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2-5

「俺がここエルナトのギルドマスター、アルゴルだ」


 ギルマスはよく日に焼けた筋肉粒々の茶髪短髪ゴリマッチョで、悪人顔の五十代くらいのおじさんだった。

 若干マッチョすぎる気もするが、安心感のあるガッシリタイプが好きな私にとってはレグルス(細マッチョ)より断然ギルマス(こっち)派だ。

 いいなぁ~。葉巻とか黒い眼帯とか似合いそう・・・。


 一番はじめにギルドに来た時に思った通り、三階の一番奥にギルドマスターの部屋はあった。

 しかし驚いたのはリゲルさんが副ギルドマスターだったことだ。


「嬢ちゃんがレグルスの()()()()()か。まあ、座りなさい」


 部屋に入って早々そんなことを言われた。

 お気に入り?


「失礼します」


 そう言ってすすめられたソファーに腰かけ、流石に失礼かなとフードを取る。

 レグルスはもちろん、ギルドマスターもリゲルさんは驚いた様子がなかったので知っていたのかなと思う。そういえば先生がギルドに報告してるって言ってたっけ。

 今までは知ってて触れないでいてくれたらしい。まぁ、記憶喪失設定なので聞かれても何も言えないのだけれど。


「実は嬢ちゃんをレグルスがこの街に連れてきた時に一度会ってるんだ。──まぁ、嬢ちゃんは寝てたんだが」


 その言葉を聞いて私はレグルスに向き直り、深々と頭を下げる。


「やっぱり私を助けてくれたのはレグルスさんだったんですね?その節はありがとうございました」

「いや、気にするな──というか、気付いていたのか」


 レグルスは意外そうに言った。


「あの時の冒険者さんとシルエットが似ているなと思ってました。でも名乗るのを拒んだと聞いていたので声を掛けるべきか悩んでいました・・・」


 私がレグルスの質問に答えると、ギルマスが


「聞いているかもしれないが嬢ちゃんの赤髪赤目(ガーネット)は貴族の血縁であることが多くてな、実は嬢ちゃんのことは治療院から報告を受けていたんだ。盗賊に会うより前の記憶がないと──」


 そっか、ギルドから頼まれていたから治療院に置いて貰えていたと言う訳だ。それでも先生とミモザさんには感謝しか無い。私をあそこに預けてくれたギルマスやレグルスにも。

 だけど今思うとこの設定は少し不味かったのかもと思う。百パー貴族と関係ないのに否定が出来ない。

 でもこの色も、気に入ってるんだよね。折角の異世界を楽しむって決めてるし。


「それで、レグルスが連れて来たってことは、この嬢ちゃんも?」


 レグルスを見ると私を見て頷いくれたので


「はい、鑑定と結界が使えます」


 これにはいつも落ち着いているリゲルさんも驚いたらしく、「二つ・・・しかも結界ですか・・・」と、呟いていた。

 レグルスにしても七星にしてもレア魔法を使える人が周りにいるから、驚かれても全くピンとこない。

 あ、そう言えば二人はヒロインと攻略対象だ──存在自体が主役級の人たちでした。


「ちなみに先日確認された『モンスターボール現象』の正体は、森で迷子になって咄嗟に結界の中に逃げ込んだスピカに(たか)っていた魔獣達だ」


「「・・・」」


 それを聞いてギルドマスターもリゲルさんも黙ってしまった。


 ことのあらましを話し終わったあと、ギルマスが言った。


「記憶がないから鑑定や結界を使えることを忘れていたと言うわけか?」


「何を言い出すんですか?」とでも言いたげに、リゲルさんがギルマスを見てちょっと眉を上げた。


「嫌、しかしこの髪色だろう。まさか収納は使えないよな?ちょっと試しにやってみようか」

 そう言ってギルマスは可愛らしい装飾のされた箱をテーブルに置いた。


 お菓子の箱!?

 そう思った私は無意識に鑑定をかけたようで、


 ----------

 クッキーの箱

 高級品。とても美味しい

 ----------


 と、情報が出た。

 この世界に来て初めて見たよ。あったんだ!

 出してくれたってことは食べていいってこと?


 私は期待に満ちた目でギルマスを見つめた。

 ギルマスは苦笑しながら言った。


「この菓子は貴族でも並ばないと食べられない貴重なモンでな。偶然手に入れたんだが、俺は甘いモンは食べないんだ。お前にプレゼントしても良いが、この箱を持って歩くとどうしても目立つ。どうだ、収納に入ると言うなら持って帰ってい・・・」


 え、欲しい。


 そう思った瞬間、ギルマスが最後まで言い終わってないのにも関わらずそのお菓子は消えた。


「使えるようだな・・・しかも触らずに収納──」

「──その様ですね」


 使えるって、私も今知りました。

 そういえば書いた書いた。「★アイテムボックスは使いたい」って。

 異世界で冒険者をするにはアイテムボックスがないと不便だもの。

 頭を抱えるって表現があるけれど、私は人が本当に頭を抱えている光景をはじめてみたのだった。




 ギルマス達との話が終わった後、レグルスが先日のお詫びにチェーンを買ってくれると言いだした。


「詫びなら先ほど頂きましたが・・・」

と断ったら、「じゃあ、俺の言いつけを守ってるご褒美だな」と、頭に手を乗せられた。


 レグルスのこれは癖なのかな?ちょうど置きやすい位置に私の頭があるとか・・・

 まぁ、イケメンからの頭ポンポンは全人類・全年齢層共通の乙女の憧れなので(星良調べ)、悪い気はしない。

 そう言うことならありがたくと、ブレスレット型を買ってもらった。


「レグルスさん!ありがとうございます」


 念願の脱・革ひもだ。とてもうれしい。笑顔でお礼を言うと、またポンポンされた。

 元々立っていた噂に加え、五日間ギルドのカフェで私を待っている様子と今日のことを見た冒険者により、完全に「レグルスの()()()()()認定」をされてしまったらしいことに私はまだ気付いていなかった。


 因みにあの後ギルマスから「念の為だ。治癒魔法を使ってみろ」と言われたが、出来なかった。

 しかし、それで思い出したことがある。

 明らかにほっとしたような顔をされたので言えなかったが、多分使える。

 異世界で大怪我とか未知の病気とか怖いから『★治癒魔法は絶対に使いたい』ってリストに書いた記憶があるのだ。使えなかったのは多分誰も怪我してなかったからイメージが沸かなかっただけだと思う。

 私は四大レア魔法がすべて使えるらしい(正確にはまだ三つだけど)。

 お菓子の件は仕方なかった?けど、治癒魔法はバレないようにこっそり使うことにしようと心に決め、レグルスに手を振り帰途についた。



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 リスト『異世界でやってみたい50のこと』

 

 達成可能(4)

 ★治癒魔法は絶対に使いたい

 ★装備を整えて、それっぽくしてみたい

 ★討伐をやってみたい

 ★異世界ならではの店をまわりたい


 未達成(30)

 

 達成済み(16)--新規(1)・確認済み(15)

 ★アイテムボックスは使いたい

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