49 頼りになります、女友達!
結局あんまりよく眠れなくて無事に寝不足です。
おかげで今、私は今日の着替えを手伝ってくれるソニア、アミシー、ビリジニに呆れられています。
「緊張で眠れないだなんて、小さな子どもみたいね?」
「そう言わないでよ、アミシー。これでも早く寝ようと努力はしたの!」
私の髪を結いながらからかってくるアミシーに言い返す。
でも、朝早くから私のために来てくれたのだから本気で文句は言えません。
そう、なんと今日はこの三人が私のためだけに来てくれているんだ!
貴族のお屋敷に行かなきゃいけないという話をした時、ドレスの着方も髪を整えるのも自信がないと言ったら三人が自ら手伝うと言ってくれて。
本当に感謝しかないよ~! やっぱり子どもみたいって笑われても許す!
けど、アミシーは眉尻を下げながら私の気持ちにも共感してくれた。
「嘘よ、嘘! 気持ちはわかるもの」
「たしかに貴族の家に行くだなんて、私も緊張で寝付けないかもしれないわ」
「私も。聞いただけで震えるわ! だけど、顔色とクマを隠すのには苦労しちゃうわね」
「うっ、ソニアもビリジニもごめんね……」
「いいのよ、腕が鳴るわ」
ソニアはドレスの着付けを、ビリジニはメイクを担当してくれている。
三人ともびっくりするくらい上手で、思わずプロなの?って聞いちゃった。
でもそんなわけないでしょ、と笑い飛ばされてしまった。
ソニアは服飾店で働いていた経験を活かして、と言っていたけど、アミシーとビリジニはヘアアレンジやメイクが好きなだけだそう。これだけ上手なら仕事に出来そう。
「でもさ、なんで貴族のお屋敷に行くことになっちゃったの?」
「えーっと、それはぁ……」
「あ、待った。やっぱり聞かないでおく! 変に関わったらあとで大変なことになるかもだし?」
「アミシーったら、調子のいいことばかり言わないの!」
アミシーからの質問に言いよどんでいると、先にやっぱり聞かないと言われちゃった。
冗談めかしているけれど、私が言いにくそうにしていたから気を遣ってくれたんだよね、きっと。優しいな。
それに、いつまでも黙っていたくない。
「もし聞いてくれるというなら、落ち着いた時に聞いてもらいたいな。ダメ、かな?」
いろいろとケリがついたら、この三人には聞いてもらいたい。
だって、せっかく出来た仕事仲間で、友達だもん。……私がそう思っているだけかもしれないけど。
おそるおそる三人の様子を伺うと、三人が同時にクスッと笑った。
「ダメなわけないわ。ルリのおかげで私たちはこうして良い職場で働かせてもらえているんだもの」
「えっ、別に私は何もしてないよ!」
「そう思っているのはルリだけよ。もしルリがいなかったら、ここで働くこともなかったわ。これは絶対!」
本当に何もしてないんだけどな。でもたしかに私がここにいなかったら働く理由もなかったのは事実。
じゃあ、運命ってことでどうかな? 私はそう考えることにする!
ふふっ、やっぱり女の子同士で話すのも楽しいな。
落ち着いたら四人揃ってお茶でも飲みながら女子会しよう。これは絶対!
「よし、出来た!」
鏡の前で思わずぽかんと口を開けてしまう。
え、だ、だって、え? これ、私? すっごく綺麗にしてもらってる!
アミシーが結ってくれた髪は編み込みが綺麗に出来ているし、花の髪飾りが可愛い!
ドレスは華美過ぎないシンプルなデザインだけど、裾にいくについれて深い青になるグラデーションが綺麗。
それがまた上品で私をお淑やかなお嬢様に見せてくれている。ドレスの力、すごい。
というかコルセットとかレースのリボンとかどうやって着付けてくれたのか見ていたのに謎。ソニアもすごい!
完璧なメイクをしてくれたビルジニの手腕には拍手を送りたいよ!
自然なのに透明感があるように見えるメイクで、それでいて寝不足で悪くなった顔色や目元のクマをうまくカバーしてくれている。た、助かりますぅ!
「ちょっとやそっとじゃ髪は崩れないから暴れてもいいわよ」
「あ、暴れたりなんかしないよっ!」
「ふふっ、メイクもよ。大泣きしなければ大丈夫」
「もう、ビルジニまでっ」
二人してからかうなんて、もう。でも、ありがとう。
「コルセットはあまり締めていないわ。苦しいものね」
「助かりますっ!」
「わざわざ締めなくてもルリはもともと細いから簡単だったわ。もう少し太ったほうがいいんじゃないかって心配になるくらいよ。ちゃんと食べてる?」
「食べてますよ?」
ただ、少しだけ人より食が細い自覚はある。
もう少し食べたほうがいいのかな? 健康のためにも考えてみよう。
「三人とも、本当にありがとう。助かりました」
「力になれて良かった。いつか恩返ししたいと思ってたから」
「恩返しなんて……私のほうが普段から助けてもらっているのに」
謙虚だなぁ。アミシーだけじゃなく、ソニアもビルジニも本気で私に恩返ししたいと思ってるんだもん。ミルメちゃんで見なくても伝わるよ。
「さ、クランの皆さんに披露しましょ」
「えっ、ひ、披露?」
「そうよぉ。せっかく着飾ったんですもの。お屋敷に行くだけじゃなくて、皆さんに褒めてもらいましょ」
「ほ、褒め……!?」
ちょっと待って! ちょっと私が着飾ったくらいで褒めるなんて!
あ、メディやサンディは可愛いものが好きだから褒めてくれるかも……?
いやいや、やっぱり注目されるのはなんだか恥ずかしいよーっ!
戸惑う私を三人はぐいぐい引っ張って、部屋から出ようと急かしてくる。
どのみち玄関でセルジュと待ち合わせているから行かなきゃいけないのは変わらないけど……き、緊張しちゃう~~~っ!




