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廻る世界を私は謳う ~巫女と(魔)道具屋さんの帰世界奇譚~  作者: アラカブ
黄泉へと誘う妖、その心は無間の底に
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不完全な決着、そして……

 アルコンさんに化けて私狙い……ですか。煙でアルコンさんを足止めしている間に私を殺害する狙いかな?まぁ合理的ではありますね、結果としてバレてますしやめて欲しいですが。

 オトさんは私にあっさりバレたことに驚いている、バレることを微塵も想定していなかった顔だ。アルコンさんの顔でポカンとした表情されるとちょっと面白いですね、アルコンさん本人はそういう表情するイメージが無いので貴重かもしれないです……ただ、オトさんもさすがに少しはバレる想定をしておいた方がいいのでは?

 目の前の化けてる方は少し考える表情をしたのちヒエさんを優しい笑顔で睨みつけた。


「ヒエ? もしかして情けをかけました?」


「……黙秘」


「いえ、普通にバレバレでしたよ」


「……あれれ? おかしいわ……」


 ……もしかしてオトさんって、他人に化けるのはそこまで上手くない?

 いや、姿はアルコンさんそっくりというかほぼそのままですけど……行動があまりにもアルコンさんからかけ離れている。

 まだアルコンさんと出会って一日しか経っていませんけどそれでもわかります。本物なら『ついて来い』じゃなくて『首根っこ掴んで無理矢理連れていく』んですよ。酷いと思いませんか? 思いますよね?


「うん」


 うんうん、ヒエさんもそう思いますよね。あとでお尻あたりに石投げておいてください。

 そんなことをしているうちにオトさんの企みに気付いたアルコンさんが煙から飛び出してきた。


「よう、俺抜きで楽しそうな事してんじゃねぇか」


「あら、まだ一人で遊んでいても良かったのですよ?」


 飛び出してきた勢いで高く飛び、刀を叩きつけるアルコンさん。元の姿に戻ったオトさんはそれをスルリと交わし、返しで短剣を顔に向けて突き刺さそうとする。素人目で見ても戦闘慣れしていると分かる身のこなし。

 しかし、それを見てアルコンさんはニヤリと笑った。


「貰いだ」


 アルコンさんは刀を手放し、オトさんの短剣を持つ方の腕を掴んだ。どうやら叩きつけた刀はブラフでオトさんの返しを誘っていたらしい。

 オトさんはなんとか振り払おうとあがいてはいるが単純な力ではアルコンさんが大きく勝っている。振り払うことは出来ない。


「……お強いのね」


「あいにくな」


 こうなればもうオトさんを動物に変えるだけだ。抵抗するオトさんを強引に引っ張って体勢を崩した。あとは頭を掴んでネズミなどの小さな動物に変えればそれで勝ち、オトさんを必要以上にいたぶるそぶりを見せたら私達が止めればいい。


 そうなるはずだった……


 オトさんが消えたのだ。私達の目の前から、腕を掴まれていたにも関わらず……だ。


「……は? 消え……!?」


 アルコンさんも何が起きたか分かっていないリアクションだ。オトさんを引っ張った力がその対象を失い体勢を崩す。

 オトさんはどうやって消えたのかは分からない。何処に消えたのかは分からない。それでも、


 オトさんはその消えた一秒後に再び消えた同じ場所に同じ体勢で現れた。


「げっ」


「え、ちょっとまっ……!」


 そして二人とも体勢が崩れているのでそのままぶつかり、オトさんがアルコンさんを押し倒してしまった。オトさんが再び姿を現した時にお互いちょっと反発したような気もするが……結局倒れた事を考えると些細な問題である。

 倒れた衝撃で二人から呻き声が漏れ、オトさんが握っていた短剣が地面に転がる。アルコンさんも既に刀は手放しているのでここからさらに殺し合いなんてことにはならないでしょう、多分。

 …………それもだけど、二人して倒れた時に怪我とかしてない? 大丈夫ですか?


「な……なにが起きた……?」


「慣れない事はやめておくべきね……」


 反応的には大きな怪我もなさそうだし大丈夫そうかな? 倒れた状態のまま二人ともやや放心気味だ。体勢的にラッキースケベ感はあるがそれどころではなさそうだ。まぁアルコンさんはそういうのに興味無いけど。

 あと、仕掛けた側であろうオトさんもよく分かってなさげなのはどういう……?




「ヒエ、離しなさい」


「だめ」


 ヒエさんが倒れたお二方に近づき、オトさんを持ちあげてアルコンさんから離す。私の見通しとは異なりまだまだやる気なオトさん、それをヒエさんが宥めている。良い子だなと一瞬だけ眺めていたが、私もアルコンさんを抑えないと不味い事に気付いたのでアルコンさんを抑えにかかる。


「おい、まだ終わってねぇ……」


「アルコンさんも落ち着いてください。こんなこと続けても良い事ありませんよ」


 オトさんが貴方の親戚の誰かに似ているというのは聞きました。それに関して何か思う事があるというのも何となく察せます。テンションが変なのもそれが理由だとしたら私はとやかく言うつもりはありません、機を見て詳細を聞くくらいはしたいですが今は置いときましょう。

 それでも今は落ち着いてください。オトさん側はともかく私達がこのまま戦っていても利点なんて一つも無いです。なんならあちら側にも利点があるかどうか怪しい……そもそもヒエさんに危害を加えたからってだけで斬りかかってきましたし損得とか根本的に考慮して無さそう。理解はしますが勘弁してください……


「お互い理由があるのは分かります、私はそれを否定する気はありません…………それでも、私達はこれ以上戦って欲しくないとも思っています。それでも続けるというのなら……」


「うん」


 残っているお札を指で挟み、アルコンさんに突き付けて宣言する。


「私達で無理矢理止めさせてもらいます!」


 正直言って、私が力尽くで止めようとしても恐らく止められないだろう。なのでこれはあくまでも無理矢理止めることも辞さないという意思表示です。まぁ来るならかかってこいですけどね? 私が負けるけど。

 どうやらヒエさんも同じ考えであり、これ以上二人が戦うことは好ましくないようだ。私としてはとても助かる、凄く助かる。止まらなかった場合は私一人だけじゃ絶対止めることが出来ないからね……。


「ヒエ、もしかして………………分かりました、私も頭が冷めましたし……引きましょう」


「ありがとうございます、オトさん」


 オトさんは引いてくれるようだ、後はアルコンさんだ。


「……………………………………はぁ、後で覚えとけよ」


「うぇ!? ……や、八つ当たりはんたーい!」


 後々私に八つ当たりが飛んでくるのが確定した。何故だ、今回はそこまでされる理由はないと思うんですが? あー! 呆れた顔しながら私の頭をゆさゆさするなー!

 ……とにかく、お二方が落ち着いたことに胸をなでおろす。八つ当たりについてはこっそり対策を考えておきましょう。


 そうしてオトさんの襲撃はひとまずの決着が付いた────────






「あら、もう終わっているのね。杞憂だったかしら」


 騒ぎを聞きつけたのか村から一人の女性が駆けつけて来た。羽衣のような衣装を纏った黒髪の女性は何処か神秘的で儚げな雰囲気で、見ているとなぜか水に包まれているような、もしくは陽の光に照らされているようなとても不思議な心地になる。

 同じ空間に居るだけで心も頭もポカポカして思考が朧気になるこの感覚、性質こそ違えど私は知っている。曵様のそれとほぼ同じものだ。

 つまりこの方は…………


「……天様」


 ヒエさんが教えてくれた、やはり天様である。イネさんが会ってほしいと言っていた神様で間違いない。オトさんとも合わせてこの村に来た目的は達成出来たようだ。

 さりとて巫女として無礼を働くわけにはいかない。姿勢を正して大きくお辞儀をする。


「畏まらなくてもいいのよ。むしろ悪童達の相手をしてもらった私達が頭を下げるべきね」


「ひどいですわ天様、この村で唯一貴方の真意を理解している私を悪童とは」


「全てが終わった後に気付いた真意に価値は無いのよ。あと、ヒエも分かってるのよ」


「……」


 天様の言葉に反論するオトさんを意にも返さず受け流す。というか悪童達って……少々アレだとは思いますが良い子達だと思いますよ?


「そ、そんなことありません! ヒエさんもオトさんも……ミコトさんも、仲間思いの良い方達ですよ」


 ミコトさん。彼女の名を口にした瞬間、オトさんと天様の表情が少し固くなったように見えた。


「……何故その名を?」


「曵様の所で会いましたので。殺されそうになりましたけど」


 意地の張り合いした結果ですので別に怒ってはいませんよ? という意図を含めてはははと笑いお茶を濁す。私は、ですけれど。

 アルコンさんはミコトさんのことをどう思ってるんだろ? 私が気絶してる内に追っかけっこ始めてたし経緯とかが分かんない。


 天様は少し考え込むそぶりを見せたのち、言葉を続ける


「…………長旅でお疲れでしょう、少し私の屋敷で話でもどうかしら?もちろん、貴方達が良ければ、だけれども」


「ぜひ、重ねて私からもお願いいたします」


 ミコトさんだけじゃなくイネさん関係でも聞きたいことがいっぱいあります。そうでなくとも神様からの託宣とあらば謹んで拝聴いたします。

 そうして私達は天様の住まう屋敷に足を進めた。


 ところでアルコンさんは……めっちゃいやそうな顔してる…………。

 けっと言う声が聞こえそうな顔してますよ。

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