目撃証言90『攻防』
良子は、警戒をしながら何とか動かされている女性を守ろうと戦う。
「そんな! どうすれば良いの!」
ボスだけを狙おうとすれば確実に女性で防御しようとする。
「はははは! 貴様等の弱点は人を守ろうとする意志だ! どうして奴等はそれを突こうとしなかったのか! 心底呆れる!」
部下達を馬鹿にしながら髑髏男は怒りを露わにし始める。
「第一部下は全く信用ならん! いや嫁も! 娘も! 奴等は全員屑だ! 私こそが正しいのにそれを揃って否定する! 労働基準だと! そんなんだから日本は成長しない! 死ぬ気で私を儲けさせようとせんとは! 命を張って仕事をしてその命が尽きるまで会社を大きくし! 私の為に尽くせば良いというのに! どうせアイツ等が金何て貰っても下らんことに使う! 子供は未来だとか教育だとか言い訳をして課金や無駄な買いものをしたり! そして教育だって学ぶ気のない馬鹿な餓鬼に金を使う! 未来ない奴等の未来何て知った事か! それより私に金を寄越せ! 女を寄越せ! さすればこの国をもっと大きくし! 会社を他の国にも負ける事のない様に成長させる! どうせ無駄な命なんだ! 下らん命を全て私に使えばいいというのに! どうして誰も歯向かうのだ!」
「……ブラック思想……」
風美は、苦笑しながら馬鹿にしたように興奮する姿を美奈子に送る。
「そんなの違うよ! 貴方は間違っている! そんな事で大きくなっても! 誰も幸せにならない! それに! そんなのは貴方一人が幸せになりたいという事だけじゃない!」
「それの何が悪い! 不幸な奴は不幸なまま死に絶えればいいのだ! 私こそ可哀そうな人間だ! 出来るのに! 素晴らしいのにそれを否定する奴等が死ねばいい!」
癇癪を起す髑髏男の髑髏は、ただただ自分の思い通りにならない本来の姿を映す醜いモノではないかと風美は思った。




