ミルの手紙
「ねー。グラン。やっぱりシードって可愛いじゃない?」
「いきなりどうしたんだ?」
「護衛付けないと危なくなぁい?」
「家の中にいたら大丈夫だろ。」
「あなたも、いない時があるじゃない?」
「ヘレンがいるじゃないか。」
「シードの練習相手になる人がいるんでしょ。あと、勉強教える人もいる。」
「そんなたくさんのことを任せられる人なんていない。一応、俺が家からでてきたの知ってるだろ。あとな、護衛なんて簡単に任せられるわけがない。そんなことミルもわかってるだろ?」
「じゃあさ、明日の朝、家に来るから審査してよ!」
「は?![#「?!」は縦中横]いくらなんでも急すぎるだろ!…………もう仕方ないか。何人来るんだ?」
「多分1人よ。付き人が居るかもしれないけど。多分断れないと思うけどね(ニヤニヤ)」
「頭が痛くなってきた。もう寝る。」
「おやすみー。」
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数日前。ミルは剣の修行が実戦になることも予想済みだった。
ミルは実家にこの手紙を書いていた。
『お父様。ご機嫌いかがお過ごしですか。私の息子シードが生まれてから早5年が経ちました。一通も手紙を送らず申し訳ありません。そちらへお伺いするのは夫グランの実家にご挨拶行ってからにしようと思っております。できるだけ、自発的に行かせようと思っておりますのでご時間かかると思いますが、お許しください。当時、私の護衛をしてくださっていたクリスが近衛騎士団第3席になったと風の噂で聞いたのですが本当なのでしょうか。お父様も知っているでしょうが、クリスはすごく優秀です。是非、シードの護衛や家庭教師にしたいのですが、聞いていただけませんか。当時はついて行きたいと言われたのを機会があったらねと言ったのですが。これは、もちろん強制的に連れてこいという訳ではありませんので(笑)よろしくお願いします。 元第二王女ミル=クロード』
このことをシードが知るのはあとの話。
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この手紙が届いた王城では。
「何だこの手紙は?」
と、国王カイト=アトランテス。
「中をご覧下さい。私どもではどうしようも出来ません。」
と宰相のレト=シル。
「そうか。」
と手紙を開く。
「ふむ。なんということだ。国の重要地位から引き抜こうとしよって。」
と苦笑する。
「まぁ、いい。一応、自由は認めておる。あやつなら行くと言うと思うが、一応、クリスを呼べ。至急だ。」
「クリスです。」
「入れ!」
「失礼します。元帥。何用でございますか。これを見よ。」
風魔法を使い、手紙を飛ばす。
「失礼します。これは……」
「行くか?残るのも、行くのも強制しない。残らなくても罰を与えることも無い。だが今の席には戻れなくなるだろう。その手紙を見るに、付くのはミル本人ではないだろう。そのへんもよく考えろ。本音で言わせてもらうと、残ってもらった方がありがたいがな。」
「元帥、行かせてもらってもよろしいですか。」
「……そうか。まぁ予想はしていた。クリスが良ければ、有事であっても強制はしないが、給料も出ない、名誉近衛騎士団員になるか?正直、考えたくはないが、必要になった時、頼みやすいからな。今の地位には戻れないと言っといて自分勝手ですまないが。」
カイトは、クリスには肩入れしていた。実力があったので不評は買わなかったが。
「それには応じます。どうせ強制ですよね。」
「よくわかっておるな。ははは。ミルに手紙を出してやると良い。騎士団員には自分から伝えるか?」
「はい。最後くらいは義理を果たします。その後、荷物をまとめて出発します。」
「わかった。馬を1頭連れて行け。選別だ。」
「ありがとうございます。失礼します。」
そして、騎士団員に見送られながらクロード領に出発した。
クリスはお姉さんキャラで新人からベテランにまで頼られていたのだ。