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私、見る目がありますから!〜癖強クランで愛され異世界ライフ〜  作者: 阿井りいあ


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42 騙されやすいのは直らない


 ああ、どうしよう。勢いで了承しちゃったけど、勝手に連れて行って怒られたりしないかな?

 そんな不安が顔に出ていたのか、従者の人から口を開いてくれた。


「説明は私からいたしますので。無理を言って勝手についてきた、と。ですからそんなに不安な顔をなさらないでください」

「そ、そんなに顔に出ていました?」

「ふふっ。お気になさらず。可愛らしい方ですね」


 可愛らしいって……! からかわれているのかな。

 ふ、ふーんだ。どうせすぐに顔に出ちゃいますよぅ。


 何も言えずに俯いていたら、セレが擦り寄ってきてくれた。セレ~! ありがとうね~! ふわふわっ!


「先ほどは突然、本当に申し訳ありませんでした。ただ、どうしてもお嬢様の髪や瞳のお色が特に気になりまして」

「お、お嬢様はやめてください。私、ルリって言います」

「……ルリ様、ですね。私のことはどうぞヨハンと」


 セレを撫でながら歩いていると、従者の人、ヨハンさんが改めて謝罪をしてくれた。

 取り乱してしまった自覚はあるみたいだね。カトリーヌさんも仕方がない、みたいな反応だったけど……今更ながら事情を聞くのが少し怖いな。


 少し予想が出来るから、余計に。


「えっと、ヨハンさん。髪と瞳の色とおっしゃいましたけど、同じ色合いの人はたくさんいると思うのですが……」

「ええ。我々は黒髪に黒い瞳の、貴女くらいの年齢の女性をずっと探しておりまして。すでに合致するたくさんの方々とお話をさせていただきました」


 でもどの人も探していた人とは違ったみたいで、今もずっと探し続けているのだとか。

 だから初めて見る私に話を聞いてみたいと思って様子を見ていたのだそう。


 ……一体、いつから? ま、まぁいいや。細かいことは。


「それに貴女の瞳は……よく見ると深い青、ですよね? 先ほど、光の加減で見えましたものでつい」

「ということは、正確には深い青の瞳の黒髪女性をお探しだった、と?」

「ええ、まぁ……ルリさんにお声をかけたのはそれだけではないのですけどね」

「えっ、他にも何か理由が?」


 ヨハンさんはにこりと笑うと、それ以上は答えてくれなかった。


 ただの黒い目ならいくらでもいるけど、私も自分の目が少し珍しいことは知っている。条件にはピッタリ合うよね。それに……。


 ……そろそろ、覚悟を決めておいたほうがいいのかも。


 クランまでの道がずいぶん遠く感じた。やっと建物が見えてきた時はすごく安心しちゃった。


 なんだかすっかり私の居場所みたいな感覚だなぁ。まだそんなに長くいるわけじゃないのにね。とっても濃い日々を送っているからかな?


「え、ルリ!?」

「誰そいつ! おい、ルリに何の用っ!?」

「ちょ、ちょっと待って、メディ、サンディ!」


 ちょうどアジトから出てきたところだったらしい双子と遭遇しちゃった。私が見知らぬ男性と一緒にいるから一気に警戒したみたい。


 慌てて事情を説明すると、しぶしぶながら二人は臨戦態勢をといてくれた。ふぅ、二人とも、意外と好戦的なんだね……。びっくりした。


「不用心だよ、ルリ。二人でここまで来るなんてさー」

「で、でも、セレもいるよ?」

「まぁ、たしかにセレは反応してなかったけど~。でもルリは無防備だから心配だよ」

「ご、ごめんなさい?」


 そんなに無防備かなぁ。一応、よくわからない相手には私だって警戒するよ。

 今回はカトリーヌさんが身分を知っていたし、ミルメちゃんも危険判定はしなかったから。

 誰にでもほいほいついていくわけじゃないんだよっ! ……今は。


「騒がしいと思ったら……キンドリー家の方ですか」

「スィさん!」


 建物の前で少し騒いじゃったもんね。でも冷静なスィさんが出てきてよかった。

 ここでウォンさんやテッドさんが出てきていたら、さらに大騒ぎしていたかもしれないもん。


 それにスィさんは、ヨハンさんのことを知っているみたいな口ぶり。クランの窓口担当みたいなところがあるもんね。助かった。


「ついにルリさんに目を付けたのですねぇ。アポも取らずに乗り込んでいらっしゃるとは」

「はは、これは耳が痛い。ずいぶんと人聞きの悪い言い方をしなさる」

「僕は事実しか言っていませんよ? 現にルリさんと二人でいらっしゃったではないですか。大方、最初はルリさんと二人で話そうとされたのでは?」

「そ、それは」

「か弱い淑女と二人で、ねぇ? それが紳士のやり方なのでしょうか。それで? ルリさんがうちのトウルやセルジュと一緒に話がしたいという提案でもしましたか? それは聞かざるを得ませんよね」

「……」

「二人で話せたら儲けもの、そうでなくともうちのアジトでセルジュを交えて話せたらそれはそれで助かりますもんね。いやぁ、素直なルリさんを丸め込む見事な手腕です。さすがはキンドリー家の従者といったところでしょうか」


 ……な、なんか。

 スィさんが怖いんですけど……?


 メディとサンディも引いているし、セレだって少し尻尾が下がってるよ?

 ヨハンさんはスィさんが言ったことに心当たりがあるのか、もはや何も言えずにいる。


 そっか、私……結局丸め込まれてたんだ?


 で、でも無害だから、ほら。

 ……うぅ、私って本当に騙されやすいなぁ、もう! ミルメちゃんがいてもこれだもん!


「おっと、立ち話をさせてしまって申し訳ありません。メディ、サンディ。キンドリー家の従者の方ですから、丁重なおもてなしの準備を。さぁ、ミスター。どうぞこちらへ」

「……お気遣い、いたみいります」


 ヨハンさんが冷や汗を流しながらスィさんに従っている。

 メディとサンディは意気揚々と建物内に戻っていったけど……ちゃんとしたおもてなしの準備する、よね? 心配。


 あ、私もお茶を淹れたりしようかな? そう思って一歩踏み出した時、振り返ったスィさんと目が合った。


「ルリさんはトウルに声をかけてきてください。そうすればセルジュにもすぐ連絡がいくでしょうから」

「あっ、は、はい」

「急な来客で苛立つトウルを宥められるのはルリさんだけですので……頼みますね?」


 急なミッション発生しちゃった……!?


 あとはよろしくと言わんばかりに笑顔で去っていくスィさんの背を見送りながら、私はその場でしばし硬直する。


 どうしよう、またあの時みたいな怒り方したら。だ、大丈夫だと思いたいけど……!


 というか、最近私が不機嫌トウルさんを宥める係になってない!?



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