第41話 似た者同士
「自分を変えたいですか?」
優人がそう言うと。
「ええ、私は昔から、かなりの人見知りで。今では少し良くなったんですが、少し前までは、中々人と上手く話しをすることが出来なくて、今みたいに山下さんとも、うまく話すことは出来なかったと思います」
「そうなんですね」
優人がそう言うと。
「はい。ただ私は、そんな自分を変えたいと、昔から思っていて。少し前に、古川店長にここでアルバイトをしないかって誘われて、接客業なんて私にはこなせないと思って、最初は断ったんですが。少しずつ慣れていけばいいし、そんなに人が来ないから大丈夫だと言われて、色々悩んだ末に、頑張って働いてみることにしたんです」
凪月は、少し恥ずかしそうにそう言った。なので、
「そうなんですね。というか、古川さんとは、昔から知り合いだったんですか?」
優人がそう聞くと。
「はい、私は昔から本を読むのが好きで、このお店にはよく来ていたんです。それで、私のことをよく知っていた古川店長が、ここならそんなに人は来ないし、お客様と雑談していれば、人と話すのにもすぐになれるから、アルバイトをしてみなよって言ってもらえたんです」
朝日はそう言って言葉を切った。そして、
「因みに、山下さんはどうして、私にアルバイトのことを聞いたんですか?」
凪月はそう質問をしてきた。なので、優人は少し考えた後。
「こう言っては何ですが、俺も似たような理由です。色々あって、今の自分を変えたいと思って、取り合えず、アルバイトを経験して、少しでも社会勉強をすれば、こんな自分でも少しでもましになるかなと思ったんです」
「……そうなんですね」
「はい。ただ、俺自身はアルバイトの経験がないし、俺の知り合いにも、アルバイトのことで相談できるような人も居なかったので。だから、実際にアルバイトをしている小山さんの話を聞けば、何かヒントを得られるかもしれないと思って、今日はここに来ました」
優人は素直に、自分が思っていたことを口にした。すると、
「……そうなんですね。確かにそういった理由なら、私と立場は似ているかもしれません。でも、すみません。私はこのアルバイトは、自分で選んで決めたものじゃなくて、古川店長に誘ってもらったものですし。他のアルバイトの経験もないので、あまり参考になるような話は出来ないと思います」
凪月は申し訳なさそうにそう言った。なので、
「いえ、そんなに気にしないでください。急にこんなことを訪ねた、俺の方が悪いので。ただ、もう一つだけ聞いてもいいですか?」
「はい、何ですか?」
凪月がそう聞くと、優人は一呼吸置いてから。
「その、実際にこうしてアルバイトをしてみて、少しでも自分は変われたと、そう思いますか?」
優人はさらにもう一歩、踏み込んだ質問をした。それを聞いて凪月は、少し考えた後。
「そうですね、私はまだこのアルバイトを始めて数か月なので、あまり大きな変化があったとは言えませんが。それでも私は少しずつですが、変われてきているのかなと思います」
「そうなんですか?」
優人がそう聞くと。
「はい、このアルバイトを始めて、まだそんなに長い時間は立っていませんが。それでも、色々なお客様と話す機会があって、人見知りだった性格も、少しずつですが、改善されてきているなと思います。それに、最初は嫌だった人との世間話も、今では少し楽しいと思えるようになってきて、私はここで働かせてもらえてよかったと、そう思っています」
「……そうなんですか。それは、いい人と巡り合えて、よかったですね」
「はい、私もそう思います……って、すみません。何かアルバイトをする上で参考になるお話を聞きたいはずなのに、私の身の上話になってしまって」
優人自身は、そんなことは全く思ってなかったが。凪月はつい余計なことを話してしまったのかと思ったのか、そんなことを言った。なので、
「いえ、そんなことは無いです。寧ろその話を聞いて、俺自身もアルバイトをしてみたいという気持ちが、より強くなりました」
「そうですか? それならよかったです」
そう言われて、凪月は少し安心したのか、そんなことを言った。すると、
「ああ、私としても、凪月ちゃんの本心を聞けてよかったぞ」
突然そう言われ、二人は驚いて声をした方を見てみると。そこにはいつの間には、楽しそうな笑みを浮かべた、古川店長の姿があった。




