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第一話「旅の始まり~It meets the sword.~」 ウィルside

この作品は主人公ウィルとニアの視点主事にして書いています。

基本、他のキャラの視点は間書か、本編に入るときはDouble、Triple、Forceの文字が入ります。

「やれやれ、やっと着いたか……」

ここまでの遠い道程を思い出して、俺はため息を漏らす。

ここは港町・リエールの外れにある巨大な岩山だ。

リエールは、国一番の漁獲量を誇っている漁村だったのが、温暖な気候と透き通るように美しい海、通称『涙の海』と新鮮な魚介類が安価で食べられる事から、いつの間にかリゾート地区として有名になった町だ。今では、それを目当てに国内はもちろん、海外まで観光客が来るほどだ。

もっとも、俺達の目的は観光じゃない。そうでなければ、歩いて三時間もかかるこんな岩しかない場所に来る訳がない。とっとと、宿に荷物を置いて海に行くに決まっている。

あぁ、自己紹介がまだだったな。俺の名はウィリアム・シュヴェアト。

愛称はウィルで、トレジャーハンターを生業としている。ここには相棒のアレス・テネシーとともにやってきている。

目的はもちろん、仕事だ。

途中、険しい道もあったがあいつの情報が正しければこのあたりにあるはずだな。

「お~い、ウィル。宿はまだか~?」

……人が考え事をしている時に、のん気なもんだ。

俺が面倒そうに、後ろを振り返るとそこには、馬鹿……ではなく、二足歩行で歩く虎がいた。

白い毛並みの虎で、傭兵時代に鍛え上げたというたくましい胸板が目立つ。背中には、馬鹿でかいバトル・アックスを背負っている。

こいつが、俺の相棒のアレス・テネシー。種族は亜人の一種で、白虎の獣人である。

力は強いが、頭の方はからっきし。

要するに、脳みそまで筋肉の馬鹿野郎だ。

「ん? おい、なんだ? この岩山は……って、ちょっと待ってよ!」

 呆然(ぼうぜん)と岩山を見上げるアレスを無視して、俺は岩山の丁度死角になっている部分へと向かう。

「なるほどなぁ」

 俺は死角になっている部分を眺めてニヤリと笑う。

 確かに一見自然にできた岩山に見えるが、注意して調べると、所々人工的に掘られた跡がある。

 おまけに、素人には解らないだろうが、この岩は魔法で固めた物だ。所々に魔法の痕跡がある。

こいつは当たりだな!!

「……ったく、いきなりどうしたんだよ?」

「アレス、丁度いい。ちょっと、ここを叩いてみろよ」

「はぁ?」

 俺は追い付いて来たアレスに近くの壁を指さした。まぁ、予想通りアレスは困惑した表情を浮かべた。

「なんだよ? 藪から棒に……」

「いいから叩け!」

「ごぁ!」

 なかなか実行しない能筋もといアレスの腹を、俺は力一杯蹴り飛ばす。

「わぁったよ! やればいいんだろ! やれば!」

 アレスはぶつくさ文句を言いながらも俺が指さした壁の前に歩いて行く。

そして、

「だぁっ!!!」

力強い掛け声ともに壁を殴りつけた。

 すると、壁に亀裂が走り、あっという間に音を立てて崩れ落ちた。

やがて中から〈SEVEN・STRATUM LAB〉とか書かれた鉄製の看板が溶接させた鉄製の壁が現れた。

さすが、獣人だ。一撃で砕いたか。

「うぉ、何だ! これ!?」

アレスは突然現れた扉に驚いて叫んでいる。

 よし、情報通りだな。

「行くぞ」

「あっ、おい! 勝手に行くなよっ!!」

俺が扉を開けて、ずんずん進むのを見て、アレスも慌てて後を追っていく。


 遺跡の内部は、岩石でのカモフラージュによる物ではなく、自然に出来た洞窟を研究施設に改造したようだ。しかし、奥に進んでいくごとに、落盤を防ぐ為に溶接した壁や床が目立つようになってきた。どうやら、間違いないようだな。

しかし、足元が暗いのはまずいなぁ。よし、火でもつけるか。

「……おい、ウィル。なんで俺達はこんな所にいるんだ?」

「発掘のために決まっているだろう?」

「俺が聞いてんのはそう言う事じゃねぇ!!」

「耳元で大声を出すな、うるせぇから」

荷物から赤い宝石(握りこぶし大)とランタンを取り出す最中に、大声で怒鳴り散らすアレスの大声に俺は耳を塞ぐ。

……と言うか、何を当たり前の質問しているんだ?

俺達はトレジャーハンターだぞ? 発掘以外で何の用で遺跡に来るんだよ。

「発掘のためなんて聞いてないぞっ! 疲れているからたまには骨休めに行こうって話じゃなかったのか!?」

「あぁ、あれは嘘だ」

俺はここに来る前にアレスに言った方便をあっさり否定する。つうかまだ信じてたのか?

「だってそう言わなきゃお前ついてこないだろうが」

「帰る」

アレスは出口に向かって、元来た道を戻っていったが、俺はその一瞬の隙にアレスの背中に担がれた斧を掏り取る。

「じゃあ、これは売ってもいいんだな?」

『売るって!? 俺の意見は!?』

背負われていた斧は売るという単語を聞き、喚き散らす。俺は斧が喋るのを構う事無く、むしろもう日常的な事なので、聞き流す。

「聞くわけねぇだろ」

「お前が決める事でもない! 」

アレスは勢いよく戻って来て、そのまま俺の頭をぶん殴り、喋る斧を取り返した。

「痛てぇな!?  殴ることはないだろう!  冗談が通じない奴だな……」

「お前が言うと冗談に聞こえないからな」

『同感だ』

頭を殴られて文句を言う俺に、アレスは睨みながら反論し斧もそれに同意した。

『もっとも、掏られた事に気付かないお前も悪いぞ』

「うっ……すまねぇ、ベリアル」

先程からぺらぺらしゃべるこの斧の名前はベリアル。正式名称は“金剛(こんごう)(せん)()・ベリアル”と呼ばれるアレスの家の家宝だ。

見た目は柄に翡翠(ひすい)が埋め込まれた少々古臭い片手斧だが、その正体は、かつての大戦で魔族と亜人の国『ロンギス』が使用していた “インテリジェンス・アームズ・イブリース”の一つだ。

“インテリジェンス・アームズ”というのは、意思ある武器たちの総称で、要するに俺達みたいに考えたり、話したりする事が出来る武器の事だ。

大昔、大戦が行われた時に二つの国が神と崇めていた二つの武器から作り出した複製品。

『イブリース』と言うのは、大戦で『ロンギス』側が製造したものだという意味を持つ。

ちなみに、もう一方の人間・天族の国『デュラン』側が製造したものは、『レイディアント』と呼ばれている。

……それにしても、あの馬鹿は加減を知らねぇな。ベリアルを売る事など出来る訳がないのに。

インテリジェンス・アームズの声は、起動していれば誰でも聞く事ができる。だが、起動させるには適合者、つまりその武器を使う事が出来る者が必要になり、使用できるのもその適合者だけだ。合わない奴が使っても、武器の本当の力を引き出す事が出来ない。

早い話が、ベリアルを扱う事も起動させる事も出来るのはアレス以外にはいないと言う事だ。

つまり、さっきの言葉はただの冗談だ。

「酷いなぁ、アレス。俺とお前の仲じゃないか」

「出来れば解消したくなるぐらい嫌な仲だけどな……」

俺が笑いながら言うのに対して、アレスはげんなりした顔でため息まじりに答えた。

酷い言われ様だが、こいつの言い分もわからない訳ではない。

コンビ結成以降、金銭面を俺が管理している為に、こいつを振り回してばかりだしな。

「何でこいつと組んだんだろ……」と小声で呟いていたが、元の声がデカイからまる聞こえだ。まぁ、愚痴ぐらいは聞き逃しといてやろう。

スルーしておいてやるのが、大人の対応だ。

「よし、これで明るいな」

とりあえず、持ってきたランプに先程の宝石を放り込む。すると、中に火が灯り、明かるくなった。よし、準備完了。

「さぁ、下への階段を探すぞ」

『ところでウィルよ、この遺跡の誰からの情報だ?』

「いつも通りケイトからだ」

その名前を聞いた途端に、アレスは足を止めた。

「ケイトって、ダークエルフのケイト・ユニバースか?」

「あぁ、そうだ。何か問題があるか?」

露骨に顔をしかめて尋ねてくるアレスに、俺はあっさりと肯定し問い返した。

「あるに決まってるだろ。確かに情報は的を射ているのが多いが、値が張る上に時々ガセや、他人をおびき寄せるための偽情報も平気で流すんだぞ!」

「そりゃそうだが、仕方ないだろ。他に信頼できる情報屋となると限られちまう。それに今まであいつから得た情報で、ガセはなかっただろう?」

「だが、偽の情報で酷い目にあったのは、数え切れないだろうが!!」

「バカ、情報屋は皆そんなモンだろうが。だいたい、他の連中は値段の割にはハズレが多すぎだ。それなら、多少のリスクに目を瞑って稼げる情報を持つケイトが一番だ」

いくら顔馴染みの情報屋でも、顧客に不利な情報を流さない保障はどこにもない。情報屋は金を払う奴の味方だとみんな、理解している事だ。

ただ、他と比べて多くの正しい情報を提供する者を信用する。それだけの話だ。

俺はケイトの情報収集能力を高く買っている。だから、多少のリスクも値段の内と割り切る。それがプロってモンだろう?

「悪いが、俺達は帰らせてもらうぞ! 宿くらいとっているだろ? 先に行っているから場所を教えろ」

『そうだな。オレも間接的とは言え、あのふざけた武器の世話になるのは我慢できない。仕事は一人でやってくれ』

あ~、予想通りの反応か。アレスはケイトを、ベリアルもケイトの武器を嫌っているのは知っていた。だから多少の拒否反応は出るとは予測していたが、そこまで拒絶しなくてもいいじゃねぇか。

ま、ここで「はい、そうですか」と帰す訳にはいかない。何故なら……

「宿なんて取ってあるわけないだろう」

『「はぁっ!?」』

驚きの声を上げるアレス達だが、取っていないものは取っていない。

……本当に二人(武器と契約者だが)揃って能天気だな。

「あのな、そもそも金がないから仕事するんだろうが。残っていた有り金も情報代で、全部消えちまっている」

宿を取っていないという事実に固まるアレスとベリアルに俺は財布を取り出して、逆さに振る。無論、中には何も入っていない。

「そもそも、こうなった原因はアレス。お前が際限なくバカ食いしているからだ」

俺の言葉にアレスの顔に冷や汗が浮かびだす。

獣人は強い力を持っているが、ドワーフや竜人と違い、スタミナがない。(それでも、人間と比べれば随分あるが)故に、スタミナを回復させる為によく食べるのだが、その量は、人間が食べる一日の食事の二倍だ。

それだけならまだ良いが、アレスの場合は元が大食いの為に平気でその六倍は食ってしまう。

おかげで、俺達は万年金欠。大赤字だ。

「まぁ、どうしても行きたくないと言うなら仕方がない。お前の毛皮を剥いで、金持ちに売りつけるという手段もあるが……」

 俺は腰から愛用のロングソードを抜き、アレスの目先に突き付ける。

「わ、わかった! ついて行く! ついて行かせてください!! だから剣をしまってくれ!」

「そうか、分かってくれて何よりだ」

 青ざめた顔で懇願するアレスに満足した俺は、剣を鞘に収める。

 まぁ、毛皮をはいで売るっているのは何度も考えたんだよな。普通の動物にしろ、獣人にしろ、白虎の毛皮って珍しくて高値がつくからな。

 もっとも、この馬鹿でも戸籍や人権はあるし、何よりまた新しい下僕、じゃなかった。相棒を探すのは骨が折れる。今回は脅しだけにしといてやるか。

今回だけは、な。

『やれやれ、このやり取りもこれで何度目だ?』

「しょうがないだろ。金がないと生きていけないんだ!俺計算とか細かい事は苦手だから、ウィルが財布を握っている以上逆らえないんだよ!!」

『確かに。お前が財布を握ったら、一日も持たずに破産するな』

「そこはフォローしてくれよ!! 俺の武器だろうが!」

『事実だろうが』

アレスの反論もとい自虐を、あっさり切り捨てるベリアル。

やれやれ……どっちが主人か分からないな。

「おい。今、オレの事を馬鹿にしなかったか?」

「いやぁ、気のせいだろ」

アレスは睨みながら尋ねてきたが、俺は笑ってごまかした。

……と言うか、馬鹿の癖に妙な所で鋭いよな、こいつ。

もしかして、表情に出ていたのか? だとしたら気をつけないとまずいな。

「ん?」

ふと、足元に違和感を覚えて、その場に立ち止まる。

「どうした、ウィル?」

「アレス、ランタンを持っていろ」

「? おぉ」

突然、床下を探る俺に怪訝そうな表情を浮かべるも、とりあえず言われた通りにするアレス。

今踏んだ床が、僅かだが軽く感じた。もしかしたら……

俺は床を丁寧に探っていくと、小さな窪みを見つける。

窪みを力強く引っ張ると、床はあっさりとはずれて下に向かう階段が姿を見せた。

『隠し階段か!!』

「よし、降りるか。アレス」

「了解だ」

アレスを先頭にして、階段を下りていく俺達。本当は遺跡に慣れている俺が前を行くのが筋だ。

だが、こういった遺跡には罠が張り巡らされている事が多い。鎧でも着ているならともかく、生身の人間なら、矢が刺さっただけでお陀仏だ。その点、体が丈夫な獣人のアレスならばちょっとやそっとの罠は問題ない。万が一、毒系の罠が設置してあっても、後ろにいる俺が助け出せる。だから、これが一番正しい。アレスもそいつを理解しているから文句を言わずに前衛を行うのだ。

「アレス、異常はあるか?」

「今の所はないな。少々埃くさいだけで、死臭もないようだ」

アレスは猫科だが、嗅覚も多少利く。やばい匂いを嗅いだら真っ先に知らせる役割も持っている。ちなみに死臭がすれば、確実にヤバい罠が張られている証しだ。

しかし、意外にも、何もないまま簡単に下の階まで到着してしまった。

「ウィル、着いたぜ」

何もないのは、有り難いがどうもおかしいな。

 もしかしたら、たまたまって可能性もあるが……用心しておくに越した事はないな。

「ウィル? どうした、急に黙りこくって……」

何の返答もしない俺に不安を覚えたのか、アレスが声をかけてきた。

……お前はもう少し違和感を覚えろ! 隠してあるんだから罠があると考えるのが普通だ。

それがないっていうのは不自然だって何故分からない!?

「あぁ、気にすんな。ちょっと考え事をしていただけだ」

「そうか? それなら良いが」

まぁ、良い。俺の考え過ぎだって可能性もある。このバカ(アレス)をみならって、考え込むのはやめだ。

「じゃあ、ここからは俺が行く。ランタンよこせ」

「はいよ」

俺はアレスからランタンを受け取ろうと手を伸ばした。


 突然俺達の目の前にフヨフヨと浮いた球体が現れた。


見た目は、子供が遊ぶボールのような大きさだ。違うのは、正面に赤い宝石が埋め込まれたようなでかい目玉が付いている。その目は俺たちをじっと見ている。

「あっ……」

「!? しまった!!」

くそっ! 罠に気を取られ過ぎて、機械兵(ガーディアン)の事を失念していたぜ!!

機械兵(ガーディアン) とは、昔の人間が研究施設を守る為に配置した魔導人形だ。侵入者には容赦なく襲ってくる上二、魔法を動力としているためにいつまでも動き続ける厄介な兵隊だ。

対策は見つからないようにやり過ごすか、さっさと破壊するかの二択。

ただ、機械兵(ガーディアン)の姿は様々で、遺跡が重要であればあるほど、機械兵(ガーディアン)の数と強さが変わってくる。つまり、手強い機械兵(ガーディアン)が配置されている遺跡には、貴重な宝がある可能性が高い。だが、それに比例して遺跡の攻略難易度もかなり上がってくる。なんせ、機械兵の種類によっては、大型モンスターを一撃で始末できるとんでもない物まであるらしい。

今、目の前にいるのは、“スフィア”。こいつは攻撃をしない監視型の機械兵で、とても弱い。しかし、侵入者を見つけるとたちどころに警報を鳴らして仲間を呼ぶ、アラーム機能が付いている。早く壊さないと非常にまずい!!

だが、スフィアは大きな目を赤く光らせて、機械独特の無機質な音声を鳴らし始めた。

『侵入者を発け……』

「せい!」

 俺が剣を抜く前に、スフィアの声が完全に出る寸前で、アレスがベリアルを叩きつけ、機能を停止させた。

……あ、危なかったぁ。と、思わず胸を撫で下ろそうとするも、鉄の表面がひしゃげる音は一向に鳴り止まない。

「うるせぇな!!」

その場の騒音で、現実に戻る。何の音だよ!?

 音のするほうを見れば、アレスが容赦なく機能が停止したスフィアに攻撃を続けていた。

 なんだ? 丸い物を見て猫科の血が騒ぎ出したのか? よく見ると、表情が生き生きしているし。

さて、そろそろ止めるか。正気に戻す治療と……

「うらぁ!」

「がはぁ!!」

腹いせも兼ねて。

 俺は未だに攻撃し続けていた馬鹿に回し蹴りをかました。

 そして、そのままアレスの背中をグリグリと踏みつけ始めた。……意外と踏み心地良いな。毛皮の絨毯みたいだ。また今度やってみよう。

「痛い! 痛い! 痛いから踏むな! 踏むなぁ!」

「うるせぇ! やり過ぎだ! もう売れねぇじゃねえか!」

 俺の足もとで、もがくアレスにさらに体重をかけた。

……う~む、本当にこいつの毛皮を剥ぐか? 良い絨毯になるぞ。

……って違う!!! 何を考えているんだ俺!? 今はこいつのやり過ぎを怒る場面だろうが!!

まったく、まるで力加減を考えていねぇな。完璧にスクラップじゃねぇか。

「い、いい加減に足をどけろ!」

「うをぉ!」

 アレスは体に力を入れて、足蹴にしていた俺を跳ねのけた。

しまった、油断していた。続きはまたの機会にしよう。

『それにしても、体格差があるのに、何でいつもアレスが倒されるんだ?』

「ん? そういや、なんでだろうな?」

 確かに誰がどう見ても、俺とアレスじゃ、体格的に筋肉質の馬鹿のこいつの方が勝つとしか考えられないよなぁ。

 仮に俺がアレスと同じ体格であっても、基本的な体力は獣人の方が上だ。本来なら、アレスは俺に殴られても、びくともしない。

 もちろん、普通ではない方法を使っているから出来る事だ。ま、その辺は昔師匠に習って通りにやっているだけど。

 それにしても、なんで気付かないんだろうな? 傭兵時代はそれなりに、名が通っていたし、

少し考えれば分かるのに。 ……って、その辺こいつに期待するだけ無駄か。何事も力づくに解決しようとする単純な性格だし。

「で、何でここまでやったんだ?」

「いや、日頃たまったストレスの発散に、つい……」

「ついじゃねぇ!」

「がぁ!!」

 俺はアレスの顎にアッパーをかまし、それをくらったアレスはゆっくりと倒れて行った。

 やれやれ。愚痴程度なら、大目に見てやるけど、さすがに今回はやり過ぎだ。

「だぁぁぁ! いつも、いつも、何かあるたびに人の事を殴りやがってぇ!」

「だまれ、単細胞。そもそもお前の自業自得だろうが!」

 顎を殴られたのに、あっさり起き上がり再び文句を言うアレス、本当に無駄に頑丈な奴だ。

普通なら、数分は目が覚めないはずなのにもう起きてきやがった。

「良いか、次はぶっ壊すなよ。パーツや魔石は金になるんだから」

「へいへい、分かりましたよ」

『その返事は分かっていない奴が言う台詞だぞ』

立ち上がりながら適当に答えるアレスに、突っ込むベリアル。

……まったくその通りだ。

まぁ、次同じ事をやったら毛皮を剥ぐって脅しておけばいいか。冗談ぬきの本気で。

「行くぞ」

「あいよ」

今度こそ、ランタンを受け取り、再び俺が先頭に戻って、探索を再開しようとしたその時だ。

ピーピーピーピーピーピーピーピーピーピー!!!!

いきなり、アラーム音が部屋中に響き始めた。

『「「!?」」』

俺達はほぼ同時に振り返ると、スフィアの残骸からアラーム音が鳴っているようだ。

まだ、アラームが生きてやがったのか!? 雑な仕事しやがって、このバカは!!

「この馬鹿虎!! 壊すなら何できっちり壊さねぇんだよ!?」

「きちんと残骸を確認しない手前にも責任あるだろう!! この腹黒冒険者が!!」

「良い度胸だ。どうやら、本気で毛皮を剥がされたいみたいだな!」

俺は、腰に刺したロングソードを抜刀する。だけどアレスの武器(ベリアル)と違って俺の剣はなんの変哲もない代物なんで、このまま打ち合えばちょっとばかし不利だ。

「【大奮発だ! コレ(・・)も使って】望み通り剥いでやるよ!!」

腰のバックから『魔石』と呼ばれる石を取り出し、抜き身の刃に添わせると、刀身に薄い緑色のオーラが現れる。剣に風を纏わせることで強度を補助しているわけだが、これでもベリアルに及ばないが……そこは、剣の腕前でフォローすれば問題ない。

「いつまでもやられっぱなしだと思うなよ、ウィル!!」

『おっ、良いねぇ。久しぶりに楽しめそうだぜ!』

アレスの方もベリアルを構えなおして向き直る。ベリアルも周囲の土を集めていく。

 上等だ、返り討ちにしてやるよ!! 

『侵入者ヲ発見! 侵入者ヲ発見!』

『警告!! 警告!! コレヨリ先ノ侵入ハ強制排除トナリマス!!』

『コレヨリ先ノ(以下略)』

アレスと睨みあってほんの数秒のうちに、大量のスフィアが押し寄せてきやがった。

「……この続きは片付けてからだな」

「……そうだな」

お互いに、相方を仕留められないのを残念に思いながら正面の機械兵に向き直った。

まぁ、アレスに関してはただの感だけどな。

 運が良い事に、数が多いが戦闘力の高い機械兵はいない。スフィアがほとんどで、後は鉄製の皿が宙に浮いた姿のディスクという奴の二種類だ。どちらも戦闘に不向きなタイプで助かった。

『警告!! 警告!! コレヨリ先ノ侵入ハ強制排』

「うるせぇよ」

 俺が目の前で警告を言い続けるスフィアの目に剣を突き刺して、中の動力線を断つ。

すると、スフィアは地面に落ち、そのまま機能停止。

「さて、行くか。ベリアル」

『そうだな。アレス』

『警告無視ノ為、強制排除ヲ実行!!』

 アレスはディスクの撃ってきた光線を弾きベリアルを構えた。

『この程度の攻撃でこの俺にダメージを与えられるとでも思っているのかぁ!』

 それに対してこの斧はノリノリである。

 まぁ、もともと細かい事は気にせず好戦的な性格ではあるらしいからな。当然と言えば当然か。

「今度は壊すなよっ!」

「善処しよう!!」

 アレスは目の前のスフィアを斬りながら、次の標的に向かった。

 いや、そこはちゃんとやってくれ!

 まぁ、この馬鹿にそれを期待するのは無駄か。

 さっさと終わらしちまおう。


 数分後――

『これでラスト!』

 ベリアルの一言と供に最後の一体は真っ二つになり、爆散してしまった。

 だから、壊すなっていったのに……

 まぁ、約六割がたは解体可能だし、大目に見てはやるか。

「ごぉ!」

 でも、一発は蹴っておこう。

「さてと、解体するか」

 俺はダガーナイフ一本と取り出してスフィアの解体を開始した。

「つー、にしても、前々から思っていたけどお前どこからだしてるんだ?」

「あぁ、お前に見えない工具入れだ」

 面倒さいんで適当に答えておいたが、実際は『収納』の力を持つ魔石に入れている。まあ、収納物の出し入れをするときの様子を目にすれば『封じている』の方がニュアンス的にあっている気もするけどな。

 さっきの戦いでも使った『魔石』っていうのは読んで字のごとく、「ある一定性の魔力が込められた石」の事だ。用途は多数で光を込めれば辺りを照らし、風を込めれば空気に流れが発生する。魔法の使えない俺みたいな奴でも手軽に使える便利な物のため、日用品から兵器まで。特に魔法の技術が奔流していた時代の遺物である古代の(こういう)施設では多量に使われている。【今、解体しているスフィアの動力源も、この石だしな。】

 本来なら壊れた魔石は使い物にならなくなるもんだけど、トレジャーハンターであり、機械に少々詳しい俺はこういった機械を分解して魔石・パーツともども目ざとく回収しているってわけだ。

 (転売可能なパーツは多いんで、金銭に余裕のない俺達にとってはこれも貴重な資源だ。……聞いた話によると、ちょっとでもミスったら『ボンッ』となる可能性もあるんでリスクもあるわけだが。

まっ、転売可能なぶん、流通も普及も結構しているから安いけどな。

「――っと、これで取れるモンは全部か。それにしても、大戦時の機械と言うわりによく持つよな。こいつら」

『まぁ、同じ時期に造られた俺が動いているのだ。こいつらも動いていても何の不思議もないだろ』 

 確かに同じ時期の造られていたこいつらが起動してるんだし、同じ時期に造られた機械兵が動いていてもなんの不思議もないか。

――それにしても、何黙ってるんだ? アレスの奴。

普段は人作業してる時は「黙れ!」って言っても黙らず話しかけてくるのに。

 いつもがいつもなだけ相当キモいな。これ。

「お前、さっきから急に黙り込んでいるんだ?」

「いや、俺には見えないという箱と言うのはどんなものかなぁって」

 あぁ、成程その事か。何を真剣に考えているんだ、こいつは。

 ちょっと考えれば、嘘だってわかるだろうが。

 あっ! こいつの頭にそれを期待するだけ無駄だし。

「それより、さっと行くぞ!」

 俺は未だに気付かず、考えているアレスにスフィアから抜きとったパーツを入れた袋を投げつけると「ふぎゃっ!」と言う言葉と同時に、頭からズンと言う鈍い音がして押しつぶされた。

 あー、抜き取ったパーツ大丈夫かな。壊れたら金になんねぇし。

 まぁ、アレスの心配はしなくて大丈夫だろ。

 獣人族の体はどの種族よりも丈夫だしな。

『大丈夫か? アレス』

「あぁ、なんとか。ウィル、テメェェェ!」

 アレスは押しつぶしていたパーツを持ち上げて立ちあがってきた。

やっぱ、大したダメージにはなってないねぇか。

さすが獣人。体だけは頑丈だな。

「アレス、袋の中は無事かぁ」

「えっ、あぁ、無事だけど」

「そうか。なら、さっと行くぞ」

「おう……って、違う!」

 数歩進んだところでアレスが突っ込んできた。

 ちっ、誤魔化しきれなかったか。

 にしても、ノリツッコミとは味な事を。

 馬鹿(アレス)のくせに。

「何だよ。何が違うんだよ」

「お前なぁ、俺とこれ、どっちが大事なんだよ?」

「そんなの決まってるだろ。パーツだ!」

何を当たり前の事聞いてるんだ? こいつは?

 だいたい、そう簡単にしないだろうが、お前は。

 実際、「お前最低だぁ!」とか言って騒いでピンピンしてるじゃないか。流石の俺でも死にそうなったら心配するぞ。……多分!

「それにお前、いつも言ってるだろ? 金がないのは死んだのも同然って」

「そこまでは、言ってねぇよ!」

 アレスは手に持っていた袋を放り投げてキレやがった。

 よく言うぜ、普段あれだけ「金! 金! 金!」言ってるくせに。

 ってか、こいつ、今何を投げた!?

『おい、アレス、あれ投げてよかったのか?』

「あれって何を?」

『お前が今投げた奴だ』

「えっ! あっ、あぁ!」

 ベリアルの言葉で何を投げた事を気がつきやがった。

 ったく、やっと気付きやがったか。


 ……って、呆れてる場合じゃねぇ!


 俺もアレスも急いでキャッチしようとしたが、時すでに遅し、袋はバキッと言う鈍い音をたてて落下した。

「おい、アレス。中身無事か?」

 袋の中身を確認してたアレスに尋ねると、

「サァ、急いデ下に向かオうゼ!」

 なんか、胡散臭(うさんくさ)(さわ)やかな笑顔を浮かべて答えた。

 ってか、何故にカタコト!?

「アレス、怒らないから、正直に答えろ?」

「イヤ、大しタ事無かっタゾ。数枚にヒビガ入ッタ位で!」

 アレスは俺と目を合わせないように先程と同様にカタコト口調で答えた。

 ってか、そのカタコト口調やめろ! なんか腹立つわ!!

『嘘を言うな。9割方粉々(こなごな)だったろ』

 アレスの答えを聞いたベリアルが呆れながらそう告げた。

 助かった。ベリアルが持ち主に似て馬鹿で。

 まぁ、音の具合とカタコト口調でバレバレだったがな。

「おい、アレス……誤魔化そうとするとはいい度胸じゃねぇか?」

「えぇ、ちょっと待て、お前にも責任の一端(いったん)は……」

「知るかぁ!」

 ゲシッ!

 俺はハイキックをかました。

アレスは「んな、理不尽なぁ!」の一言ともに床に倒れて行く。

「ったく、正直に答えればこんなことにはならかったのに」

「嘘だぁ!」

 俺の一言を聞きガバッと起き上がった。

 相変わらず、復活が早いな。

「何が嘘だって言うんだよ」

「さっきも言ったけど、いつも、いつも、ボカボカ殴りやがってぇ!」

「失礼だな。今のは蹴ったんだ!」

 とうとう、蹴りと殴りの区別もつかない位馬鹿になったか。

 いや、ちっとやり過ぎたか?

「お前なぁ、なに人をかわいそうな物を見る目で見てるんだよ!?」

「いや、別に見てないぞ」

『言っておくがお前が考えているような事にはなってないぞ』

 あっ、何だ? 違うのか。

 よかったぁ、そこまで馬鹿になったら俺でも手のつけようがないしな。

「じゃあ、何が問題なんだよ?」

「だから、人が口答えすれば蹴り、文句を言えば殴り、逆らえば踏みつけ、お前は俺を何だと思っているんだぁぁぁぁ?」

「もちろん、脳筋(あいぼう)だ」

 何をこいつは当たり前の事聞いているんだ? こいつは?

「おい、お前今、変換不可能な文字で相棒ってんだろ!?」

 チッ!

 馬鹿のくせに何でこいつはこう言った部分でだけは鋭いんだ。

「あぁぁぁ、もうやってられねぇ! 俺は帰る!」

「あっ、おい、だから宿はとってないって言ってるだろ」

「知るかぁ!」

 あぁ、完全にキレちまったか。

 しょうがないな、最後の手段使うか。

 これを使うと金がかかるからあまり使いたくないんだが。

「あーぁ、(もう)かり次第では、人がせっかく、リエールのシーフードステーキ(おご)ってやろうと思ったのに」

「!」

 おっ、見事に足を止めた。

 これは後一息だな。

 さすが、リエール限定の魚料理!

「いらなのかぁ? 残念だなぁ?」

「えっ、ちょっ! マジ!?」

「あぁ、マジだ。一皿限定だけどな」

「よーし、張り切っていくかぁ」

 よかった単純で!

 でも、大丈夫か? こいつ?

 今時、小さな子供でも引っ掛からんぞ。

 思いっきりベリアルも「やれやれ」とか小さく呆れてるぞ。

 何か見てるこっちがこいつの将来が不安になるな。

 まぁ、扱いやすいに越した事はないか。

 取り敢えず、シーフードステーキは安いのでいいな。誰も高い奴を奢ってやるとは言ってないし。

 うん、嘘は言ってない。嘘は!


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