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閃光のF  作者: kkkkk
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第2話 逆襲のS②

 佐藤と村田が巡回する間も、SNSでは「#渋沢狩り」のタグが付いた情報が発信された。位置情報は三田エリアではない、他のエリアだ。


『諭吉しか持ってなかったら助かった #渋沢狩り』

『諭吉最高! #渋沢狩り』

『渋沢は持たないほうがいい #渋沢狩り』

『ATMで下ろしたら、渋沢しかでなかった。やばいよね? #渋沢狩り』

『渋沢の一万円札を破いたら、諭吉の一万円札くれた #渋沢狩り』

『空手二段なのに負けた。逆らわないほうがいいぞー #渋沢狩り』


 SNSでは渋沢の一万円札を持っていると危険だから福沢の一万円札を持つように勧める投稿が目立つ。渋沢を持つことを恐れ、福沢を歓迎する風潮が、都民に生まれつつある。


 佐藤と村田は黒ずくめの集団が三田エリアで渋沢狩りが起こることを信じて、巡回を続けた。しかし、3日の捜査期間中に黒ずくめの集団が三田エリアに出没することはなかった。

 佐藤と村田の巡回期間が終わった翌日、「#渋沢狩り」のタグが付いた情報が三田エリアから発信された。まるで、佐藤を嘲笑うかのように。


「情報が漏れているんでしょうか?」


 捜査が終わったとたんに、黒ずくめの集団が三田エリアに戻ってきた。

 捜査一課に内通者がいる。これが佐藤の出した結論だ。


 佐藤は捜査一課長に相談するものの、「仲間を疑うのはやめておけ。単独での捜査も禁止だ」ときつく言われた。犯罪者、犯罪組織に対して一枚岩で立ち向かう、これが捜査一課長の信念。捜査一課内部での犯人捜しはご法度とされている。


 抜き打ちで巡回すれば黒ずくめの集団に遭遇するはず。そう考えて、佐藤は合コンが終わった後、三田エリアの裏路地を一人で歩いた。

 黒ずくめの集団は渋沢栄一の一万円札のみを狙う。渋沢に恨みを持つ集団であることは明らかだ。ただ、それに何の意味があるのかは佐藤にはわからない。


 裏路地を一時間ほど徘徊したころ、前から黒いパーカーを着たサングラスの男が歩いてきた。渋沢狩りの犯人の特徴と同じ。佐藤は警戒しながら男とすれ違った。


「命が惜しければ、渋沢を置いていけ!」


 佐藤が振り向くと、男はナイフを出した。路地の両側から黒ずくめの集団が歩いてくる。


 三人、四人……囲まれたか。黒ずくめの集団を捕獲できれば、渋沢狩りの真相を解明できる。それに、強いといっても素人だ。空手で国体に出場した佐藤が負けるはずがない。


 佐藤は財布を探すフリをして、男の手を取り、背のほうへ捻った。最近習得した合気道の技。反撃されると思っていなかった男は、バランスを崩して前に倒れ込む。

 地面にぶつかる瞬間、男は前回りして受け身を取った。前回り受け身、この男は柔道の経験者だ。


 かなりの実力者だろう、佐藤は男の身のこなしから判断する。黒ずくめの集団の全員がそうなのか?

 ふと目をやると、男が被っていたフードが外れている。受け身を取ったときに、フードがめくれたのだ。

 サングラスをしているが分かる。年齢は50歳前後、若者ではない。髪型はオールバック。その撫でつけるような髪型を佐藤は毎日見ている。男の風貌に懐かしさを感じる。


「課長?」

 男は頭を掻きながらサングラスを取った。


「単独での捜査は禁止って言っただろ」


 男は山本捜査一課長。黒ずくめの集団の一人が山本に近づいた。


「山本くん、知り合いかね?」


 捜査一課長を「くん」付けする人物。かなりの大物だ。佐藤は男の顔を凝視する。暗くて見えない。


「警視総監。私の部下です」

「そうか。よく言っておくように。あと、渋沢の回収は忘れずにな」


 佐藤は敬礼して黒ずくめの集団を見送った。


 **


 同じ頃、高校時代の同級生との飲み会が終わり、JR深谷駅への抜け道を通っていた田中は、黒ずくめの集団に囲まれた。


「命が惜しければ、福沢を置いていけ!」


 黒いパーカーを着た男がナイフを突きつけた。


<第2話:おわり>

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