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ウチのお父さんが一番ヤバイ

4000文字ほどの短編になります!

よろしくお願いします!

小山高志は普通の会社員だ。



妻と子どもたちに囲まれ、幸せな生活を送っている。


変わったところや特技は特にない。


強いて言うなら、高志は適応能力が高い。



驚くことがあっても「そういうものか」とある程度すぐ順応できる。


流されやすいとも言えるかもしれないが。



「高志さん、ごはんよー!」


階下から妻である美機の催促の声が聞こえる。


高志は急いでスーツに袖を通すとリビングに向かう。


「おっと」


うっかり忘れるところだったと、高志はベッドの横に置いてある眼鏡をかける。



高志は、いままでは裸眼で頑張ってきたが、ついに昨日眼鏡を購入したのだ。


なくても平気だと思っていたが、眼鏡をかけるとやっぱり世界の解像度が変わった。


細かいところまで、気づくようになったような気がする。


そうして、今度こそリビングへと向かった。


「おはよう」


「おはよー、パン、今焼いてるからちょっと待ってね。」


そういって妻の美機は、食卓でパンをかじっている。



「ああ、今朝は急いでないからだいじょう……あれ?」


高志は、受け答えしながら美機のつむじの辺りに注目する。



そこには1㎝にも満たない長方形の穴が2つ開いていた。


その形状はいわゆるコンセントの穴のようである。



「……え?」


さらに顔を近づける。



よく見るとコンセント穴の下に『100V』と書いてある。


「んん?」


高志はコスコスとコンセントの穴をこする。



「ひゃ!? ちょ……な、なに!? どうしたの、高志さん!?」


美機が急に触られてこそばゆそうに慌てる。



「なんか、君の頭に……コンセントみたいなのが……」


高志が聞くと、きょとんとしている美機。



「そりゃロボットなんだから、普通ついてるでしょ……」



「え……? ロボットって……そう、だったっけ……?」



「そりゃあ、最新の機種だと、たいぷしーとかかもだけど……何、もしかして私が老けたって言いたいの?」


「え!? いやいや、全然! というか、そういう規格とかのことではなく……」



チンとトースターの音がして、美機がパンを取りに行く。


その後ろ姿に高志は尋ねる。


「僕、今まで全然気づかなかったんだけど……」



「眼鏡つけ始めたからじゃない? 私も、最近レンズ交換して高志さんの襟足にホクロ3つ並んでるの気づいたし」


「え、そうなの?」


「うん。夫婦でも結構知らなかったことあるのね~」


(そうか……ホクロが3つも……そうか、コンセントもホクロも同じか……)


高志は納得しかけるが、ひとつ重大な疑問が噴出する。



「あれ? じゃあ、亜子と栄太は……どうやって……?」


妻がロボットなら、子供たちはいったいどこからやってきたのか、という疑問が浮かび上がったのだ。


美機が怪訝な顔で高志の方を見る。


「あなたも出てくるとこ見てたでしょ……急に何言ってるの」



「そう……だよね……?」


確かに美機のお産には高志も駆けつけて、一緒に見守った。



「何、今日は朝からどうしたの? 亜子と栄太もいるのに変なこと聞かないでよ……」


プリプリしている美機だが、高志はそれどころではない。


高志は二人に尋ねる。


「なあ、お母さんって前からロボだったっけ……?」



すると、長女の亜子は、頭に生えた二本の角と背中にあるコウモリのような翼の手入れをしながら鼻で笑う。


「パパ、アタシには夜更かしすんなっていう癖に寝ぼけすぎでしょ」


「亜子、角と翼はご飯食べてから。お行儀悪いわよ」


「はーい」



亜子にとって母親がロボだったことは常識だったようだ。


高志はもう一人の子供、栄太の方を向く。


「……え、じゃあ栄太はどう思う?」


栄太は第一触腕と第二触腕でパンにマーガリンを塗りながら、


第三触腕でテレビのチャンネルを変更し、第四触腕でスマホをいじっていた。


しかし、高志の質問を受けて顔を上げる。顔の半分ほどもある大きな黄色の複眼に高志の姿が無数に映った。


「;、、;。:」・。¥、。^^ー0¥¥・;(まあ……親の生々しい下ネタは、朝から聞きたくなったかな)」


「あ、ごめん」


(そりゃそうだよなぁ……出てくるだのなんだの。これはよくなかった。気を付けよう)


高志がそんなことを思っていると、美機が焼いてくれていたパンをもってきてくれる。


「はい、高志さん」


「ああ、ありがとう」



高志は、そのまま焼きたてのパンをかじる。


(うーむ……美機とはもう20年以上一緒に暮らしているが、まさかロボットだったとは……)


衝撃の事実である。



だが、例え妻がロボットであっても、美機であることは変わりない。


(……まあ、いままでロボットだったことで不都合はなかったしな)



あっさりと全てを受け入れた高志は、コーヒーを一口すすった。


そんなとき、プルルルルルと着信音が鳴る。


鳴っているのは、美機の携帯のようだ。


「はい、もしもし。……え、また未来から!? はい、すぐ行きます!」


電話を切る美機。



「ごめん、パート早出することになっちゃった!」


そう言って、ばたばたを急いで出勤の準備をする美機。


「夕飯までには帰れると思うけど、遅くなりそうならメールするね!」


「、。:。:(了解、なんか作っとくよ)」


「ママ、いい加減スマホ買いなよ。アタシ、メールとか見ないし」


亜子が尻尾で器用にスマホを握り、プラプラと振ってアピールする。



「だってスマホなんて使わないし……高いじゃない、あれ」


美機は機械オンチで、亜子から散々スマホの買い替えを進められているが、


いまだに渋っているのだ。



「今なら安いのいっぱいあるんだってば、1円とか」


「亜子ちゃん、タダより高いものはないの。そういうの私、怖いのよ。変な契約結ばれるんでしょ?」


「アハハ! 大手の企業なんだから今時、魂取るような契約させないって。ビビりすぎ~」


亜子はしっぽと翼をパタパタさせて笑っている。



「。:;。¥¥・・¥・;(母さん、時間大丈夫?)」


栄太が第六触腕で、時計を指す。


「あ、大変! じゃあ行ってくる!」


玄関に向かう美機に声をかける高志。


「財布とハンカチは? 忘れ物ない?」


「大丈夫ー!」


高志が見送りの言葉に答えると、慌てて駆け出していく美機。



玄関のドアの閉まる音とともに、飛行機が近くを飛んでいく、ジェットエンジン音がした。



「あそうだ。アタシも、今日遅くなるかもだから。晩ご飯パスで」


朝食を終えた亜子が席を立ちながらいう。


「、。・][・;:(また例のバイトか)」


「ちょ……! お兄ちゃん!!」


栄太がふと言った発言を亜子が咎める。



「例のバイトって……ファーストフード店のやつか?」


高志が、亜子に尋ねる。


「あ~……それは、ちょっと前に辞めちゃって。今は別のやつ」


「別のってなんだ?」


高志はそんな話は聞いていなかった。



「いや、変なバイトじゃないから! むしろ正義を成す的な? とにかくパパが心配するようなバイトじゃないから!」


亜子が最近始めたというバイトは、友人の彼氏が浮気していた際に、亜子が得意の魔術によって彼氏をEDインポにするという、闇(魔術)バイトだった。



しかし、そんなことは父親に話せるわけもない。


亜子は誤魔化すように、コウモリのような翼をはためかせて、急いで洗面台へ行ってしまう。



去り際に、秘密をばらそうとした兄の栄太に呪詛は吐いておく。


「お兄ちゃんは、死刑だから!」


「;。:(こわっ)」


そう言いつつも、何事もなかったかのように食事を続ける栄太。


タコのような口から、目玉焼きをちゅるちゅるとすすっている。



「亜子は優しい子だから、別にそういう心配はしてないが……内緒のバイトか……うーん。反抗期ってやつなのかなぁ」


高志が独り言ちると、栄太が答える。


「¥^¥」「。・」;、。。;(というか、親離れの方が近いんじゃない? もう高校生なんだし)」


「え、そっちか……それもやだなぁ」


「・。ー¥:;^^ー(そういうもんだって。特に男親なんて)」


「というか栄太は、亜子のバイト知ってるのか?」


「ー^ー・。、。¥「」「。」;。:::^¥・・。(まあね。詳しくは知らないけど、大丈夫じゃない? いざとなったらあいつの魔術で人間なんか、呪い殺せるでしょ)」


「まあ、栄太が言うなら……大丈夫か……」


「、。。:「@;^^ー(父さんも遅刻しないようにね)」


「おっと、そうだ。あんまりゆっくりしてちゃダメだ」


「:、・^ー@「・:(お皿置いといていいよ。洗っとくから)」


「いつもありがとうな。じゃあ行ってくる」



そう言って、高志は玄関を出た。


「さて、今日も一日頑張るか」


小山家の日常が始まる。







そして、高志が出勤してすぐ後に再びジェット機の音が近づいてくる。


ガチャっとドアが開き、美機が入ってくる。


「あれ? ママどうしたの?」


「免許! 免許証忘れてた!」


「・、。「。、、・、(父さんが出かけに声かけたのに)」


「だって、持ってると思ってたんだもん!」


「そういえば、ママさ」


「んー?」



「パパに洗脳装置とか埋め込んでなかったの?」


亜子は美機に何事もないように尋ねる。



「。、:。@(それ俺も思った)」


栄太も顔を上げて同意する。



「あー、出会った頃はそうしようと思ってたんだけど。高志さんマイペースというか……なんでも受け入れちゃうから機会がなくて。別にいっかって」


美機はなんでもないことのように答えた。



「マジで? それでいままでバレなかったの?」


亜子が驚くというよりドン引きした表情で言う。



「そうなのよ~。あなたたちが産まれても大喜びするだけで、何も気にしてなくて。


むしろ今日、私のコンセントに言及してびっくりしたわよ」


「、。;:マジか……



「栄太と亜子も別に催眠や魔術とか、高志さんにかけてないんでしょ?」


「うん」


「:@。:^ー¥:;:^(かけようと思ったこともないよ)」



「あははは! さすが、高志さんね~! 全てを受け入れてるわ!」


大笑いする美機。



亜子と栄太が顔を見合わせる。


「いや、まあいいパパだとは思うけど……」


「:@・^ー(うん)」



ウチの父さんが一番ヤバイ



「わね!」


「じゃん」


「:@;(よな)」





一方そのころ、駅のホームに向かう高志は、ふいに鼻のむずがゆさを感じて、大きくを息を吸い込んだ。



「へっくしょん!!! うーん……風邪かなぁ?」

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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