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幼なじみに告白したい!  作者: 向井数人
第一章
25/42

第25話 亀裂

 山下優人と渡辺朝日が付き合っているという噂が流れてから一週間。

 土日を挟んだ事で、二人の事に関する噂は多少収まったモノの、未だに男子たちの中には、二人の事で優人をからかってくる人も多く、優人は少しずつ、ストレスが溜まって来ていた。

 ただ、優人がストレスを抱えている理由はそれだけではなく、一番仲がいい朝日との間に、ギクシャクした空気を感じていて、今までのように上手く話せずにいたからだ。

 とはいえ、全く言葉を交わさないというわけではなく、朝には普通に挨拶もするし、帰りは雑談をしながら、毎日一緒に下校もしていたが。

 優人は今までのように、遠慮なく朝日に言いたい事が言えずにいて。

 そんな朝日も、今までは無邪気に優人に甘えていたのだが、今は何処か一歩引いた様子で、何処か踏み止まった様子であったった。

 そして、悪い出来事というのは、何処までも連鎖するようで、そんな二人の微妙な距離感を感じ取り、クラスメイトの男子たちが追い討ちのように、

「付き合って一週間で喧嘩したのか」

 などと、囃し立ててくるので、優人は更にストレスが溜まり、朝日との距離も広がるという負の連鎖に陥って、事態をどうにも出来ずにいた。

 ただ、たった一週間でここまで事態が深刻化した理由には、クラスの男子たちの中に、朝日を好きな人たちが少なからずいて、好奇心だけでなく、本人たちにまだ自覚はないものの、嫉妬の念が混じっていたのと。

 担任の教師も、この事態は分かっていたのだが、あくまでからかっている範囲で収まっていたため、あまり強く注意できなかったという事もある。

 ただ、幼い優人には、そこまでの事を見通せる能力はなく、日々悪くなっていく自分たちの立場に、ただただ、苛立ちを溜めていくことしか出来なかった。

 そんな中での昼休み。優人は前の席にいたスポーツ少年風の男子に、遊びに誘われた。

「この後、鬼ごっこをしようって?」

「ああ。最近色々あって、お前も少し疲れているだろ。だから、偶には外に出て、気分転換をしないか?」

 給食を食べながら、彼はそんな風に優人に提案をした。

 いつもは優人が給食を食べ終えると、朝日が彼の元へ来て、朝日は昼休憩が終わるまで優人と一緒に過ごしていたので、優人は今日もそうして過ごすつもりだったが。

 最近はその事でも、優人たちはクラスメイトの男子からかわれていたし。前までは朝日と一緒にいると、不思議と安心した気持ちになるのだが、今はそうではなく、どこかモヤモヤとした、不安な気分になる事になったので。

「ああ、分かった。偶にはあいつと別々に過ごすのも、悪くないかもな」

 優人はそう言って、彼の誘いに乗った。

 その後、昼ご飯を食べ終えて、優人は彼に続いて下駄箱に行こうと、教室のドアに向かうと。

「優人くん、どこに行くの?」

 そう言われ、優人が振り返ると、予想通り朝日が立っていて、一冊の本を持っていた。どうやら朝日は、この休憩時間はこの本を読みながら、優人と一緒に過ごすつもりの様子だった。しかし、

「……悪い朝日、今日は外で遊ぶから、お前は一人で過ごしてくれ」

「え?」

「……それじゃあな」

 優人はそう言うと、驚いている朝日から目を逸らし、そのまま外へと出た。




「あれ、優人。今日は渡辺さんと一緒に過ごさないのか?」

 外に出て、鬼ごっこをするメンバーで集まると、クラスメイトの男子の一人が優人にそう言った。なので、

「別に、俺だっていつもあいつと一緒に居る訳じゃねえよ。それより、早く鬼ごっこを始めようぜ」

「まあ、そうだな。早くしないと、休憩時間が終わっちまうからな」

「よし、じゃあ早速、鬼を決めようぜ。最初はぐー」

「「「じゃんけん」」」

 その結果、じゃんけんに負けた優人が鬼になり、逃げいるクラスメイトたちを追っていた。ただ、中々他の人にタッチすることができず、優人は息を切らし、少しの間ブランコの傍で立ち止まり、ゆっくりと息を整えていた。すると、

「……優人くん」

「……え」

 優人が振り返ると、そこには朝日が居て、黙って優人の事を見つめていた。そして、

「どうしたんだ、朝日」

 優人がそう質問すると。

「えっと……私も鬼ごっこ、混ぜてくれないかな?」

 朝日は少し自信なさげに微笑みながら、そう言った。すると、

「えー、渡辺さんって運動は苦手そうだし、入れない方が良くないか。ずっと鬼になったままっていうのも、可哀そうだし」

 二人の様子を遠くから眺めていた、鬼ごっこに参加してるクラスメイトの数二人が、ゆっくりと二人に近づいてきてそう言った。しかし、

「別によくないか? いざとなったら、優人がわざと捕まるだろ。何たって、優人は渡辺さんの彼氏なんだからな」

 もう一人の男子が、そんな風にはやし立てた。すると、

「まあ、それもそうだな。大事な彼女を悲しまれる様な事を、優人はしないだろしな」

 それに続いて、最初に言葉を発した男子も、そんな風に彼の言葉に乗っかった。

 そして、それまではどれだけからかわれても、何とかこらえていた優人だが、今回の事でついに、優人は限界を迎えた。そして、

「別に、朝日は入れなくてもいいよ」

 優人は朝日に背を向けると、クラスメイト二人に向かってそう言った。

「……え?」

 そして、優人に断られるとは思っていなかったであろう朝日は、酷く驚いた様だった。しかし、頭に血が上っていて、視野が狭くなっていた優人は、それに気づくことなく、更に言葉を続けた。

「お前たちが言うように、朝日は足が遅いからな。一度鬼になったら、たぶん誰も捕まえられないだろうし、俺はそんなトロイ奴の為に、わざと捕まる何て嫌だからな」

 優人としては、そこまで言うつもりは無かったが、今まで溜まっていたストレスを吐き出すように、本人の意思とは関係なく、言葉が出て来た。

「それに、俺だって四六時中、こいつと一緒に居るのは嫌だからな。別にこいつの事なんて何とも思ってないのに、いつまでもある事ない事言われるのは腹が立つし。偶にはこうして、こいつと離れて過ごしたいからな」

「……ぐす」

 優人がそこまで言うと、彼の背後からほんのりと、すすり泣く声が聞こえた。そして、

「……ごめんね、優人くん。私みたいな子にいつまでも一緒に居られても、迷惑だよね」

「あ、いや、それは……」

 朝日はそこまで言うと、優人に背を向け、そのまま下駄箱の方へと走り去って行った。

(……悪い、朝日)

 優人は心の中で謝ったが、二人は超能力者でもないので、声に出さない謝罪など、何の意味も持たないのだった。

 その後、優人と朝日は一言も言葉を交わす事は無く、今日は小学校に入学して初めて、二人は別々に帰宅した。

 ただ、流石に今日は言い過ぎたと思った優人は、明日は必ず朝日に謝ろうと思っていたのだが、優人が帰宅して少ししてから、事件が起こった。




「ピンポーン」

「あら、誰か来たみたいね」

 チャイムが鳴って優人の母親がドアを開けると、朝日の母が少し焦った様子で、顔を覗かせた。そして、

「あの、すみません。朝日ちゃん、ここに来てませんか?」

 朝日の母親はどこかすがるような様子で、そんな事を聞いてきた。

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