第40話 雑談
その後、優人は一人、店の中の本を見て回っていたが、たった一週間で本のラインナップがそんなに変わるはずもなく、先週も来ていた優人としては、そんなに目新しい発見はなかった。なので、
「あの、すみません」
「!? はい! お会計ですか?」
優人がレジに行き、小山凪月に声を掛けると、彼女はビクッと、少し驚いたように体を震わせた後。いつもより、少し声を大きくしてそう聞いてきた。なので、
「いや、そういう訳じゃないんだけど……その、少し雑談したいんだけど、いいかな?」
優人が、少し遠慮がちにそう聞くと。
「……ええ、いいですよ」
凪月はそう言うと、ゆっくりと本を閉じ、机の上に置いた。
「そうか、ありがとう。それと、悪いな、読書の邪魔をして」
優人がそう言うと。
「いえ、大丈夫です。それに、また話をしに来てくださいと言ったのは、私ですから」
彼女は、少し照れ笑いを浮かべながらそう言った。そして、
「それで、何かお話ししたい内容はあるんですか?」
凪月はそう質問をしてきた。
「ああ、ただ、少しプライベートな内容になるかもしれないけど、いいか?」
優人はそんなことを言った。すると、
「……どうでしょう、それは、内容によりますとしか、言えませんね」
凪月は遠慮がちにそう言った。なので、
「まあ、そんなに変なことじゃないけど。アルバイトのこと付いて話をしたいんだけど、いいか?」
優人がそう言うと。
「アルバイトに関してですか? それなら、私は全然大丈夫ですよ」
凪月は笑顔でそう言った。なので、
「そうか、ありがとう」
優人はそう言った。すると、
「いえ、大丈夫です。因みに山下さんは、何かアルバイトをしているのですか?」
凪月は優人に、そんな事を聞いてきた。なので、
「いや、恥ずかしながら俺は、一度もバイトをした事がないんだ」
優人は正直にそう言った。すると、
「あ、そうなんですね。でも、私たちくらいの年齢なら、それが普通だと思いますよ」
凪月は特に気にした様子もなく、そう言った。
「まあ、そうなんだろうけどな。俺の通ってる高校は、別にバイト禁止じゃないけど。俺の友達も、バイトをしてないからな」
優人はそう言った後。
「因みにですが、小山さんはなんで、バイトをしてるんですか? やっぱりお小遣い稼ぎですか?」
もう一歩、優人は踏み込んだ質問をしてみた。すると、
「……そうですね、勿論、そういった理由もあるんですが……」
凪月は、何か言いづらい事があるのか。少し言いよどんでいた。なので、
「あ、もしかして、何か言いづらい事がありますか? それなら、無理して言わなくても大丈夫ですよ」
優人は、少し慌ててそう言ったが。
「いえ、そういう訳ではないんです。ただ、少し恥ずかしいので……その、笑わないで、聞いてもらえますか?」
凪月は、無意識なのだろうが上目遣いで、少し恥ずかしそうにそう言った。その姿を見て、優人は少しドキッとしつつも。
「ああ、分かった」
と、そう返事をした。すると、
「そうですか。なら、少し恥ずかしいですが、お話しますね」
凪月はそう言うと、一旦言葉を切り。
「私がアルバイトを始めた理由は、自分を変えたいと思ったからです」
そう前置きをし、凪月はゆっくりと話し始めた。




