目撃証言9『今日は疲れた!!』
風美は、家に帰ると既に文雄も不貞腐れた顔で帰宅していた。
「おかえり」
「ただいま……」
「……何があった」
風美の疲れた顔を見て、文雄は何を察した。
「うん、ご飯作ってから話して良い?」
「おう、じゃあちゃちゃっと終わらすか」
そして、二人は卵なしの冷やし中華を作る。
そして、食事を摂りながら、文雄は、風美の目撃証言を聞く。
「そんな事があったのか……てかキャラ渋滞してない? キャラが出すぎっていうか……敵やらサポートキャラやら……もう何がなんだか……」
「私も思ったんだけど……もしかしたら元木さんが主人公じゃなくて西連寺会長がもしかしたら主人公枠なのかも……そう考えればある意味視聴者側としては既に分かっている状態なのかも……」
「誰目線なんだお前は……」
「兄さんこそ……」
文雄は、麺を啜りながら頷く。
風美も、頬張った具を飲み込んだ後、話を続ける。
「それより兄さんは大丈夫だったの? あのサポートキャラが兄さんのところのバイトって事は……」
「ああ、それなんだけど……そのしわ寄せが俺に来てバイトクビになった」
「え?」
風美は、思わず食べていた麺を口から零す。
「しかも損害だとか色々理由付けられて給料もなしだ」
「不当だ! 不当解雇だ! すぐに裁判で……」
「それも考えた……だが見てくれ……」
「?? 会社との交渉で和解できれば早くて1カ月程度……3カ月以内に解決できる……交渉後労働審判になった場合は4~6カ月……マジか……」
「そう……余裕で夏休み終わる……しかも相手は客のクレームだとかを証言に戦うとのことだ……」
つまり、どれだけ頑張っても二人は夏休みが終わるまでに決着を着ける事が出来ないという事である。
文雄が貰える給料は、時給900円であり、7月に働いたのは日曜日の4日間だけである。
そこまで多くない給料を更に風美と分ける事で、手元にはあまり残らない。
そんな少ないお小遣いの為に、夏休みを減らす訳にはいかず、それならば新しい日割りバイトを見つけて、それをお小遣いにする方が効率的だと結論付け、二人は訴えるのを諦める事にした。
「まあ、バイトは明日みっちゃんの喫茶店で話すとして……」
「そうだね、コーヒー無料券明日までだし……」
食べ終わった冷やし中華の皿とコップを洗い、食器乾燥機をかけてから布団を引きながら話を続ける。
「恵斗って、多分俺の学校のラノベみたいなのに巻き込まれてる奴だわ」
「やっぱり、弟って事はあれがお兄さんか……」
「世間は狭いなあ……」
文雄は、自分の目撃した内容と照らし合わせて考える。
「確か……竹刀に話しかけてたんだよな?」
「うん……トウ? だとかなんだとか……」
「うん……完全に俺が聞いたインテンションウェポンだわ……」
「兄さん……ニチアサにラノベが割り込んでるんだけど?」
「ああ……完全に別ジャンルって訳でもないのが秀逸だな……実際最近ではニチアサを元にしたラノベもあるし……」
「でもラノベを元にしたニチアサは私聞いた事ないよ? ……最近見てないから知らないけど……」
「まあ子供の頃や良く見たけど……今は朝起きれないからなあ……」
「うん……」
「うん……」
「「今日は疲れたし! この話終わりい!! 寝よ!」」
二人は、結局面倒臭くなって考えるのを止め、布団を敷いて熟睡した。