目撃証言31『正体』
「あいつ等は山賊だよ」
「え……山賊なの? あの成りで?」
(嘘だろ……どっからどう見ても貫禄ある爺さんにしか見えなかったぞ)
流石に、文雄もあの二人の堂々たる姿を見て、そう判断せざる負えなかった。
「まああの地獄をしぶとく生き残ったからな……例え凸凹コンビの山賊でもそれなりの人生経験と生きる為に知恵を使って技術を磨き、更には生き残る為に戦術も磨かれて、キモも座っている……色々と考えてきたんだろう……俺達が死んでも世界の人間がほぼ殺されても奴等は生き残る為に、ラグナロクがこの世界にやって来ると共に一緒に来た、しかもバレずに……ここまで来るのにあそこまでの貫禄を付けれるのも納得だ」
「そっそうなんだ」
(それを言われると確かにそうだよな……奥山もお前も五十嵐さんも転生前があるって事はあの世界で一度死んでいる……それを多少の残る傷のみで生き残る時点でなかなかの幸運だ……なるほど……運も実力のうちという事か)
恵斗が理解する前に、文雄は何となくで理解出来た。
「つまり奴等はラグナロクとは関係ないって事?」
「そのとーりでえす! でも分からない事がありまーす!」
「ああ、あの少女だな……多分脅されているようにも思える」
「ああ、奴等は昔から乱暴者で有名だからな……生き残ったとはいえ悪行は行っている……あの子もその被害者って事か……」
流鬼奈の言葉を聞いて、恵斗は怒りに震える。
「糞! あんな小さな子供を! 許せない!」
「そのとーりでーす!! 私も小さい子にあんな悪行! おてんとーさまが許しても! 私が許さなーい!」
「恵斗の言う通りだな!」
3人は、意気込むように、デコウスとボコウンに怒りをあらわす。
「まあ俺達に出来る事なんてあまりないだろが……いつかは解放してやるって事で良いんじゃねえのか?」
しかし、流鬼奈は、あまり関心がないのか少し淡白であった。
「ああ! その通りだ! 流鬼奈! 一緒に頑張ろう!」
「お……おう」
しかし、恵斗に拳を向けられて、思わず顔を赤くしながら拳を打ち合う。
「ッチ!」
文雄は舌打ちをして、怒りを納める。
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「まあ……あの後何事もなかったみたいだし……俺は帰れたけど……あの小さい子何処かで見た様な……」
文雄は、少女に既視感を覚えながらも家に帰宅すると。
隣の部屋の者が騒がしかった。
「ちょっと! 私の子供攫ったでしょ! 攫ったよね! それってさ! 誘拐じゃない? 許される事じゃないわよね! アンタ達訴えられたら終わりよ! 分かってるんでしょ? 何をすれば取り下げて貰えるか……」
「うわー……虐待親のクレームだ……可哀そうに……助けようとして逆に追い詰められるとは」
そんな事を呟きながら目撃していると、ドアから手が伸びる。
「女……我々は何も悪い事はしていない……良いな」
「う!! はい……デコウス様とボコウン様は何もしていません……」
そして、女は操られるかのようにその場を去る。
「やれやれ……虐めるくらいなら我々に渡せば良いモノを……きっと有用な使い方が出来るというのに」
「ああ……あの女は! そしてデコウスとボコウンが連れていた少女は虐待を受けている少女だ! すっかり忘れてた」
そして、文雄は帰路に着く。