episode1 新たな朝と朝ご飯
「ん…んぅん……あさ………。」
春の暖かな日差しと、朝ご飯にいつも食べている味噌汁の匂いを感じながら体を起こす。
枕元には1つの紙切れが置いてある。
ーーー進級おめでとう!愛の愛しのおばばよりーーー
「朝からなにを…ふふ」
1つの笑みと幸せを感じながら身支度をし、居間に向かう。ちゃぶ台には湯気が立っている白いご飯と銀鮭、味噌汁とたくあんの漬物が置いてある。
我先にご飯を食べようと思ったが、まずは伝えなくては行けない人がいる。
そう、おばあちゃんだ。
台所に足を運ぶと割烹着を着たおばあちゃん、梅おばあちゃんが立っていた。
「おばあちゃん、手紙見たよ。ありがとう」
「なによ〜急に朝から。中学生最後の年、しっかりと楽しみなさいね」
「うん。……一緒に朝ご飯食べよ!」
そう言うとおばあちゃんは「はいよ」と一言口にし居間に向かった。
「そういえば今朝はミカンちゃんこなかったねぇ」
「何かね、今日は新入生への代表の挨拶があるらしくて
いち早く学校に行ってるんじゃないかな?」
「そうかい」とおばあちゃんは少し寂しげな顔をした。
時計を見ると時刻は7時30分前、今日は入学式がある為少し遅めの登校。
だけどミカンの様子が気になり、早く家を出て学校に向かおうか悩んで…
「じゃあパパっと歯を磨いて学校いくわ」
「ならこれをミカンちゃんに!」
と、おばあちゃんはおにぎり一つときんぴらが入ったタッパーを渡した。
「あのミカンちゃんでも多分緊張してるだろうから、
おばばからのパワーを渡してきて!」
おばあちゃんなりに心配してるんだろう、なら俺は…
「了解!」と、とびっきりの笑顔とおばあちゃんのご飯と一緒に家を出た。
バス停に着いたことだし丁度いいかな、さっきから出ている名前のミカン、それは赤城家の3女【赤城蜜柑】だ。
僕の幼なじみで《アイドル》だ。
しかもただのアイドルでは無い、国民的人気のセンター。
僕と彼女の過去はおいおい話すとしては、今は早く蜜柑に会わねばならない!!
目的のバス降り場につき走る。
ただただ走る。
「はぁはぁ、ふぅ…はぁはぁ……やっと着いた……
確か、講堂で演習してるって言ってたよな」
足早に講堂へ向かう。
いつも見ている校舎の風景、生徒達がまだ登校してない朝の学校。ちょっぴり優越感に浸りながら向かう。
講堂から聞こえてくる聞き慣れた声。
こっそりと開いている扉から覗くと、普段見慣れない、テレビでもそうそう見れない凛々しい表情の彼女がそこに居た。
「生徒代表、3年 赤城蜜柑。」
「………よぉ!」
「うぅん?……え?愛??なんで???」
「なんでってそりゃあ……これを、ばあちゃんのご飯を届ける為に」
「はぁあぁ……腰抜けちゃった」