Force side-1
今回はウィルとニアを主軸に4人視点を入れ替えながら書いてあります。
「はっ!」
バキィ!
「ごあぁ! いきなりなにしがやるんだよ!?」
「いや、なんか今ものすごく失礼なことを想像された気がしたんだが……」
「はぁ!? そんな訳のわからない理由で俺はアッパーをされなくちゃいけないのかよ」
アレスは顎をさすりながら文句を言ってくる。
この様子だとこいつじゃないのか? おかしいな? そう言ったことを基本的に考えるのはこいつなんだがな?
こいつじゃないとすれば、一体誰だ?
「なぁ、ウィル。本当にここAG未発見の遺跡なのか?」
「さぁな? ケイトの情報だと、教会未発見の遺跡らしいぜ。と言うか何でそんなこと聞くんだ?」
アレスが言う“AG”とは、古代の遺産を回収、管理、研究、慈善行為を行っている団体正式名称“アーティファクト・ガードナー”ことだ。一般的には略称として“AG”もしくは着ている服の感じから“教会“と呼ばれている。
まぁ、本当にこの遺跡が未発見なのかそれとも発見済みかは、おそらく目立った仕掛けの解きかたから、なんとなく予想はついたが、わざとぼかして問い返した。
「だって遺跡とは言え、ケイトの情報じゃ、ここ元々は軍事施設なんだろ? 外側はあれだけ見つかりにくくしてあったのに、中は大した仕掛けはないんだぜ」
『あぁ、ここまで見つかり難くしてあるなら機密性の高い施設のはずだ。中のセキュリティもそれに相応しくないとおかしい。なのに、ここは機密性の薄い施設よりもセキュリティが少ない。幾らなんでも不自然すぎる』
アレスがここの遺跡のおかしなところ述べると、普段は大雑把な性格をしているベリアルも細かいところを指摘し同意した。
妙なところで鋭いとなこいつらは……
とは言え、こいつら人が解除している間後ろから見てだけだどな。
「確かに、そうかもな。でも、あいつは情報屋だぞ。教会に同じ情報を売っていても何の不思議はないだろ?」
俺はそんな二人の違和感に対して俺は適当にはぐらかせて答えた。
「いや、確かにそうだけど、国の決まりじゃAGの許可のない遺跡での無許可の発掘はご法度だろ? もし、ケイトが同じ情報をAGの連中に売ってたら、最悪だぞ?」
「そうだけど、その時は顔を見られる前に逃げればいいだろ。それに、連中が調査に来てたら、もっと大規模な物になっているっから、ここに来るまでに会っているだろ。それにどうやら次が最深部みたいだし、そこで嫌でもわかるだろ? それに宿代と食事代は稼がないといけないし」
「まぁ、確かに今日のメシ代と宿代くらいは稼がないと」
『そうだな。あいつの言うとおり奥に行けば分かるかもしれないしな!』
アレスの言葉はもっともだし、あながち間違いではないが、俺は言いくるめて奥へとある予想を胸に奥に押しとどめて進んで行った。
「おい、アレス誰かいるみたいだぞ!」
「あぁ、あの制服は教会の連中だな」
俺はアレスの言う二つの影を見た。顔はよく見えないが、薄暗い遺跡では目立つ白い制服と銀色のセミロングとエメラルドグリーンのサイドポニーと二人の持つ翼をモチーフにしたクロススピアと炎の様に赤い弓は特徴的で、一度見たら忘れられない髪と同様目立つ。だから、すぐにそこに居る二人が誰なのかわかった。
まぁ、教会の連中が誰かいると思ってはいたけどこいつら。
と言う事は、今回の情報はあいつがケイトを金で雇って言わせた偽情報か。
考えてみれば、おかしいとは思ったんだよな。ケイトがあんな安い店で酒を飲んでるなんて。
普段は高い店で高い酒をゆっくりと飲んでいるからなあいつの場合は……
まぁ、文句を言うだけ無駄だろうな。絶対にスルーされるんだろうしな。あの人にはその辺では勝った事はないしな。
「来たみたいね。ニア」
「えぇ、そうみたいね。レン」
私とレンは声のした方を見た。片方の獣人は知らないが、もう一方の男は声ですぐにわかったし、顔は見えないけどあの茶色いぼさぼさ頭、間違いない。それに、エルフであるレンはおそらく視認できているはず。
それにしても今月分の給料の大半を使っただけはあるわね!
さすがケイト、評判通りいい仕事してるわ!
それんしても、ほんとにウィルは彼女の情報しかあってにしないのね。
なんかうらや……いや、いや、なに考えてるの? そんな訳ないでしょ?
彼女があいつに物凄く頼りにされていて、うらやましいとか。 絶対に、絶っっ対にないんだから!
所詮は腐れ縁の幼馴染! そう私とあいつは昔からう言う関係! だから、付き合いだって私の方が長いんだからっ!
「久しぶりね。元“アーティファクト・ガードナー”第八調査部隊所属ウィリアム・シュヴェアト」
「やっぱり、ニアか。と言う事は隣にいるのは、レンか。ほんと久しぶりだな、二人とも」
俺は、教会が連中居るのは見当付いていたがまさか二人だったとは少し嫌気がさした。特にニアは一度暴走すると手がつけられないうえに厄介以外のなにものでもない。
「久しぶりだと言うのに随分と嫌そうね」
私は久しぶりに会うと言うのに嫌そうな態度に少し頭にきて睨みつけた。
と言うか、久々に会った幼馴染と同僚を見てその態度はないんじゃない!?
「別にそう言う訳じゃないさ。と言うか睨むな。暴走委員長」
「誰が、暴走委員長か! 誰が!」
「お前だよ! 暴走委員長!」
俺はこちらを睨みつけるニアに対して昔のあだ名を言うと思いっきり叫んだ。それにしても懐かしいなこのやり取りは。いつ以来だっけ?
ってか、俺から見ればこいつ以外にだれが居るって感じだよ?
「あのねぇ、私がそう呼ばれたのは昔の話でしょ!」
「そう言うな。教会に入ってなければ、お互いにまだ学生だろ?」
『マスター、それより本題に入った方がいいのでは……』
「そうね」
ウィルと懐かしいやり取りをしているとセラフィムの一言により、私は本題に入る事にした。
「何故私達に黙って教会を抜けた理由を聞かせてもらうわよ?」
「なるほどなぁ。お前達がここに居る理由はそう言う訳か。だが断る」
ウィルは質問に対し答えるのを何のためらいもなく拒否した。
「って言うか、お前全然変わってないな。黙って出っていたのに、ここで聞かれて理由をはいそうですかって答える訳ないだろ」
こいつはやれやれと言った感じで肩をすくめて呆れ変え顔をする。
「そう。なら、レン、セフィラム、デュナメイス! 力ずくで聞きだすわよ!」
『了解しました』
「あーあ、完璧にキレちゃったよ。こうなったら、あたしでも、止められないよ。と言うか、あたし、ウィルと全然話してないよ」
『しかたありません。今は援護しましょう。その後彼女をなだめて、それから彼とは話しましょう』
「そうね。その後なだめられる状態だったらね」
私がセラフィムを構えて駆け出すとレンは渋々とデュナメイスを構えた。
「相変わらず、暴走しやすいな。おい、アレス、ベリアル、応戦するぞ」
「あぁーーー! 話が全く見えねぇよ!?」
『まぁ、いいじゃないか。俺としては一向に構わんぞ』
「終わったらちゃんと説明してもらうぞ!」
俺が剣を鞘から抜いて構えると話に全く言っていいほどついて行かなくなっていたアレスは自分と対照的にノリノリのベリアル構えてそう俺に言った。
「そうだな。終わった時二人とも五体満足だったらな」
「怖い事言うな!」
「そこまでしないわよ!」
俺の返答に対してニアとアレスは叫んで突っ込んだ。
まっ、俺はこの二人に負けることはないとも思うけどこの体力馬鹿は……頭脳面でちと不安だな。
あれ位言って炊きつけておいた方がいいだろ。
レンとアイコンタクトをし、戦闘態勢に入る。それと同時に白虎の獣人も先程のほうけた態度を消してベリアルを構え、勢いよく走ってくる。
獣人族は近接戦闘において強い能力を発揮するものが多い、油断は禁物だ。
「はぁ!」
レンが数本の矢を放った途端、木の矢は火を纏って獣人に襲いかかった。
「当たるかよ!」
しかし、白虎の獣人はベリアルを軽く振っただけで易々と火の矢を弾いた。
魔力を帯びた矢を弾くなんて中々の腕だが、それは全部注意を矢に注目させるための囮。
私はそのすきに白虎の獣人の懐に入り込む。
「相変わらずの戦法だな」
だがあと一歩と言うところで、ウィルに阻まれてしまう。
「……っ!」
まずい、一端、態勢を……!!
「ほい」
「きゃぁ!」
『マスター!?』
剣でセラフィムを弾かれると同時に足払いを食らい、視点が一転し仰向けで転んだ。
「くっ……」
セラフィムを取ろうとするも、首筋に剣先を突き付けられてしまう。
あまつさえ、ウィルの表情には余裕の笑みさえも浮かべている。ムカつくわね。
もともとこの戦術は、私達二人じゃなくて、あいつがいてようやく完成する技なんだから!!
「その戦法さぁ、そこの筋肉バカみたいな初めての相手には効くかも知れないけど、俺みたいに知ってる奴や熟練者には効かないと思うぞ」
「そう……かもねっ!」
「ぐっ!」
俺がそう忠告するとニアは起き上がる時の反動を利用し、勢いよく俺の腹に一発蹴りを入れて先程弾き飛ばされたセラフィムのもとへ向かって行った。
その間、アレスが「誰が筋肉バカだ!」と怒鳴っているのが聞こえたが、今はそれどころじゃなかった。
ったく、今のは効いたぞ……!!
『マスター、今のは、さすがに強くやり過ぎでは……』
「大丈夫よ。ウィルの実力は貴女も知っているでしょ。それに白虎の獣人の実力はわからないんだから、これくらいはやらないと」
「いや、セラフィムの言う通りだと思うぞ。お前ら、スカートの丈短いんだから」
ウィルは私に蹴られた腹部を抑えながら私達から目線を反らしながらセラフィムの意見に同意した。
「ッ!?」
私達はそれを聞いてスカートを押さえて、ウィルに尋ねた。
「見た(・・)の(・)?」
「いや、まぁ、何と言うか……17になって水玉ってどうよ?」
ウィルは少し顔を赤らめて言葉を少し濁して肯定した。
「人のスカートの中見ておいてなによ、その感想!」
こっちはレンとのさっきのやり取りで少しばかり意識してるのに!!
「見たんじゃねぇ! 見えたんだ! だいたいお前ら、前々から思ってたんだけど、もう少し控えめに動けよ、スカートの丈短いんだから!」
「しょうがないじゃない! 戦闘や調査、発掘がメインなんだからこの方が動きやすいの!」
「だとしても、もうちょっと工夫しろよ! せめてスパッツを履くとか!」
「うるさいわね! 余計なお世話よ!」
『なぁ、アレス。別に裸見られた訳でも、見た訳じゃないのに、あの二人何ムキになっているんだ?』
「さぁ? 人間とエルフ、ダークエルフは基本的に価値観が近いけど、俺ら亜人種や、エルフとダークエルフを除いた天族、魔族は価値観が遠いからなぁ」
私達の話を聞いていた白虎の獣人と昔資料で見た“金剛の戦斧ベリアル”の会話は確かに彼の言う通り種族関係上当然と事だけど、これは、女性として今の会話は決して許す事ができない。これならいろいろと注意して来たウィルの方がましよ。このさい、白虎とベリアルには反省してもらうかしら。
それ以前に何で説明口調? いったい、誰に説明しるの?
「セラフィム、こうなったら、教会を抜けた理由を聞きだす前に二人とも徹底的にボコすわよ!」
『マっ、マスター! 落ちついください! それは本来の目的からそれています!』
『こうなった彼女はもう誰も止められないのは、貴女がよく知ってるでしょ。それより、レン準備できましたか?』
「えぇ、できたわよ。それに、そこの白虎と斧の会話は私も頭に来たわ! じゃあ、行くわよ! ニア!」
「何か失礼なこと言われた気がするけど、わかったわ!」
いろいろと二人には失礼なこと言われたけど、その事に対する言及は後にしておきましょう。それより、今は目の前の二人に集中しないと。それにレンの方は、準備できているみたいだし、私もセラフィムの矛先に雷を集中させ、構えた。
白虎の獣人は何故私達が怒っているのかなんかいま一理解できないって顔ね。その辺の理解を美的センスの違う獣人に言うのも酷だけど!
「ファイア・ボール!」
「サンダースピア!」
レンが手を振り下ろすと同時に炎の球体がウィル達に向かって落ちていくと同時に私はセラフィムに雷を纏わせ再びウィル達に向かって駆け出した。
「おい、アレス! 悪いけど踏み台になってもらうぞ!」
「ちょっと待って! 人を踏み台にすんじゃねぇ!」
『おいアレス! 前!』
「うをぉ!」
俺はアレスを踏み台にして跳躍し、ニアの攻撃を回避する。
アレスも文句を言いながらもベリアルのとっさの忠告でニアの攻撃を防御した。と言うか、お前らは一発喰らって先程の発言について反省しろ
幾ら何でも、あれはデリカシーが無さ過ぎるだろ。
「私達の攻撃を防いでも――」
『まだ、次がありますよ!』
「そいつはどうかな?」
『セラフィム、何でウィルが横に避ければすむ攻撃を上に避けたと思う?』
『しまった!? 彼の目的は本命を打ち消す事です』
「えっ!?」
「残念だったな。お前らの戦術パターンは相変わらずなんだ! だりゃぁぁぁ!」
白虎の獣人とベリアルの言葉を聞いてセラフィムが慌てて警告したので、私が上を見ると落下してくるファイア・ボールめがけて青く光る魔石を投げつけていた。恐らく水か氷のものだろう。レンの放ったファイア・ボールは蒸気をあげて消失していった。
「おっしゃ!」
『成程。考えましたね』
「でも、忘れてない? 私達エルフは無詠唱で魔法が使えると言う事を!」
水の魔石でファイア・ボールを相殺させた俺に向けてレンは炎の矢と二発目のファイア・ボールを同時にはなってきていた。
「しまった!?」
うかつだった。エルフの特性を忘れていた。連中、人間と違って魔力……特に魔法を扱うことに関して特に長けている。俺としたがすっかり忘れていたぜ。
空中に居ても物理的な攻撃である矢は剣で防御できるが、非物理的な攻撃である魔法は防御しても反動は矢の比較にはならない位強い物が来る。
それに亜人種は魔法に対して抵抗力は低いんだよなぁ。物理攻撃なら多少壁にしても大丈夫なんだが。まっ、いつも楯にしてるけど……
だから、さっき逆の属性の効果をもたらす魔石でかき消したんだがなぁ。今からもう一個取り出して投げても間にあわねぇよな。
「こうなりゃ、自棄だ!」
俺は不時着覚悟で無理やり体制を右に変えてファイア・ボールを回避した。間一髪でファイア・ボールを回避する事には成功した。
まぁ、髪が少し焦げたみたいだがそれぐらいで済めば御の字だ。
「なんて無茶苦茶な。あんなことしたら、普通は不時着するわよ」
『と言うかマスター、このまま行くと彼の落下地点丁度私達の真上ですよ』
ウィルの無茶な行動に唖然としている私にセラフィムは冷静にウィルの落下地点を指摘した。
「嘘ぉ!?」
「ぐをぉ!」
それを聞いた私は慌ててウィルを回避し鈍い音を上げてウィルは不時着した。その瞬間、何足元から“カチッ!”と言う小さな音が聞こえた。
「今の音ってまさか……」
「……ごめん。なんかスイッチ踏んじゃった」
人間より感覚が発達しているエルフであるレンが音の事を恐る恐る聞いてくると、私はゆっくりと振り向き答え謝罪した。
「……マジかよ」
「あぁ、俺もしっかり聞こえたな」
俺が着地のさい思いっきり打ちつけた背中をさすりながらそう言うと、エルフと同様感覚が人よりすぐれているアレスはうなずいた。
はぁ、またか、またなのか!?
「お前なぁ、何で昔からこうもトラブルばっかり起こすんだ!」
「うるさいわね。今回は私だけのせいじゃないでしょ!」
「そうだな! 今回はなっ! だとしても小さい頃から、一人で暴走してトラブルを起こしていたのは、どこの世間知らずの箱入り娘だ!」
「誰が世間知らずの箱入り娘か!?」
「お前だよ! 八歳のころサーカスの動物が可哀そうと言って、舞台裏に忍び込んで檻から出したり、大して泳げないのにおぼれた子供を助けに行ったりしてただろうが! 後始末は誰がしてたと思うこの箱入り暴走委員長!」
「昔の話でしょ! と言うか、なにランクアップさせてるの!」
こいつはいつも、いつも面倒を起こしやがって(人の事を馬鹿にして)!
ほんとにこいつはっ!!