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幼なじみに告白したい!  作者: 向井数人
第二章
29/42

第29話 古川書店

「ここか」

 次の日の日曜日。山下優人は約束通り、昨日貸したお金を返してもらう為に、古川書店を訪れていた。

 古川書店は、少し古びた外見の、一階建ての小さな店で。入り口は、横開きするガラス張りのドアで。ドアの上には、木で出来た看板があり、そこには「古川書店」と、達筆な字が書かれていた。

 そんな風貌に、優人は、小さい頃に訪れた駄菓子屋の事を思い出して。ちょっとした懐かしさを思いつつも、いつまでも店の前に立っている訳にはいかず。

 「ガラガラ」と、店のドアを開き、そのままゆっくりと店内へ入った。

 店の中には、幾つかの本棚があり、そこにはびっしりと、本が置いてあった。

 優人はその本棚を、並んでいる本のタイトルを見ながら歩み出し、店の奥へと進んで行った。

 そして、店の奥へ着くと、そこにはレジが置かれた横長の机が置いてあり。

 そのレジの後ろには、畳の上に座り、熱心に読書をしている、一人の女性がいた。

 優人は最初、遠目に彼女を見つけ。その人は、昨日会った古川千咲さんだと思ったが。

 少し近づいて観ると、彼女は全くの別人だと直ぐに分かった。

 古川千咲は、明るく活発そうな見た目をしていて、一緒に居るだけで明るくなれそうな、今の朝日と同じような感覚を、優人は感じていたが。

 今、目の前に居る少女は、大人しくて、物静かそうな見た目をしていて。昔の朝日の様な、儚げな印象をしていると優人は感じた。

 そして、目の前にいる少女は、優人が店を訪れた事に気付いてないのか。本から一瞬も目を離さず、黙々と読書を続けていた。

 その様子を観て優人は、

(客の来店に全く気付かないなんて、この店の警備体制は大丈夫なのか?)

 という少しの不安と、

(古川さんを呼んでもらいたいのだけど、真剣に読書をしている彼女の邪魔をしたくない)

 という申し訳なさの、二つの感覚が同時に訪れて。暫くの間黙って、彼女の様子を眺めていた。

 しかし、いつまでたっても、彼女は目の前に居る優人の存在に気付く様子はなかったので、優人は仕方なく。

「あの、すみません」

 と、思い切って、本の世界に入り込んでいる彼女に話しかけた。

「……」

 しかし、優人の言葉にも彼女は一切反応せず、読書を続けていた。

「……すみません!」

 なので、優人は先程よりも大きい声で、再び彼女に話しかけたが。

「……」

 それでも彼女は微動だにせず、本から1mmたりとも、目を離さなかった。さすがにこれは困ると、優人が頭を悩まながら、視線を彷徨わせると。

「ん?」

 レジの隣に、小さな鈴が置いてあり。そのベルの下には「鳴らしてください」と掛かれた紙が挟んであった。

(……まさかな)

 優人はそう思いつつも、他に手はないと諦めた様な気分で、鈴を鳴らした。

「チン!」

「……!」

 すると、今まで優人の声には一切反応しなかった彼女が、驚いた様子で、体をびくっと揺らし。本から顔を上げて、優人の事を観上げた。そして、

「え? あ、その……いらっしゃいませ」

 彼女は驚いた様子でそう反応し、最後は小さい声でそう言った。そして、

「えっと……その、お会計ですか?」

 彼女は遠慮がちに、そう聞いてきた。しかし、

「いえ、えっと……古川店長居ますか?」

 優人がそう聞くと。

「え……いえ、千咲さ……古川店長は、今店を出ています」

 彼女は再度、遠慮がちにそう言った。なので、

「そうですか。因みに、何時くらいに帰って来るか分かりますか?」

 優人は続けて、そう質問をした。すると、

「いえ……すみません。詳しい時間は分かりませんが、暫くは帰ってこないと思います」

 彼女は申し訳なさそうにそう言った。

「あ、いえ。すみません、いきなりこんな事を聞いてしまって」

 その様子を観て、優人の方もいたたまれない気持ちになって、そう言い返した。

「いえ、大丈夫です……あの」

「はい?」

「えっと……よろしければ、千咲さ……古川店長に電話して、帰って来てもらえる様に頼みましょうか?」

 彼女は遠慮がちにそう言った。なので、

「えっと、そうして貰えると助かりますが、良いんですか?」

 優人がそう質問すると。

「はい。それでも、数十分待ってもらう事になると思いますが。それでもいいのでしたら、ですが」

 彼女にそう言われて、優人は少し考えてから。

「分かりました。時間に余裕はあるので、申し訳ないですが、よろしくお願いします」

「……はい、了解しました。それでは暫く、お待ちください」

 彼女はそう言うと、レジの前から立ち上がり。ポケットからスマホを取り出すと、そのまま店の奥の方へと消えていった。

 そして数分後、彼女は再び、レジの前に戻って来た。そして、

「えっと……千さ、古川店長は、後二、三十分で戻ってくるらしいので。申し訳ないですが、もう少し、店内でお待ちください」

「あ、はい。分かりました」

 優人がそう答えると、彼女は再びレジの前に座ると、机の上に置いていた本を手に取り、そのまま読書を再開した。

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