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幼なじみに告白したい!  作者: 向井数人
第二章
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第28話 アルバイト

 平日終わりの土曜日、山下優人は自室に置いてあるパソコンを操作しながら、とあるページを眺めていた。そして、

「中々いいのが無いな」

 優人はそう呟いた。彼が観ていたのは、地元のアルバイト求人のページで、何かいいアルバイトがないモノかと、彼はのんびりと求人を漁っていた。

 何故急にそんな事をしているのかと言うと、理由は単純で、短時間で自信を付けるには、アルバイトをして、対人関係を磨いたり、社会勉強をする事が一番効果があると考えたからだ。

 そして世の中、アルバイトが禁止になっている高校も多いらしいが。優人たちが通っている高校には、特にそういった校則はない為、アルバイトをすること自体は、何の問題は無かった。しかし、

「何と言うか、どれもパッとしないな」

 優人はそう呟いた。彼が観ているページには、色々な種類の求人が表示されていたが、どれも優人が求めているアルバイトとは、違っているように感じた。

「たかがアルバイトに、何を求めてるんだって話だけどな」

 優人はボソッと、そう呟いた。実際アルバイトくらい、もう少し気楽に選んでもいいように思うかもしれないが。

 優人自身、割と人見知りな所があり、ばりばりの接客業をするのには、少し抵抗があり。

 こんな情けない感じだが、学業は割と頑張っているので、まあり長時間拘束されるのも、彼自身困るところがあり、ある程度、時間や休みの融通が利くところにしたかった。

 という訳で、その二つの条件を重要視しながら求人を観ていたのだが、世の中、そんな都合のいいモノが直ぐに見つかる訳もなく、優人は一人、頭を悩ませていた。そして、

「……気分転換に、コンビニにでも行くか」

 優人はそう呟くと、財布とスマホと自転車の鍵を持ち、パソコンの電源を落とすと、ゆっくりと部屋を出て、外へと向かった。




(取りあえず、ジュースとお菓子を適当に買って帰るか)

 近所のコンビニへ自転車で来た優人は、炭酸飲料とお菓子を適当にカゴの中に詰めながら、コンビニの中を周っていた。

 そして、カゴの中がそれなりの重さになって来たので、そろそろ会計にしようと、レジへと向かった所。

「あ、やべえ」

 優人がレジの前に並ぶと、彼の前で会計をしていた女性客が、少し焦った様子でそんな事を言ってた。   

「えっと、お客様。どうかしましたか?」

 その様子を観て、レジの女性店員がそう尋ねると。

「その……すみません。財布を忘れたみたいです、あはは」

 その女性客は困った様子で笑いながら、そんな事を言った。そして、

「でも、困ったな。折角アルバイトを頑張ってくれてる凪月ちゃんに差し入れをしてあげようと思ったのに。こんなミスをしてしまうとは、一度店に戻ってまた来るか?」

「……あの」

 そんな独り言を呟いていた女性客に、優人は思い切って声を掛けた。すると、

「ん? って、ああ、悪い悪い。待たせてしまってたな。店員さん、悪いけど、私の会計は後にしてもらっていいから、こちらの少年の会計を済ませてあげてくれないか?」

「え? あ、はい」

 そう言われた女性店員は、少し慌てながらも、優人の分の会計に移ろうとしていたが。

「……あの、すみません」

 優人は女性客に一歩近づき、そう声を掛けた。

「ん? 私か? えっと……何だい?」

 そう言われた女性客は少し困惑しながらも、そう返事をした。そして、

「あの、もしご迷惑ではないのなら……お金、お貸ししましょうか?」

「……え?」

 そう言われた女性客は、気の抜けた様子で、そう返事をした。




「いやあ、本当にありがとう少年。こんな見ず知らずのおばさんを助けてくれて」

 場所は移ってコンビニの駐車場。最初は遠慮していたモノの、最終的には納得して優人から金を借りた女性客は、一台の車の横に立って、そう言って感謝の言葉を述べていた。

「いえ、別に。俺はただ、眼の前で困っている人をほっとくのも、悪い気がしただけですから。それに」

「それに、何だい?」

「……お姉さん、全然若々しいですから、おばさんと言うには、まだ大分早いと思いますよ」

 優人がそう言うと、女性客は一瞬黙ったが、直ぐに「ふふ」と、軽い笑みを浮かべた。そして、

「そうかそうか。お世辞でも、そう言ってもらえるとお姉さん嬉しいよ!」

 と言い、満面の笑みを浮かべた。そして、

「因みに! 少年から観て、私は何歳くらいに観える?」

 彼女はそんな、返答に困る質問をしてきた。なので、

「え……その、二十歳くらい、ですか?」

 優人は取りあえず失礼のないようにと、無難な答えを言った。すると、

「もう、あんまり年上をからかうもんじゃないぞ、少年。そんなに若く言われたら、幾らお世辞だと分かっていても、嬉しいじゃないか!」

「え、あ、その……すみません」

「ん? 何故君は謝るんだ? 君は私の事を喜ばせる事が出来たんだから、そこはありがとうございますと、言っておけばいいんだよ」

「え、あ、はい。ありがとうございます」

「うん、それでよし。それで、話は変わるが、君に借りたお金の事なんだが」

「あ、はい」

「私としては、出来れば今日中に、君にお金を返したい所なんだが。悪いが私にも予定があってな、今日中には返せそうにないんだ」

「あま、それは仕方ないですよ」

「……優しいんだな、君は。そうだ、少年。君は今、スマホを持っているか?」

「え? あ、はい」

 優人はそう返事をすると、自分の右ポケットから、スマホを取り出した。すると、

「古川書店と、そうネットで検索してもらえないかい?」

「え、はい。分かりました」

 優人は言われた通り、そう検索項目に打ち込んだ。すると、

「悪いけど、スマホを少し貸してくれないか?」

「あ、はい」

 優人は素直に、女性に自分のスマホを差し出した。すると彼女は、それを受け取ると、少し下の方へと画面を指でスライドさせていき。

「お、あったあった、ここだ。いつでもいいから、時間に余裕がある時に、この店を訪れてくれ。今日の分のお金は、その時に返すよ」

 そう言って彼女は、優人にスマホを返した。すると画面には、一軒の店のホームページが開いていた。

「えっと……ここに行けば、貴方に会えるんですか?」

 優人がそう質問すると。

「ああ、私の名前は古川千咲。一応その店の店長をしている。だからまあ大体は店の居るが。居なかったら、多分バイトの子が居るから、その子に私を呼ぶように伝えてくれ」

「分かりました。では今度、時間がある時にお邪魔させてもらいます」

「ああ、ありがとな……っと、そろそろ帰らないと。いつまでも凪月ちゃんに、店番任せる訳にはいかないからな。それじゃあまたな、少年」

「え、あ、はい。また今度です」

 優人がそう言うと、彼女は満足げに微笑み、ドアのロックを解除し、車に乗り込むと。

 エンジンをかけ、直ぐに駐車場を後にした。なので、

(……俺も帰ろう)

 優人は商品の入ったレジ袋を手に、自転車置き場へと向かった。

 こんな、少し珍しいが、優人にとっては何気ない人助け。

 それが今後の彼の運命を、大きく動かす事になる事は、今はまだ彼は知る由もない事だった。

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