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短編

シロくんとクロちゃん

作者: 高原 律月

ハジメマシテ な コンニチハ

シュバッ=͟͟͞͞( ⊃ᐛ∩)


高原律月です。


今回は初めての企画物になります。

連載中の作品をほっぽり出して別のものばっかり上げておサボりしてます。


キーワード見たらビビビってなって、勢いで3時間くらいで作ってみました()


コンセプトは「お手紙」です。

お手紙は読まなきゃ伝わらないし、読んでくれても伝えるのって難しい。

現代のお手紙といえば、S・N・S!!

時代が変わっても不変のお手紙といえば、気持ちですっ!




それでは、どうぞ少しの間お付き合いお願いします。







 黒いヤギが呟いた。


「星は一人ぼっちで何年も先からアナタにメッセージを送るのよ」


 白いヤギはこう言った。


「星が瞬くのは輝くのは地球を見つけた時だけなんだ」


 ぼくは訊ねた。


「おほしさまは寂しくて泣いてるの?」


 母さんは答えた。


「お星さまは泣かないよ……泣くことはないの……辛くても悲しくても1人でずっと光が届くまで待ち続けるの……」


 暗くて真っ白な静かな部屋で母さんとずっと星を眺めてた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 夏の蒸し暑い日差しがアスファルトを照り返し、アブラゼミの煩い声が苛立たせる。どことなく煙臭い匂いが部屋に充満している気がした。


「くっそ……毎日こうも暑いとイライラする……」


 閉め切った部屋で、見ててもしょうもないような動画を垂れ流したモニタとスマホの明かりがぼんやりと明滅している。

 世の中はーー、世間の学生は夏休みを迎え、俺はネットの世界に逃げ出した。


「夏祭り……海水浴……テーマパーク……どいつもこいつも……」


 スマホの通知音が鳴り止まない。

 そのかん高い音が更に俺をイライラとさせる。

 だけど、それを止めることが出来ない。


「世間で言うとこのネット依存ってやつだな、これ……くっそ」


 自分には関係ない何処かの誰かも浮かれて遊び回るクラスメイトの動向も俺には関係もないのに、常にチェックしてないと堪らなく不安になる。クラスのグループLINEもインスタもツイートもYouTuberの新作動画もーー、あれもこれも暑さを忘れさせてはくれないし見てなくたって死ぬことなんてない。


「あー……だるぃ…………あちぃ……ウザイ……しね……」


 誰も答えてはくれない。


「……………………くっそ…………」


(親父は仕事に行く前になんて言ってたっけ?

 なんか頼まれてた気がする……朝ごはん食べながらツイートチェックして、コーヒー飲みながらテレビの天気予報見て……それで…………)


「なんでだ、なにも思い出せない……」


 親父との会話どころか、チェックしてたはずのツイートの内容も今日の天気もなにも思い出せない。

 ふと時計を見て唖然とした。


「もう16時じゃん」


 起きて何かをしてた記憶もないまま、時間だけは過ぎ去っていた。

 夕飯の支度をしようと階段を降りる。

 トン……トン……と足音だけがいやに響く。


「あ、スマホ忘れた」


 慌てて自室に戻り、スマホを手に取った。

 カーテンの隙間から漏れた西日がほこりをかぶった黒いヤギのぬいぐるみに当たっている。

 降り積もった(ほこり)をゴミ箱の上で払いながらごちた。


「……きったねぇな」



 一回、はたいて思い出す。


(シロくんとクロちゃん、可愛いでしょ?)



 一回、はたいて思い出す。


(パパとママはね、白色と黒色なのよ。白は若くてキレイなこれからのお星さま、黒はいずれ見えなくなっちゃうお星さま…見えなくなっても居なくなったりはしないんだよ)



 一回、はたいて思い出す。


(お星さまは暗い宇宙の中をずっと旅して、時々は迷子になって、また走って、歩いて、長い時間をかけて、地球でアナタに会った時に"こんにちは"って言うために、立ち止まらずに、ただひたすらに……旅を続けるのよ)






 また一回、はたいて思い出す。


(遠いお空の向こうからたどり着けるお星さまは数多くはないのかもしれないけど、それでも人と人が……言葉と言葉が繋がるのは、とても偶然で、とても奇跡で、とても素敵なことなんじゃないのかしら?)




 ヤギのぬいぐるみを机に置いた。


「そうだった、花を買って来なくちゃな……親父はそう言ったんだ」



 線香を探して戸棚を漁る。

 見つからない。

 ライターも必要だ。

 見つからない。

 他に何が必要なんだ。

 わからない。



 今までずっと俺はそうだった。

 忘れようとしてたんだ。



 辛いとか悲しいとか思いたくなくて、楽しいとか嬉しいとかそう思うのは悪いことだと思って、耳を塞いで子供の頃からずっと泣きわめいて可哀想ぶって部屋にこもって「こんなの最低だ」って叫んで……全部ぜんぶをみんな人のせいにして自分じゃない他人に気を遣わせて、察しろよって無言で訴え続けて共感してもらいたくて、だけど共感されたら煙たがって人を振り回して、悲劇の主人公になったつもりになって相手にされなくなったら拗ねて嫉妬して羨んだりしてみて、人の価値に自分の価値観を押し付けてた。



 結局、散々探してたものはリビングの机の上に置かれてた。


「言えよ、親父……言ったけど俺がちゃんと聞いてなかったのか」


 線香とライターとそれから花代をカゴに突っ込んで、自転車をこいで全速力で花屋さんへ向かう。


 久しぶりに自分の意志で足を動かした気がした。

 自分で動かす足は重くて言うこと全然きかないしすごく疲れる。

 自転車を止めて花を買った。


 店を出て自転車をこぎ出した時、後ろから声をかけられた。


「……や、久しぶり」


 振り返るとクラスメイトが気まずそうに立っていた。


「一週間前に学校で会ってるだろ、顔を見たかは覚えてないけど」

「そうだけど……今日は、ゆーと……山宮君がなんだかいつもと違うから、ついね」

「ゆき……浅井さんはいま帰り?」

「そ、部活」


 言われてみると同じ学校でクラスメイトなのにすごく久しぶりに顔を見た気がした。


「バレー部だっけ?バスケ部だっけ?」

「どっちもハズレです、吹奏楽部です」

「えっ…そま?」

「人に興味なさすぎでしょ……」

「いや、イメージがね」


 聞こえるような大きな音で呆れたようにため息される。

 しばらく無言で自転車を押しながら二人で歩いた。


「あのさ……」

「あのさ……」


 僕と彼女の声が重なる。


「……」


 ちょっとした間があった後、彼女が続けた。


「今年はお母さんのとこ、行くんだ」

「なんで?」

「花屋さんから出てきたしお線香とかカゴの中に入ってる」

「ああ、そっか」


 またちょっと無言になる。


「どうして?」


 また訊かれる。


「おじさんから聞いてる。と言うか、お母さんからおじさんが言ってたって聞いてる。毎年お墓参りしてないって」

「お前さ、けっこーズケズケ聞いてくるな」

「いちおね、私もこれでも……お墓参りしてるから」

「えっ……」

「シロくんとクロちゃん、憶えてない?」

「憶えてる」

「シロくん、私の家にあるよ」

「どうして?」

「ゆーとが私にくれたから」

「憶えてない」

「そうだと思ってたよ。返してとも言われてないし、おばさんの形見みたいなものだから捨てたりする訳にもいかないし……ゆーとの代わりに毎年一緒にお墓参りに連れてってた」

「うわっ…おっっもっっっ……」

「ひっど……そこはお礼とかお詫びとかするとこじゃないの?」

「それは恥ずい」

「まあ、私もちょっとそう思ってた。だけど毎年やってたら止め時が分からなくなっちゃって、さ」


 自転車の車輪のカラカラと回る音が嫌に響く。


「ごめん、ありがと」

「いいよ、おばさん達のこと好きだし……ゆーとのことも別に嫌いじゃないし」

「そっか」


 自転車を置いて、お墓とお墓の間を歩いてく途中で立ち止まる。


「どしたの?」

「これ、ほんとごめん……」

「ん?」

「来たことないからガチで場所わかんない」

「うわー、ないわー……」


 ちょっと得意げな幼なじみの背中を申し訳ない気持ちで眺めながら後ろを歩く。


「ここ」

「あざす」


 お墓の前で会釈してライターの火で線香を炙った。

 線香の立ち煙る匂いに少しめまいがする。

 横からほのかに香るシャンプーの匂いが混じる。


「近くね?」

「いや、狭いし」

「もう少しそっち行けるだろ」

「むり、そっちこそもう少しそっちに寄ってよ」

「えぇ……」


 彼女のしっとりとした二の腕がピタッと腕に当たる。


(距離感バグりすぎ……バグりすぎ……)


 気が付くと、後ろめたいこととかを忘れて墓参りしていた。

 線香を置いて手を合わせる。

 会釈した彼女のうなじから垂れる髪が妙に艶やかで不謹慎と分かっていても心臓が跳ねる。

 夕日で煌めくその髪がキラキラと瞬いてるようにも見えた。


「……なに?」

「毎年、代わりにこうやって来てもらってたことがとてもありがたいなーって」

「今年はちょっと狭くってイヤだから来年からはまたシロくんと来よーかな」

「来年も一緒でお願いしていいすか?」


 伺うように精一杯感情を出さずに俺は言った。


「じゃあ仕方ないなー、いいよ」


 読めない表情のまま、彼女もそう言った。


「わたし、自分ちのお墓も寄ってくからちょっと待ってて」


 一人になって、どっと疲れた体をうなだれさせながら待っていると向こう側から親父がやってきた。


「侑人、来てくれたんだな」

「父さん、今までごめん」

「ああ」


 久しぶりに自分の父親をまともに見た気がした。

 背中がいやに大きく見える。


「ん?」

「どうした?」

「そう言えば、いつから居たの?」

「実は侑人たちが自転車を止めたとこから後ろに居た」

「えっ……それって……」

「その、声が掛けにくくてな……今朝も生返事ばかりしてたし」

「ごめん」


 父さんは立ち上がると軽くヒザを払った。


「すまん、仕事に戻らないといけないから夕飯は無くていい。たぶん遅くなると思う」


 そして、二、三歩ほど歩いたとこで立ち止まり、続けた。


「あ、それと……こういうことがあった時はお酒を飲みたいもんだ。早く飲めるようになれよ、侑人」


 そう言い残した父親の背中を見送った。

 ほどなくして、由希が戻ってきた。


「お待たせ、おじさんも来たみたいだね。挨拶したかったんだけどなー」


 増えた花束を見て彼女はそう言った。


「仕事に戻るって」

「そっか。たまに一緒になるんだ」

「会うと俺のことなんか言ってる?」

「いや、特にはないかな」

「そうなんだ」

「たぶんだけどね、ゆーとのことを信じてるんだと思う」

「……?」

「言うより言わない方が辛い時もあるんだよ……けど、なにも言わないのはきっとそういうこと」

「ふーん、そっか」


 アブラゼミの声がいつの間にか聞こえなくなって、夕日も陰り始めていた。


「そう言えば、シロくんはどうするの?」

「返してほしい?」

「いや、ゆきに持っててほしいかな……」

「だったら、これからはお手紙は読まずに食べちゃったらダメだからね?」

「どういうこと?」

「別にいいけどLINEぜんぜん返してくれないし……」

「え?来てたっけ…あっ……」

「スマホ置いてきちゃったんでしょ」

「……みたい」


 彼女はカラカラと笑った。


「ごめん、内容は?」

「一緒に夏祭り行く?行かない?」




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー END ーーー



いかかでしたか?


意味深とか深掘りとか伏線とか、そゆのは小賢しく考えてる訳ではないんです。

素直に考えてることを表現するのが苦手なんです!(理由:めっちゃ恥ずかしいから)


分かんねーよとか文章が痛いよとか思わせてしまったらごめんなさい。

スタイル的に三つ子の魂百までですo(`・ω・´)o

短絡思考なので深い意味はありません、たぶん。




それでは、またいつか〜 ノシ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 冒頭でSF?と思いましたがそういう話でしたか。 一歩踏み出すことができてよかったです。
[一言] 最後の一行が良いですね! 鮮烈に締めています。 お祭り行ってらっしゃい^_^
2022/12/17 10:46 退会済み
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