけの楽しみと思っておくべきだろう。


 聖なる日らしい日中はビジネスライクにチョコお贈り合うという儀式を楽しみ一日が終わる。既婚男性の昼間のバレンタインなんてこんなものである。


 そして帰りに寄るのはお花屋さん。わかばが昨晩チョコケーキ作っていたようなので、スィーツは止めておく。

 わかばに贈る花束と一緒に娘への花束もお願いする事にした。

 薔薇はバレンタインにベタすぎる気もして、わかばには少し大人っぽく紫のチューリップの花束を、そして娘には可愛い感じのコスモスの花束を作ってもらった。玄関まで迎えてくれた妻も娘にそれぞれ花束を贈る。

 わかばは雑誌の記事で特集したこともあり紫のチューリップの花言葉知っていたようで照れた笑みを浮かべ小さな声で『ありがとう嬉しい』と可愛く喜んでくれて、娘の彩香は花束とダンスしてはしゃいでいた。

「ねえねえ、このお花はどういうお花なの?」 

 ニマニマと花言葉がかえて、彩香が聞いてくる。散歩の時、道端の花見てよく妻と娘の間で交わされる言葉。彩香にわかばはニッコリ答える。

「コスモスといってね、花言葉は【乙女の真心】で彩香にピッタリの花なの」

 彩香は満足そうな表情で大きく深呼吸してから、台所の方に歩いていく。

「ママ~早くお花さん花瓶にいれよ! うちでノンビリしてくつろいでもらわないと」

 二人が花を生ける作業をしている間に俺は背広を脱いでくることにする。二つの花瓶に生けられたそれぞれの花の乗ったテーブルに座って三人で夕食を食べる。恋人同士のバレンタインディナーにはない、ホッコリとした幸せなバレンタインディナー。コレはコレで最高なバレンタインデーの過ごし方なのかも知れない。

 

ちなみに紫のチューリップの花言葉は【永遠の愛】となります。そしてコスモスは【少女の純潔】という花言葉もあったり。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ