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目撃証言13『両者共に緊急事態発生』

文雄は、息を切らせながら汗を拭う。


「ふー、流石にバレるか……風美とみっちゃんが揃うと俺の考えている事がほぼバレる……大人しくジュースだけ買うか……」


文雄は、逃げた先で考えを改め、真面目におつかいを熟す事に決めた。


「えっと、あ! あったあった! 自販機だ!」


文雄は、自販機に向かって走ろうとした時であった。

ワームホールみたいな穴が突如自販機の近くに現れた。


「え……やば!!」


文雄は、すぐに物陰に隠れて様子を伺う。


「クッヒッヒッヒ……奴等め、油断しているな……俺がここに現れると全く考えていないのか?」

(オーマイゴット……なんて事だ……自販機はもうすぐ目の前なのに……)


いつもの事とはいえ、文雄は自身の目撃体質にゲンナリする。


「さて、ここからがショータイムの始まりだ!!」


ニタリと嗤ったクライアンは、魔力を放出し結界を張った。


「ラグナ共……俺の戦いを邪魔されねえようにここを見張れ……ま、この結界内で動ける奴はいないだろうがな……」


クライアンは、数枚の札を落すとそこからラグナが現れた。


「奴等……俺にラグナが召喚出来ないと思い込んでいるだろうが……別に召喚者じゃなくてもこの札を使えば簡単なんだよ……ま、簡単な命令しか聞かねえが……奴等をこの手で殺した後、この札で集合を掛けて人間共を皆殺しする事も出来るしな!」

(独り言が多いな……情報がダダ漏れだ……)


すると、ラグナは唸りながら周りへの警戒を始めた。


「さて……他の場所にもこいつ等を配置させるか……」

(そんな慎重になる? まあ俺もいるくらいだしそうか……)


ある意味、クライアンの警戒は正しいのではと、文雄は思った。

そして、クライアンが文雄がいる場所とは違う方向へ向かった事を確認すると考える。


「にしてもどうしよう……自販機の前にはラグナ? が居るらしいし……見えないから避けて通るのも難しいし……取り敢えず来た方向に戻ってみるか……」


文雄は、物陰に隠れながらその場から離脱した。



結界が張られる少し前の事。


「ジュース兄さんが買ってくるかわ私は焼きそばでも買ってこようかな?」

「そうね、文雄さんも焼きそばで良いって言ってたし」

「私達も焼きそば買おうかな?」

「そうね、久しぶりに食べたいわ」


四人は、同じ焼きそばを買おうと考えた。

すると、風美と美奈子が、二人に伝える。


「じゃあ私達二人で行くよ、余り大勢で言っても意味ないし……」

「そうね、二人ぐらいでいいかも……」

「いいの?」

「お願いできる?」


二人の言葉に、良子と霧雨は大人しく待つ事にした。


「おお、並んでる並んでる……やっぱり二人で来て正解だね」

「そうね、四人だと少し邪魔になっていたかも……」


そして、二人は店の列に並んだ。


「さてと、兄さんが戻ってくる前に買えるかな?」

「まあ大丈夫でしょ? あの人もさすがにオープンでは性的なセクハラはしないだろうし」


そんな会話をしていると、風美の目の前で並んでいる客が倒れだす。


「え?」


意味が分からず、風美は周りを観察していると、隣にいた美奈子もふらついていた。


「え? 大丈夫?」

「う……うん……糞……これ前もだ……だがこの私が前に受けた事のある攻撃にいつまでも苦戦すると思うなよ……」

「え?」


すると、美奈子は頭を思いっきり近くにあった机で叩き付ける。


「うおお!! 何してんの!!」

「ふー……これでスッキリした」


美奈子は、スッキリした表情でおでこから垂れる血を拭く。


「だ……大丈夫?」

「うん、それより……周り見て」

「え」


風美は、美奈子の言われた通りに辺りを見回すとどこか風景の色が赤みがかっていた。


(これは……兄さんが行ってたラグナロクの仕業かな?)

「何かが起こっているのは分かる……多分皆が倒れたのはこれが原因なんでしょ? 風美?」

「え……なんで……」

「周り見てあまり驚いていなかったのと、さっきの事との関係性があるのかなって?」

「ヤダ怖いこの人……でもこれは多分私より兄さんの方が詳しいかも」

「ほほう、まあ文雄さんもあんたと同じ目撃体質だしね」


美奈子も、長年二人と一緒に居た事により、文雄と風美の体質については多少理解があった。


「さてと、取り敢えず何が原因かを探しますか」

「いや……じっとした方が?」

「アンタ達はそれで良いんだろうけど……私としてはさっさと解決したんだよねえ……」


すると、美奈子は列から外れると女子ロッカーの方へと走り出す。


「ちょ! 待ってよ!! どうするの?」

「こんな人が多い場所より、人通りが少ない場所の方に原因がある……そこを徹底的に探す」

「ちょっと待って」


風美は、美奈子を呼び止める。

その言葉に従い、すぐに美奈子の足が止める。


「どうしたの?」

「しっ」


風美の指示に従いながら、辺りの様子を観察する。

すると、近くにいた良子と霧雨は倒れゆくプール客と監視員を見て警戒態勢を取っているのが、目に入ったからである。


「霧雨ちゃん! これって!」

「ええ……恐らく秘密結社ディプレッション!!」

『みんなが危ないっぺ!』

『みんなを守るップ!』


ラノベの敵の仕業だとは、これっぽっちも考えていなかった。

その様子を見て、美奈子は少し考えると、風美を見る。


「風美、少し好きに動いてくれる? 貴方の目撃体質がもしかしたら答えを導いてくれるかもしれないし」

「分かった」


そして美奈子は、風美の移動する方向に歩き出す。

そして、しばらく歩いていると、秘密結社ディプレッションの幹部達を見つける。

幹部達も、きっちりラノベの敵の罠にしっかり巻き込まれていた。


「何だこれは! 一体どういうことだ! 作戦時間まで結界は張らないんじゃないのか!」

「知らないわよ……何かの異常事態じゃないの?」

「仕方ないわね……もういっそうの事動き出さない?」

「は! そうだな! そっちの方が分かりやすい!!」


突然の出来事に困惑するネチネー、それでも尚冷静な分析をするダークネスドキドキの戦士こと、ダークネスアイシャドウ、自ら動き出そうと考えるキレー、ただ暴れたいだけのイライーとそれぞれの反応を見せた。


「あの人達、何でプールで……」

「うん、取り敢えずプールに静かに入って様子を見よう」

「……うん」


幹部の異様な姿に、美奈子は怪訝な目で見るが、風美の言葉に従う。


「待て!! 上からの指示がまだ来ていないのに勝手な事を!!」

「貴方もいつまでも指示を待ってないで自分で考えたらどう?」

「何だと! 新参者の癖に!! 大体お前らはいつもいつも……」


当然、勝手に動こうとする仲間に対して、ネチネーは、ネチネチと文句を言い始める。


「喧嘩が始まった……大丈夫? このチーム?」

「これが現実か……」


美奈子は呆れ返り、風美は頭を抱える。

ダークネスアイシャドウは、当然気にも留めず、仲間達と動き出そうとしたその時であった。


「そこまでだよ!! 秘密結社ディプレッション!」

「貴方達の好きにはさせない! 早くこの結界を解きなさい!!」


すると、既に変身したドキドキの戦士が現れる。


「また変なの湧いた」

「まあまあ」

「黙れ! 俺達の責任にするな!」


ネチネーの怒りは、当然である。

悪の組織である為、疑われても仕方ないが、今回ばかりは、被害者である。

全てが、秘密結社ディプレッションの仕業とは限らない。

例え、秘密結社ディプレッションを倒したところで、問題は解決しない。

そういう意味でも、彼女達は、まだ未熟であった。


「そもそもお前達は何の根拠を持って俺達が仕掛けたと考える! 俺達が居たから俺達の責任にしたのではないのか! そうやって真実がどうであるか考えもしないで……」


ネチネーは、ネチネチとしだ文句を言い始める。


「じゃあなぜ貴方達はここに勢揃いしているのかしら? 例えこの結界が貴方達でなくても何かを企んでいるのは明白、このまま放置も出来ないわ!!」

「そうだよ! 私とブルーネイルが止めてみせる!」


やる気満々の二人に、ネチネー以外の幹部は、戦闘態勢に入る。


「おい! 指示があるまで俺は戦わないからな!」

「勝手になさい」

「私達でけりをつけるわ」

「ヒャハハハ! 腕がなるぜええええ!」

「負けないよ!」

「ここで決着をつけるわ!」

『負けないで欲しいっぺ!』

『どうか二人に勝利をップ』


そして、秘密結社ディプレッションとドキドキの戦士の戦いは人知れず始まった。

風美と美奈子の二人以外は、知る由もない戦いである。

しかし、美奈子は風美の肩を叩いてコッソリと囁く。


「コイツ等じゃないみたいだし、他の原因を探そう」

「えっと、分かった」


風美は、美奈子に引っ張られてプールの水に隠れながら移動する。

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