目撃証言30『ああ、アイツ等か』
デコウスは、アークスを振り上げて、そのまま地面を叩き割る。
「うおお！」
「く！ 足場が！」
「今だ！」
「分かっている！！」
『任せて！』
ボコウンは、驚異的な体幹で、揺れを耐えながら、一直線で恵斗に向かい、そのままセコーを振るう。
「うおああ！！」
「恵斗！！」
「だ！ だいじょーぶでーす！？」
凜とセシリアが、叫びながら視線を向けると、恵斗は木にぶつかり昏倒する。
「ガキ！ 奴からデュランを取り上げろ！！」
「！！ はい！」
少女は、揺れる大地を何とか走り、恵斗の方へと向かう。
「させねえよ！！」
「！！ の！ 退いて！！」
少女は、涙目になりながら流鬼奈に必死に叫ぶ。
「ダメだね！ テメエがどういう状況か知らねえが！ 恵斗のデュランは渡さん！」
「そんな！」
流鬼奈の拳を見て、すっかり震えて立ち止まってしまう。
「糞！ 仕方ない！ おいボコウン！」
「分かっておる！」
ボコウンは、流鬼奈の方向へと向かい、そのまま鎌の柄で顔面を殴り付けようとする。
「させるかよ！！」
しかし、ガンレッドで防がれて、呆気なくカウンターを受けてしまう。
「ぐが！」
「おじさん！」
「構うな！ ガキ！」
「！！ うん！」
少女は、ボコウンの言葉を聞いて、すぐに恵斗の方へと向かう。
「しま！」
ボコウンに気を取られて、少し出遅れてしまうが、流鬼奈はすぐに少女を追い掛ける。
「させはせんぞ！」
「糞！ タフネスかよ！！ クライアンじゃねえんだぞ！」
しかし、ボコウンは殴られたにも関わらず、すぐに流鬼奈の道を塞いで少女のサポートに入る。
「でかした！！ 行け！！ ガキ！」
「うん！！」
少女は、必死に走って恵斗へと駆け寄ると、手に持っているデュランを取り上げようとする。
しかし、少女の手は掴まれてしまった。
「ダメだ……これは俺でも手に余る……君みたいな少女が持って良いモノじゃない」
「！！ どうして……」
少女は、信じられない光景でも見ているかのように、恐怖で顔が歪む。
「ダメみたいだな……」
「そうだな……仕方ない……撤退する……」
そして、ボコウンはアークスで地面を思いっきり叩き付け、砂埃を回す。
「ぐ！」
目に、砂が入らないように恵斗は、両腕で防ぐ。
その間に、二人は少女を持って逃げてしまった。
「あ！ 待て！」
「さらばだ……いずれまた！ 貴様のデュランは手に入れる！」
「それまで大事に持っておくんだな」
そして、デコウスとボコウンは、少女を連れて立ち去ってしまった。
「あれは……一体何なんだ……ラグナロクではなさそうだが……」
「ああ！ そうか！ アイツ等！ デコウスとボコウンか……そういえばアイツ等も狙ってたっけ……デュランを」
「え！ ああ……そういえば……」
「生き残ってたんですね……相変わらず生存能力が高いデース……」
「え？ え！ なに？」
流鬼奈と凜とセシリアは、納得の様子だが、恵斗と文雄は、全く理解出来なかった。
（なんだ……知り合い？ 謎組織とは関係ないって言ってたが……生き残った？）
