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幼なじみに告白したい!  作者: 向井数人
第二章
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第31話 小山凪月

 しかし、彼女と会話をしようにも、先程言ったように、優人にはどういった話題を振れば、年頃の女子が喜んでくれるのかは、正直全くと言っていい程、分からなかった。

 朝日とは普通に話せるが、それは生まれた頃からお互いの事を知っていた、付き合いの長い幼なじみという間柄であり。

 お互いに何でも言い合えるくらい、気心の知れた仲でもあり。優人も朝日も、相手の趣味や好みなどを熟知しているので、どういった話をすればいいかなど、考えるまでもなく分かるからであった。

 しかし、他の女子相手に同じ様に接する事が出来るかと聞かれると、そんな事はなく。優人は途端に、何を言えばいいのか分からなくなるが。

 年齢以外は、お互いに、相手の名前すら知らないという事に気付き。優人は取りあえず、そこから始める事にした。そして、

「えっと、すみません」

「? はい、何ですか?」

 彼女は首を傾げ、キョトンとした表情でそう言った。それを観て優人は一瞬、言葉を詰まらせたが。直ぐに我に返り、話を続けた。

「えっと、貴方の名前は、何て言うんですか?」

「私の名前、ですか? えっと……小山、凪月です」

「そうなんですね。俺は山下優人って言います。よろしくお願いします、小山さん」

「え、あ、はい。よろしくお願いします、山下さん」

 そう言われ、小山凪月は、少し困った表情を浮かべながら、そう返事をした。なので、

「ええ、よろしくお願いします」

 優人も特に何か言葉を加える事もなく、そう言葉を続けた。そして、

「はい……よろしくお願いします」

 小山凪月も優人に続いて、そう言葉を返した。

「「……」」

 しかし、そこで再び二人の会話は止まってしまう。

(って、これじゃあさっきと同じじゃないか!)

 そして、その様子を観て優人は声に出さず、心の中で自分にそう突っ込んだ。

 とはいえ、今まで仲のいい人としか会話をせず、それ以外の相手とは、業務てきな話しかして来なかった、生粋の人見知りである優人に、いきなり気の利いた雑談など出来る筈もなく。

 先程同様、会話を上手く広げる事が出来ず。店内には何とも言えない、居心地の悪い空気感が出来つつあった。

 そして、意図せずとはいえ、そんな原因の元を作ってしまった優人は、小山さんに対する申し訳なさと。

 雑談すら満足に出来ない、自分に対する情けなさに襲われ。軽い自己嫌悪モードに入りそうになっていた。すると、

「……あの、山下さん」

 再び小山凪月が、優人に向かってそう話しかけてきた。

「え、あ、はい。何ですか?」

 そして、優人がそう返事をすると。

「……山下さんは、本はお好きですか?」

 彼女は優人に、そう質問をした。

「本ですか? そうですね。好きか嫌いかで言えば好きですが、どうしてそんな事を聞くんですか?」 

 優人がそう聞くと。

「えっと……大した理由は無いんですが。山下さんは先程、店内の本を一通り観て回っていたので。全く興味がないという事では、無いのかなと思ったので」

 凪月は遠慮がちにそう言った。なので、

「そうですね。ただ、俺が好きなのは、漫画とかラノベみたいなジャンルの本で。この店には、あまりそう言ったジャンルの本は置いてない様なので、俺の趣味とは合わないなと、そう思っただけです」

 優人は素直に、そう答えた。すると、

「漫画とかライトノベルって、面白いですからね。私も好きですから、そういったジャンルの本が好きだという気持ち、よく分かります」

 彼女は、少し微笑みながらそう言った。なので、

「え? 小山さんも、そういったジャンルの本を読むのですか?」

 優人は、少し驚いた表情でそう言った。すると、

「ええ、読みますけど……その、私が漫画やライトノベルを読んでいるのは、そんなに似合わないですか?」

 凪月は、少し困惑した様子でそう言った。なので、

「いえ、そんな事はないです。ただ、先程まで小山さんが読んでいた小説が、何といいますか。いかにも一般的な女性が読んでそうな作品で。漫画はともかく、ライトノベルっていう、かなりオタクよりな作品には興味がなさそうだなと、俺が勝手に思っていただけです」

 優人は慌ててそう言った。

 実際、先程まで彼女が読んでいた本は、「俺たち夢の銀行員」という、ドラマ化もされた人気小説で。

 失礼な言い方だが、そういった普通の小説を読んでいる人、その中でも特に女性は、ライトノベルは読んでいない人が多いだろうというイメージが、勝手に彼の中にあり。

 彼女の反応は、優人にとっては少し意外なモノだった。

「……そういう事ですか。でも、私の読んでいる本を観てみると、ライトノベルが好きだとは、普通思いませんよね。それに、山下さんが言うように、漫画は読むけど、ライトノベルには興味がないという女性は、世の中多そうだなと、私も思います」

「……すみません、勝手なイメージで話してしまって」

「いえ、いいんです。ただ、私はどちらかといえば、絵より活字を読む方が好きなので、漫画はあまり読みませんが。ライトノベルはよく読みますよ。ライトノベルは漫画みたいに、キャラクターや舞台設定が斬新で、魅力的な作品が多いですから。あ、勿論、ライトノベルではない、一般的な作品に、そういった魅力がないと言っている訳ではないですし、私はそういった作品も大好きなんですが。ライトノベルには、漫画などにある、少年少女が求める夢の様なモノが詰まっている気がして。それは、ライトノベルにしかない、一番の魅力だと……」

 そこまで言って、彼女は口を閉じた。そして、

「って、すみません。一人で勝手に話してしまって」

 彼女はそう言うと、顔を赤くて、少し俯いた。しかし、

「いや、そんな事は無いです。それに、嬉しいです」

「嬉しいんですか?」

「ええ、俺の身の回りには、あまりそういった話題を話せる人は、居ませんでしたから。因みに、どういった作品が好きなんですか?」

 優人がそう質問すると。

「えっと、そうですね……色々観ていますが、一番好きなジャンルは、とあるシリーズみたいな、異能力バトルモノですね。ストーリーは王道で、面白いモノが多いですし、お互いに持てる力の全てを出し尽くして戦っている感じが、観ている側としても熱くなれて、あの感覚が、とても好きなんです」

 凪月は、先程よりも少し声を大きくして、そう言った。なので、

「ああ、分かります。ただ、最近は何となく、主人公が最初からレベル90くらいでスタートして、自分より大分レベルの低い敵を圧倒するというストーリーが流行ってる気がするんですが。俺はどちらかといえば、最初、主人公は弱いけど、強敵を倒して少しずつ強くなっていく。もしくは、主人公は最初から強いけど、敵がそれ以上に強くて、それを知識や根性なんを振り絞って、ギリギリ勝利するみたいなストーリーが好きですね」

「……そうですよね。主人公が圧倒的に強くて、敵をなぎ倒していく作品も、それはそれで違った魅力がありますが。自分よりも強い相手を、ギリギリに追い詰められながらも何とか打ち倒す。あの気持ちよさは、他では味わえないです」

 そんな風に、二人は暫く、能力バトルモノに付いて、あれこれ話していた。

 ただ、優人も凪月も、本来は人見知りな性格であり。こんな風に、初対面の相手にこれだけ打ち解けられる事など、最近はまるでなかったのだが。

 二人の趣味が一致したのと、お互いに、好きな事の話になると、思わず語りたくなるというオタクの性が発動したこともあり。

 二人は、今までに感じたことがないくらいに早く、お互いに通じあえている気がした。そして、話が一段落すると。

「それにしても、ライトノベルの話でこんなに盛り上がったのは初めてです」

「それは良かったです」

 優人の言葉を聞いて、凪月は嬉しそうに微笑んだ。そして、

「それにしても、古川さん、帰って来ませんね」

 優人がそう言うと。

「そうですね……もう三十分以上経っているので、そろそろ戻って来ると、思うんですが……」

 そう言って、凪月が視線を動かすと、一か所を観て動きを止めた。そして、それを観て優人も、その方を観てみると。

「やあ、凪月ちゃん。ただいま」

 そこには、満面の笑顔で二人の様子を眺めている、古川千咲の姿があった。

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