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マンガと僕の夢

作者: 酉 真菜

 僕は最近、至高なるマンガを探している。少し前までは、次に出てくるおすすめで満足していた。実際、おすすめのマンガは、今でもとても気に入っている。しかし、時折、マンガ一覧で偶然押した一冊が、おすすめとは比べ物にならないくらい面白いことがある。


 もっと面白いマンガを読めるように、昨日僕は歴史的な作品を読んで、見識を深めようと決意した。調べてみると、昔はマンガを描くことを仕事していた人がいるらしい。とりあえず、目についたかなり昔のマンガを読んでみることに決めた。


 かなり昔のマンガだからか、少し分かりづらい表現が散見される。


<表現を一部変更して、お楽しみやすいものにすることができます>


 マンガの上部に現れたポップアップが、僕の決意を鈍らせる。<変更する>を押したいが、これは勉強である。我慢だ。<しない>を押すと、ポップアップが消えた。ページ脇に出る説明欄を読みながら、ページを進めていく。


「翔太くんの将来の夢は何?」


 どうやら僕と同い年ぐらいのこどもは、昔『将来の夢』なるものを持つのが普通だったらしい。『将来の夢』……。毎日のように至高なるマンガが読めるようになりたい……ということは僕の『将来の夢』なのだろうか。このマンガをさらに読み進めていく。


「僕、漫画が好きだから、将来、漫画家になりたい!」


 翔太くんはマンガが好きだから、漫画家になるということを『将来の夢』にしたらしい。漫画家か……。翔太くんの周りもその夢を応援すると言っている。僕もマンガが好きだから、漫画家になるということを『将来の夢』にすべきなのだろうか。漫画家になるということは、つまりこんな感じのマンガを僕が描くということなのだろう。……。あまりイメージができない。自分が考えるマンガはこの端末に表示されるし、たとえ描いたとしても、表示されるマンガのほうが面白いのではなかろうか。


「でも漫画家って大変だぞ。食べていけるのはほんの一握りだ」


 漫画家とは、マンガを描くことを仕事にしているだけじゃないらしい。漫画家はマンガを描いて、いろんな人に見せて、食べ物?と交換してもらうらしい。この前、僕の隣のおじさんは、一時期仕事をしていたと言っていた。一部分のプログラムをAIと呼んで、そのAIに名前をつけるという作業を作ったという。今の時代、仕事なんて言ったら、AIがする新しい作業を生み出す作仕家ぐらいしかいないけど、昔はプログラムがやっていることを人が代わりに仕事としていたという。今活躍している作仕家だってこの世界に十数人しかいないというのに、マンガを食べ物と交換するなんていうおかしな仕事をする人なんて、一握りしかいないのも当然だろう。


 翌日、僕は目が覚めると、昨日読んだマンガのことを考え始めていた。『将来の夢』。このキーワードがとても引っかかる。今日は他の昔のマンガを読んでみようかな……。いや、漫画家についてもっと調べてみたくなった。マンガを描きたいとは思わないが、マンガを描くことでなにか得られるような気がしてならない。今日は自分の手でマンガを描いてみよう。


 とりあえず、マンガを描く補助機を用意してみた。首を捻って、少し肩を回す。補助機が僕の体に装着させられると、マンガ講座入門を選択した。ブレインストーミングやマインドマップを使いながら、まず案出しが始まる。数時間後、12ページに渡るマンガが完成した。いつも端末で見るものよりも内容が薄いが、達成感がある。


 少し席を移動させ、温かいお茶と一緒に休憩を取る。端末を開くと、おすすめに自分の描いたマンガと同展開のものがある。やはりプログラムが作り出したマンガのほうが僕のマンガよりも面白い。しかし、なぜかわからないが、マンガ講座中級編を受けたくなってきた。


 中級編の出だしは、様々な参考資料から始まっていた。そういえば、あのマンガによると、漫画家はネタ出しを散歩や旅行などいろいろなことを試して行っていたらしい。昔の人は、自分の特性を生かした発想法を使わなかったなんて、あまりにも無謀と言わざる負えない。それに、手探りで描き方やコマ割りを決めていたというのだから、プログラムが自分用に組んだ講座を使っている僕からすれば、昔の人は大変だったのだなぁ、という感想しか湧いてこない。


 しかし、マンガ講座を受けてみて、僕にも夢なるものができた気がする。いつかは講座を使わずに、昔の人のやり方で、自分のマンガを描いて見たいと思う。

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