目撃証言82『ボス』
『この愚か者共がああああ!!』
「うおお、キレてるキレてる……本当にこのボス動かねえな……」
風美は、歯を磨きながら様子を観察する。
「まあ良子ちゃんの闇堕ち失敗したからなあ……取り敢えずその事を……」
『どうして一向に世界が征服できんのだ!』
「そこ! 結果重視し過ぎて仮定疎かにし過ぎだろ! もっと現場の事を考えろ! てか……お前は管理職だからってもっと現場を見ればいいだろうがい!」
風美は、愕然としながらダメ上司の髑髏を見ていた。
『申し訳ございません……私が至らないばかりに……』
『フン、お前が悪くはない……』
『そうよ! 新人が出来たのにそれを追い詰める上司とか最低!』
『そういうお前はどうなんだよ! 一度も動かずに一人上から目線!』
「ほら! 普通のブラック会社ならそんな事にはならないだろうけど……完全悪の組織ではさすがにそれは無理だろ! ガラ悪い連中はそういうのハッキリ言うからな!」
風美の考え通り、レイディー以外の部下達はキレ散らかす。
『ボス……ここはボス自身が動く事で我々に貴方様の本来の力を見せていただければ指揮も上がるかと思われます! どうか我々を信頼させてくださいませ!』
レイディーの提案に、ボスは大声でキレる。
『馬鹿者! そんなのは言われんでも分かるわ! お前等のような屑共には任せられん! 世界を征服しても貴様等にはやらんことは最早決定打!』
「うわああ……」
流石に風美は、ドン引きしながらボスが外に出るのを見る。
『ふう……やっと動いたか……屑め』
美奈子は、ただ一人呟く。




