目撃証言35『作戦開始②』
「だって……だってええええ!」
言い訳を続けようとする敬重に、説得を続けようとする良子。
「イエローフレグランス! ここは任せなさい!」
「貴方はその男を押さえなさい!」
まさか一般市民が? 他の罪のない子供を攻撃するとは思っていなかったのか、霧雨も黒子もキレーとネチネーの相手をしながら声を上げる。
「フフフ、まさか一般人が敵になるなんて貴方達にも予想外のようね!」
「ふむ……なかなか良い作戦だ……」
キレーとネチネーは、一人で一人の相手をする形である為、戦いやすそうであった。
「ナインダー!」
「ナインダー!!」
「きゃああああああああああ!」
更に、住人をナインダーが襲っていた。
「これは! まさか一般人? こと敬重さんを暴走させる事によって戦力を分散! 更に一般人を襲わせる事によって形勢を完全に掌握している! だけど……みっちゃんがこの程度で終わらせるとは流石に……」
しかし、風美も少し物足りなさを感じていた。
「お願い! もう止めて! 貴方の苦しみは分かるけどそれ以上苦しみを振りまいちゃダメ! 秘密結社ディプレッションの思い通りにならないで!」
「何だよそれえ! 知らねえよおお!!」
「今だあああああああああ!!」
「え!」
声のする方に視線を向けると、目の前にイライーが現れた。
「きゃああああああああああ!!」
「イエローフレグランス!」
「!!」
良子は、そのままイライーに蹴り飛ばされる。
「俺がいる事を忘れてんじゃあねえぜ! お前はこの俺が相手だ! 同時に二人! どうだ!!」
「なんだあよお! お前ええ!」
敬重は、怯えながらイライーを見る。
「いい! 良いなあ! この恐怖心! 俺の心がゾクゾクと高鳴っているぜ!」
高らかに唸りながら、イライーは興奮する。
「イライー……まさか……」
「へへへ……知っているぜ……俺はお前の苦しみの部分を知っている……人々の不幸……そしてお前は何より恐れているのは……足の怪我だ」
「!!」
「イライー! 貴様!」
霧雨は、怒りの表情でイライーを睨み付ける。
良子は、表情が引き攣りながら足を見る。
(そうか”! 元木さんの部活は陸上! 足をやられたら選手生命が終わる! なかなかやべえ作戦だ!)
風美も、良子の部活については知っていた。
それなりに成績優秀であり、先輩達からもライバル達からも後輩達からも応援されている事を。
「それを……その期待を全て壊す気だね……」