第37話 デート当日 ⑤
その後、映画鑑賞を終えた二人は、ショッピングセンターを後にすると、近くのカフェを訪れて、昼ごはんを食べていた。
「それにしても、映画面白かったね」
「そうだな」
朝日に続いて、優人もそう答えた。実際、大人気作の最終章ということもあり、いつものように話は面白く、作画も綺麗でベテラン声優たちの素晴らしい演技も合わさり、優人が観て来たアニメ映画の中でも、トップくらすの出来だった。
「ねえ、優人はどのシーンが好きだった?」
朝日はサンドウィッチを食べながら、優人にそんな事を聞いた。なので、
「そうだな……色々あるけど、やっぱりセイバーとライダーの、一騎打ちじゃなねえか。チートクラスに強いセイバーに食らいついて行けるのも凄いし、二人係とはいえ、最終的に勝つんだからな」
「うん、確かに、あのシーンは良かったね。正直、私はライダーの事、あんまり強くないのかなって思ってたから、あんなに強くて、正直、かなりびっくりしたよ」
朝日がそう言うと。
「まあ、アニメだけ見てたら、そう思うのも無理は無いよな。ただ、あの対戦で召喚された奴らは、全員トップくらすに強いらしいぞ。ただ、あいつらの性能はマスターによって上下するらしいから、アニメの範囲の話では単純に、マスターに恵まれなかっただけらしいみたいだぞ」
優人は得意げに、そう語り始めた。
「へー、そうなんだ」
朝日がそう相槌を入れると。
「ああ、だから今回の場合、マスターがあいつじゃなくて、彼女だったら、ライダーの性能が飛躍的に伸びてて……」
そんな風に、優人はつい、自分の持ってるオタク知識を、得意げに語り始めた。そして、
「って、悪い朝日、また一人で語ってた」
優人がそう言うと。
「別にいいよ、優人のオタク話を聞いてるの好きだから」
朝日は笑顔でそう言った。普段はどちらかというと、朝日の方がよく喋り、優人が突っ込む感じなのだが。
こういった話になると、優人はテンションが上がって、つい喋り過ぎてしまい、朝日の話をあまり聞けなかったみたいな状況になりがちだった。
優人としては、こういうのは良くないと、毎回反省するのだが。朝日は毎度、楽しそうに話を聞いてくれるので、こればかりは、仕方がないのだった。
ただ、普段とは違い、デートと銘打っている以上、一人で盛り上がるわけにもいかないので。
「それで、お前はどこが好きだったんだ?」
優人はそう言った。
「私? うーん、そうだね……」
その後、もう少し映画の話をして、二人はカフェを後にした。
そして、次に優人が朝日を入れて訪れたのは、
「グランドワンね。確かにここなら、色んな事が出来て、デートにはいいかもね」
「そう言ってもらえるなら、ここを選んでよかったよ」
二人が居るのは、グランドワンと呼ばれるアミューズメント施設で、ボウリングやダーツ、カラオケなど、色々な事を楽しめる場所だった。
ただ、オタクで根っからのアウトドア派の優人には、あまり馴染みのない場所で、優人はここにしていいのか、結構悩んだのだが。
朝日の反応を見る限り、間違ってはなかったようだと、優人は心の内で安堵した。そして、
「それじゃあ朝日、何をしたい?」
優人がそう言うと。
「え、私が決めていいの?」
朝日が、少し驚いた様にそう言ったので。
「ああ、こういうのはどっちかというと、お前の方が好きだろうし、俺は特別、やりたいモノなんてないからな。だからここに居る間は全部、お前のやりたい事に付き合うよ」
「……そう、ありがとう優人」
朝日はそう言うと。
「それじゃあ取りあえず、ボウリングから始めようか」
「そうだな」
そう言って二人は、ボーリング場がある階へと、エレベーターに乗って向かい、2ゲーム程楽しみ(因みにどちらも接戦の末、優人が僅差で敗れた)
その後は、ダーツやビリヤードになどをするも、偶に女友達とこういった所に来ている朝日と、休日はずっと引きこもっている優人とでは、経験値での差があって、朝日に勝つことは出来ず。
朝日を楽しませる事には成功しているモノの、異性に負けっぱなしの優人としては、何ともいえない感情が芽生えていた(ただその後、唯一この場で自信があった卓球対決では、朝日に無事勝つことができ、男の威厳はなんとか保つことができた)
そして、さすがに遊び疲れた二人はその後、カラオケルームに入り。
二時間程、雑談を交えながらも各々好きな曲を歌い、18時を過ぎた頃、二人は満足して、グランドワンを出た。
「うーん、久しぶりに、こんなに動いた!」
日が沈み、辺りが薄暗くなり始め、ぽつぽつと照明に照らされてきた道で。
朝日は両手を真上に挙げて背筋を伸ばし、満足そうにそう言った。
「そうか、楽しかったか?」
優人が、少し心配そうな口調でそう聞くと。
「うん、楽しかったよ」
朝日は満面の笑みを浮かべて、優人にそう言った。
「そうか、ならよかったよ」
それを聞いて、優人は安心した表情でそう言った。
「うん、それで優人」
「? なんだ」
優人がそう聞くと。
「今日のデートは、これで終わりなの?」
朝日は、当然の疑問を口にした。なので、
「……あー、それなんだけどな。実はもう一か所、あるんだ」
優人がそう言うと。
「そうなんだ。なら、優人、エスコートよろしくね」
朝日はそう言うと、優人の左腕にゆっくりと、自分の右手を絡めて来た。なので、
「ああ、任せとけ」
優人はそう答え、最後の目的地へと、歩き始めた。




