ブレイン
背中が赤い蜘蛛がいる。
昔一世を風靡したセアカゴケグモである。
この物語は、デング熱が話題のこの時期に、政治的小説も作ってみようかなという試験的なものである。
と言っても作者に科学の知識はほとんどないので、いつも通り主軸は人間関係です。
プロットは何となく頭にあるのですが、まだ固まっていないので少しずつ書いていきます。
それでははじまりはじまり。
「ママー、クモー」
幼児が手を伸ばした先にはセアカゴケグモ。
「触っちゃだめよ」
と母親と思しき女性が言う。
「何で?」
という疑問に、母親はクモさんがびっくりするでしょ、と答えて女は子供の手を引いた。
厚生労働省のブレインと呼ばれる男は頭を抱えていた。
セアカゴケグモが話題になったのが何年前だと思っている!今更俄かにニュースにしやがってマスコミめ!
そりゃ今では全国に繁殖しているが、セアカゴケグモで死ぬ人数なんぞ自殺者に遠く及ばないんだぞ!
暇ならそっちやれ!!
と叫びたいのだが彼はマスコミにそんなことを陳情している暇はない。
彼はただのブレインであって役職が特別あるわけではないのだが、現状官房長官が発表しなくてはならない状況で、国家公務員たる彼はもう今徹夜でその答弁を書き直したりしているのである。
彼はふと、「国語文法マニア」の女の存在を思い出した。
彼の妻である。
元をたどればとある藩の主の漢学指南役で、その家系ゆえに代々国語教員を務め、母親は免許はとったものの専業主婦、妻は免許すら取ってはいないが大学の専攻は国語文法、最早偏執狂と言っていいほどに
「正しい日本語」
に固執し、大学で「正しい日本語は時代とともに変わる」と教わり衝撃を受けて文法史を1から学び・・・といった経歴の持ち主である。
勿論現在の仕事も「正しい日本語で仕事する」をモットーに、敬語を間違えれば客に怒られるような職場で仕事をしている。そしてやつは勉強熱心だ。
そういえば昔、スポークスマンになりたいと言っていたし、エゴグラムでも広報向きだと診断されてたな。
やつに喋らせるか?
彼にふとそんな考えが浮かんだが喋るのは厚生労働大臣か官房長官である。
彼の妻の出る幕はない。
朝にならない夜。秋の虫の声も聞こえないオフィスで、彼らはあーでもないこーでもないと日本語を修正していた。