第39話 再び書店にて
次の日の日曜日、山下優人は自分の財布の中を見ながら、神妙な表情をしていた。
「やっぱり、昨日はちょっと無理をしたかな」
そう言って優人は、自室に設置している、パソコンの画面を覗いた。
昨日のデートに関しては、優人は自分なりのベストは尽くしたと思っているし。多少財布が寒くなることも覚悟の上だったので、全く後悔はないのだが。
それでも、最後の夕食代は馬鹿にならず。ラノベや漫画やゲームにそれなりの金額を注いでいる優人としては、早くバイト先を決めて臨時収入を得ないと、これから先、我慢の生活が始まりそうだった。
そんな中、優人が見ているパソコンの画面には、彼が住んでいる地域近辺の、アルバイト求人の一覧が載っていて、優人はそれを見ていたが。
中々よさそうな求人が見つからず、優人は小さくため息をついた。
正確には、気になる求人自体は何個かあるのだが、優柔不断な優人は本当にこれでいいのかと、中々決めきれず、彼是一週間以上このことに悩んでいた。
「とは言え、これ以上悩み続ける訳にもいかないよな」
優人はそう言い、こういう時、誰かに相談出来たらいいなと思ったが。
朝日には、あまり頼らないようにしようと昨日話したばかりなので、できれば他の人に相談したいのだが。
彼にとって、唯一の友人である宏樹は、アルバイト経験がない為、そうなると交友関係の狭い優人には、相談相手が居なくなるんだが。
「……そういえばもう一人、相談できそうな人が居たな」
優人は先週偶然知り合った、絶賛アルバイト中だった、一人の女の子のことをふと思い出したが。
多少オタク話をしただけで、まだ友達と呼べる程仲がいい訳ではない為、急にこんな相談をしても、迷惑かもしれないと思ったが。
「……でも、また来てくださいって言ってたしな……取り合えず、行くだけ行って、聞けそうなら聞いてみるかな。今日はどうせ暇だし」
優人はそう言うと、ネットのページを閉じパソコンの電源を落とすと。
立ち上がり、出かける準備を始めた。
そして、財布などの荷物を入れた小型のカバンを持って家を出て、暫く自転車を漕いだ後。
「……」
優人は再び、先週訪れた古川書店に来ていた。そして、
「ガラガラ」
ゆっくりと、店のドアを開けてそのまま中へと入った。すると、
「いらっしゃいませ……あ」
「えっと……どうも」
優人がそう言うと。
「ええ、先週ぶりですね。えっと、いらっしゃいませ」
少し驚いた顔をしつつも、大人しそうな印象の彼女、小山凪月はそう言って、挨拶を返してきた。
先週来た時は、本の世界に浸っていて、優人の存在には全く気づかなかったが。
今回は、ドアを開く音を聞くと直ぐに本から顔を上げて、優人の方を見てそう言った。なので、
「ええ、そうですね」
優人はぶっきら棒にそう言葉を返した。すると、
「えっと……今日もまた、古川店長に何か用事があって、ここにいらしたのですか?」
小山凪月は唐突に、そんな事を聞いてきた。なので、
「いや、そういう訳じゃないんだ」
優人は正直にそう答えた。すると、
「そうなんですね……えっと、それなら何か用事があれば、遠慮なく声を掛けてください」
「ああ、分かった」
優人がそう答えると、朝日は再び、手にしていた本に視線を落とした。
先週では、多少お互いの趣味の話をして、少しは仲が良くなった気がしていたが。
それでも会うのは二回目で、優人も彼女も、そんなにコミニュケーション能力が高い訳でも無いので、特に会話も続かず、そう言って会話が途切れた。
優人としては、彼女にアルバイトの事について、何か話しが聞けたらいいかなと思っていたが。
そんな雰囲気でもなさそうな為、暫くは黙って、本を見て回ろうと思った。




