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繰り返される襲撃

────三時の方向から襲撃! アッシュ!」


「わかったメルル、オレに任せてくれ!」


「聖剣の力、ご覧あれってね~────




────今度は後ろからだ!」


「アッシュは休んでて、ここは私のゴーレムで!」


「勇者達を過度に消耗させるわけにはいかん。ワシも手伝おう────




────……左、数は八かな?」


「ありがとうミコト。隠れてるならあたい達でやるか」


「わかった────






 日もほどほどに上がり、歩き始めてからそれなりに経ったころだろうか。全員が薄々と思っていたことをメルルさんが声に出した。


「……なぁ、いくらなんでも襲撃が多くねぇか?」


「あ、やっぱり多かったんですね……」


 モンスターからの襲撃が前日と比べてあまりにも多かったのだ。感覚的には一時間に一回は襲われてるんじゃないかと思うくらい。

 襲撃自体は皆さんが対処してるお陰で被害はありませんが襲撃のたびに足止めされるので思うように進めていないのは問題です。

 あ、ちなみに私は安全な場所から見てるだけです。皆さん強いから邪魔だけはしないように……。


「どうもこうも、モンスターに居場所を捕捉されたとしか言えんだろう。おそらくはどこかで取り逃がしてモンスター共に場所を共有された、だからこうして襲撃されている。とはいえだ、ワシはモンスターを逃がした覚えはない。いつ見逃したか……悪かった」


「だからあれだけ寝ろと……いや、あたいも見逃してるし斥候としては失格だな」


「はいはい、そこの二人! 反省ならまた今度にしてよね」


「そうよ。今は対策を考えないと……」


 落ち込んでいるホーロンさんやメルルさんを他の方々が慰める。そもそも私も含めて誰も気づけていない以上誰が悪いかと言われれば全員悪い気もしますので割り切ったほうがいいと思います。

 それにしても、組織的な襲撃をしてくるあたりこの世界の魔王軍はかなり統率がとれてそうですね。物語だと統率が取れてたり取れてなかったり差がありましたがここは取れているらしい。大変そうですね。

 とはいえ、場所と移動先が予想されている以上簡単に対策を立てられるとは思えないがどうするつもりだろうか。


「ふふふ……ここは女子組に任せて。そうでしょマリー」


「えぇ、こちとら嘘ついて何百年。いやがらせさせたら私の右に出る者はいないわ」


「ろくでもねぇ自負だな」


「アルコンさん」


 わざわざツッコミを入れなくてもいいですからね? まぁツッコミを入れたいのは分かりますが……。

 それはそうと、どうやらユーナさんとマリーさんには作戦があるらしい。歴戦の勇者一行の作戦ならば成功はまず間違いないでしょうがどんなものか気になります。


「まず私がここにいる全員の体格に近いゴーレムを造るでしょ?」


「そして嘘つきの私がゴーレムに嘘の姿を乗せるって作戦よ」


「なるほど、つまりモンスターにオレ達の偽物を追わせるわけだな」


「こなれてるなぁ……」


 最低限の労力で行える対策を考えつくあたりこういう状況には慣れてるんでしょうね。きっとこういう局面だって何度も乗り越えてきたのでしょう。

 作戦としては私達の分身を作ってそっちにモンスター達の注意を逸らし、そのうちにモンスターの警戒網から離脱するという簡単なもの。成功するかはわかりませんがせめて私の所為で失敗しないようにだけはしないと……。


「……一つ聞いていいか?」


「どうしたのアルコン?」


 アルコンさんはお二方が立てた作戦に疑問があるらしく、それの解消のために質問する。


「偽物を追わせた後どうするつもりだ? 攪乱したところで俺達がその周辺にいるのはバレてる、さすがに考えはあるだろ?」


 確かに攪乱するにしてもずっとだまし続けるのは不可能だろう。バレた後の警戒網から脱出する方法を決めていないと結局また捕捉されてしまう。

 襲われ続けないためにもその後の事を詰めるのは大事である。とはいえマリーさんとユーナさんのことだし考えがないわけではないでしょう。


「もちろんそこは考えてあるわ。その前に一つだけ確認することがあるのだけど……メルルでもミコトでもいいけど今この瞬間も監視されてるかってわかる?」


「……多分されてない」


「あたいも同じ意見だ、確証なんてないけどな」


「なら大丈夫ね、実はこの周辺に大昔の勇者がやらかして作った峡谷があるの。遠回りにはなるけど攪乱したあとにそこを通り抜ければブランリー周辺に着くころまでは誤魔化せると思うわ。あそこは周囲と隔絶されてるし上手くいけば振り切れるはずよ」


「なるほど……」


 私にはよくわからないがきちんとした作戦はあるようだ。ならば私はそれを信頼するだけでしょう。

 ところで大昔の勇者さんはなにをしてるんです? 山を真っ二つにでもしました?


「……ま、考えてあるならいい。俺は任せる」


「私も!」


「アタイも」


「なら決まりね。ひとまず進路は変えないようにしつつ峡谷に近づきましょう。そこまで遠くないわ」


 その言葉に嘘偽りはなく、歩いて十分くらいで峡谷にもっとも近い進路上の場所までこれた。私達は可能な限り死角が多いところを探す。それっぽい所を見つけ私達は腰を据える。

 休憩するふりをしつつユーナさん達は準備を進める。私やアルコンさん、ミコトさんを含めた勇者一行の体格に似たゴーレムが次々と造られていく。

 私はその内の一つ、自分を模して造られたゴーレムを見つめる。見た目が似ているわけではないがこれが私の身代わりだと思うと少し愛着がわく。あと大男のアルコンさんと比べると私って小さいな。大体35cm差ってところ……? え、思った以上に大きくない?


「それじゃあ嘘でそれっぽくしてあげるからね~」


 マリーさんがそう言うと身代わりとなるゴーレムは少しずつ私達の見た目に近づいていった。私を模したゴーレムは瞬きもしないうちに紅白の巫女装束を纏い、後ろで纏めてある髪とは別に横に垂れた兎の耳のような髪型が目を引く白い髪と、引き込まれるような紅い瞳が特徴的な少女となった。うーむ、相変わらず私って目立つ見た目をしてるなー……。可愛いとは思うけど。

 他のゴーレムも次々と皆さんと同じ姿に変わり、ゴーレムの軍団はまさしく私達と瓜二つになった。遠目では偽物とは判別がつかないだろう。


「本物そっくり……ほら、アルコンさんの不機嫌そうな顔もそっくり」


「誰のせいで不機嫌だと……!」


「私ですね」


 両手をあげて降参のポーズ。今はおふざけしてる場合ではないので動物に変えるのだけは……あ、アイアンクローもちょttイダダダダダ!!!


「まぁ中身はゴーレムのままだけどね。負けはしないと思うけどバレるとは思う」


「細かい事は気にしないこと! さぁ行ってきなさいゴーレム達!」


 マリーさんの号令と共にゴーレム達がぞろぞろと本来の進路を歩き始める。その後ろ姿を見送りつつ私達は身を隠しつつ峡谷に向かう。

 隠れながらなので少し手間取りつつも無事にたどり着いたそこは峡谷というには直線的で、本当に聖剣で山をかち割ったような様相をしていた。崖の一部が道のように平坦となっており歩いて越える事も可能そうだ。

 しかし、そう物事は順調にいくはずもなかった。峡谷を見つめていたミコトさんが困った顔をしながらその事に言及する。


「この峡谷の中、潜んでる」


「……噓でしょ?」


 ミコトさんの指摘にマリーさんは想定外と言った感じに驚いていた。どうやらモンスターが潜んでいることは想定していなかったらしい。


「あー……前来たときはいなかったんだけどね、周辺の都市がモンスターに制圧されたらこうなるのも当然といえばそうね」


「どうする? 作戦を立て直すか?」


 皆さんが険しい顔で考え込んでいるとなにかを閃いたアッシュさんがいい笑顔で提案をした。


「いや、このまま突っ切ろう。潜んでいるモンスターを全部斬れば問題はないだろう」


「えぇ……」


 あまりにも脳筋な答えが返ってきた。そんなステルスゲームでアラート鳴らされる前に全員キルすれば実質ノーアラートみたいなやり方で良いんですか……?


「まぁ、代案があるわけでもない……やるしかないだろう」


「そうだな。マリー、この峡谷って走って何分だ」


「大体30分くらいかしら」


「なら一時間もかからないな。任せてくれ」


 結局峡谷の正面突破で撒くということで話が進んでいく。アッシュさんは自信満々そうだが私は正直不安です。なぜなら勇者一行はある事を忘れているから……。


「モンスターを逃がすとまたそいつらに援軍を呼ばれかねん。ミコトには悪いがまた手伝ってくれ」


「いいけど……」


 ミコトさんもそのことに気付いたのか私と同じ人を見る。長時間走るということは体力がいるという事……いるんですよ、体力がなくて長時間走る事が苦手な人がね。

 そうですよね、アルコンさん?


「なぁ、帰っていいか?」


 そう宣言するアルコンさんは全てを諦めたような顔をしていた。

 アルコンさん、頑張りましょう。

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