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第二話 お嬢様≠お姫様

二人が連れ立って歩いていく。

道は完全にアスファルトである。勿論人工大地(メガフロート)上なので当然のことではあるのだが。


設備の特異性から分かるように道が広い。

地平線の彼方は見えないが、それでも大概のものは見える。

何より太陽光線の地上からの照り返しがキツイ。

「誰だよ全く…暑さ対策とかすればいいのに…」

陽一はそう思いつつ隣を歩く彼女を見る。すると視線に気が付いたのか彼女――クリス――と目が合った。

「どうかしました、ハル?」

「いや、暑くないかと思ってさ」

「いいえ、私が着用しているこのドレスは中に簡易軽量クーラーを搭載しているのですよ?」

それは羨ましすぎるだろう。

「ハルも欲しいですか?」

「う~ん、考えておくよ。売ってるのかい?」

するとクリスは何処から取り出したのか電卓を片手にキーを叩き始めた。

「洋服の繊維は一応ポリエステルで、クーラーは太陽パネルで……」

もう悲惨なことになりそうなので計算は結構です…という間も無く計算結果を提示された。

「えっと…?1.0×10^9$?」

ついつい有効数字で求めてしまったじゃないか。しかもドルかよ。

「ドルなのは当たり前です。世界通貨ですよ?まあ日本円は未だに価値は高いですけれどね」


そうなのだ。今や生粋の経済大国と再び成り上がった日本は為替レートが1ドル=50円なんていうありえない状況に瀕している。

結果、産業は完璧に空洞化。今や国内で活動している企業家はいないだろう。

だがしかし、輸入産業は異常に儲かる。

一昔前は国際通貨機関だったか?が安定化を目論んだが上から七番目くらいまでの候補が軒並み女性関係のスキャンダルで落っこちて信用ゼロになってしまってからは音沙汰が無い。解散したらしいが。


閑話休題。


そして、そんなクリスと陽一の後ろを壁のように歩いてくるのがいかにもな見た目で周りを圧倒するボディーガードの皆さんだ。

クリスに聞いたところによると何でもムエタイの最強の伝道師だとか眉唾物な肩書きを持つ方もいるようだがそれにしてもオーラが…。

「俺がこの状態じゃなかったら逃げ出してるな…」

ぼそっと呟いた陽一の言葉を聞いたクリスは苦笑いを浮かべて言った。

「でもですよ、この前新しく入られた超能力者と仰る方は凄かったですよ?

 自分の身体にニコニコしながら真剣を身体に刺し込んでいましたから」

「それはただの危険人物だ」

最も、ただの(・・・)ではないかもしれないが。





30分くらい歩くと目的地である寮らしき建物が見えてきた。

クリスが後ろを振り返って言う。

「皆さ~ん!今日の護衛お疲れ様です。もう今日は外出しないので結構ですよ~」

その言葉を聞いたガードさんは一斉に無線機を取り出した。

だからどこからだよ、というツッコミはもう入れない。

やがて何処からともなく現れた数機のヘリコプターから降ろされたロープを昇っていく。

「いや、降りてもらえよ!別に降りられないスペースじゃないだろ!」

するとガードさんたちは陽一のほうを向いて白く光る歯を見せた。

そしてそのまま飛び去っていった。

「何なんだあれは…」

呆然とする陽一の横でクリスが告げた。

「護衛ですよ?」

いや、分かってますけどね。





寮にチェックインを済ませた陽一はクリスと共にラウンジにいた。

「ここは何処かのホテルか?」

「海外からVIPを招いたりしますからね…陽一もそうなのでしょう?」

その純粋な瞳を向けられた陽一は目を逸らした。

「いや…俺は別に…」

クリスは周りを見回すとソファに座った。

「ね~え、ハル?私、コーヒーが飲みたいんだけど」

さて、何処のどなたでしょうか。

「ハル~?」

陽一のことをこう呼ぶのは現時点でただ一人。

「クリスサン?あなたって人はそういう人ですか…」

クリスは妖艶な笑みを浮かべた。

陽一は悟った。ああ、これは間違いなく被り物をする人だと。

「アハハハハ…だって護衛がいると迂闊な事出来ないじゃない?

 だから猫を被るのが常套手段なのよ」

「そうか…じゃあさっきの泣きっぷりも真似だったと言うことか…」

「さっきのって?」

「クリスが俺が学生じゃないのかって問い質した時の奴」

「……………」

固まった。

「もしかして…素?」

クリスが頬を赤らめた。

「ばっ、馬鹿にしないでよ!?そんなわけ無いじゃない」

反応が面白いので陽一はからかう事にした。

「そうか~クラスメートに教えてやろうと思ったんだけどな~」

クリスの顔はもはや赤を通り越して黒くなっている。

「そう…そうなのね…?陽一の部屋に間諜を送り込むわ」

「それは勘弁してください、クリスサン」

陽一はソファから立ち上がってクリスの前で土下座をした。

「お~ジャパニーズ土下座ね!許してあげるわ」

もちろん今時そんなあほな冠詞はついていない。

何故ならばここで陽一とクリスが話しているのは日本語ではなく英語だからだ。


気を取り直して再び陽一はソファに座った。

「それにしてもクリスがね…第一印象は完全にお姫様だったのにな~」

「残念でした。お嬢様とお姫様は常に等しいわけではないのよ?

 ちなみにこのドレスも下のスカート部分は着脱可能よ」


「それを俺に見せた理由は?」

「どうせクラスの人たちは私をお姫様として扱うだろうし、ストレスの処理場にするためね。

 何たって私はアルフォードの娘なんだから…」

そこまで言ってクリスは表情を曇らせた。

空気を払拭したのはアナウンスだった。

「滑走路に着陸する機体がありますので、滑走路内に進入しないでください!」

「このラウンジで放送しても意味が無いだろうに…」

そう言って滑走路のほうに目を向けると確かに飛行物体が着陸態勢にあった。

しかしあれは…?

隣に来たクリスも首をかしげている。

「ねえハル?あれって…スペースシャトルよね?」

昔地球とISSを往還していた宇宙船の先駆けであるスペースシャトルそのものだった。

「最後の機体が退役してから確かオークションに掛けられて、好事家に落札されたんだったか」

「ということは、あれはアームストロング家の坊ちゃんね」

「まあ順当なところに渡ったとも言えるのか…。

 しかし、スペースシャトル単体で飛行は出来るのか?」

「やや滑空に近いものがあると思うのだけれど。どうせ弾道飛行でもしたんでしょう」

そうだな…とうなずきつつ陽一は再びスペースシャトルを見た。



西日に照らされたスペースシャトルは、美しかった。

割と早めに更新入れました。

登場人物はまだまだ来る予定ではあります。

多いな。

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