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幼なじみに告白したい!  作者: 向井数人
第一章
24/42

第24話 過ち

 翌日、優人と朝日がいつも通り教室に行くと、教室内は妙な喧騒に包まれていた。

 不思議に思いつつも、優人が朝日がいつもの様に席に着くと、前の席にいたスポーツ少年風の男子が、後ろを向いて、優人に話しかけてきた。

「悪い、優人。昨日俺が余計な事を言ったせいで、変な事になった」

「変な事って何だ?」

「それは……」

 彼が何か言葉を発しようとすると。

「なあ優人、お前昨日、渡辺さんに告白されたんだってな」

 クラスメイトの男子の中の一人が、優人にそう言って話しかけてきた。そして、

「ああ、俺も聞いたぞ。それで、お前は何て返事をしたんだ?」

 彼に続いて、もう一人のクラスメイトの男子がそんな事を言った。なので、

「何言ってるんだ、お前たち。俺は別に、朝日に告白何てされてねえよ」

 優人はそう言ったが。

「えー、でも、直紀たちが言ってたぞ。渡辺さんが放課後、優人に大好きって言ってたって」

「それはそうだけど」

「ほらやっぱり。それで、お前は何て返事したんだ」

「勿論OKしたんだよな。お前と渡辺さんって仲いいし、渡辺さんってあんなに可愛いんだから」

「……そりゃあ、あいつは可愛いし、もし告白されたらOKするかもしれないけど」

「お、ついに認めたな」

「皆、やっぱり優人と渡辺さんは、付き合ってるみたいだぞ!」

 その瞬間、二人が付き合っているという噂がクラス中に広がり、今日一日、優人は特に好奇心の強い男子生徒たちに色々と、ある事ない事質問されたり、からかわれた。




「優人くん、一緒に帰ろ」

「……ん、ああ」

 そして、その日の放課後。いるものように朝日にそう言われ、優人はランドセルを持ち、ゆっくりと立ち上がった。すると、

「お、帰宅デートか、二人とも!」

「渡辺さんの事、大事にしろよな!」

 クラスに残っていた男子たちが、はやし立てる様に言ってきた。

「……まあ、何だ。原因を作った俺が言うのも何だけど、あんま気にするなよ」

「……ああ」

 優人は、前の席にいたクラスメイトに、ぶっきら棒にそう返事をすると、朝日を連れて、教室を後にした。




「……なあ、朝日」

「なに? 優人くん」

 優人が話しかけると、朝日は少し自信なさげな表情で、しかし、笑顔でそう言った。なので、

「お前は、クラスでの事を気にしてないのか?」

「えっと……なんの事?」

 しかし、朝日はなんの事か分からないといった風に首を傾げた。なので、

「だから、俺たちが付き合ってるっていう話だよ。俺たちはただの幼なじみなのに、そんな風に言われるのは、嫌じゃないか?」

 優人がそう言うと。

「うーん……そういうの、私はまだよく分からないけど。優人くんと仲がいいって言われるのは、嫌じゃないよ」

 朝日は少し照れくさそうに笑いながらも、ハッキリとそう言った。そして、優人はそれを聞いて、自分の心臓の鼓動が早くなるのを感じた。しかし、

「……そうかよ」

 優人は、特に何も感じなかったかのように、ぶっきら棒にそう答えた。

「うん……ねえ、優人くん」

「何だ?」

「……優人くんは、私たちが付き合ってるって言われて、どう思うの?」

 朝日は少し緊張しているのか、いつもより少し小さい声で、しかし、優人の目をしっかりと見て、そう聞いてきた。

「……」

 そう言われ、優人は一瞬、言葉を失った。ただ、優人も朝日と同じく、まだ付き合うという事がどういう事か、ぼんやりとしか分かっていなかったが。

 不思議と嫌な気持ちは起きず、それどころか、心のどこかでは、そう言われる事に、喜びとも優越感とも言えない、不思議な高揚感を感じていた。しかし、

「別に、ただ、色んな奴にからかわれて、正直めんどくさいと思うだけだ」

 優人は、その気持ちは口には出さず、話題を逸らすようにそう言った。

 実際、今日は一日中、クラスメイトの男子たちに散々その事を言われたので、その気持ち自体は嘘では無かった。

 そして、男子にありがちな、妙なプライドが邪魔をして、優人は素直な気持ちを朝日に伝える事が出来なかった。

「……」

 ただ、その言葉を聞いた途端、朝日の表情が一気に暗くなり、視線を落として俯いた。

 優人はそれを観た瞬間、自分は何か大変な過ちを犯したと思ったのだが、まだ小学一年生で、恋愛感情というモノすらきちんと理解してない彼には、こんな時にどんな言葉をかけていいのかなど、分る筈がなかった。なので、

「……ほら、いつまでもそんな所でじっとしてたら暗くなっちまうぞ。早く帰るぞ」

 優人はそう言って、朝日の手を握った。

「……うん、そうだね」

 そして、朝日はそう返事をし、優人に手を惹かれながら、帰路に着いた。

 ただ、いつもは彼に手を握られると、照れくさそうに微笑む朝日だが、今回に関しては、一度も笑顔を向ける事はなかった。

 そしてこの日以降、二人のは今までは一度も感じた事のない、観えない壁の様なモノを、感じるようになった。

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