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幼なじみに告白したい!  作者: 向井数人
第一章
21/42

第21話 初めての○○

 あの後、少し並んで観覧車に乗った二人は、お互いに反対側の椅子に向かい合って座った。そして、

「観覧車に乗るのなんて、随分久しぶりだね」

 少しづつ登っていく小部屋の中で、朝日はそう言った。

「そうだな。俺はお前のお母さんと俺たちで乗って以降、乗ってないな」

 すると、それに続いて優人がそう言った。なので、

「私もそうだよ。という事は、優人はもしかして、あの日以降、遊園地には行ってないの?」

 朝日がそう聞くと。

「そうだな。学校の行事で何度か行ったけど、家族や友達と一緒に遊びに来たのは、これで二回目だな」

 優人はそう答えた。

「そうなんだ。というか優人、分かってたけど、私以外の人とは本当に出かけないんだね」

「……まあな。悪いな、仲のいい奴が居ないボッチで」

 優人は、自虐気味にそう言ったが。

「そんな事言って、森川くんとは仲がいいでしょ。偶には森川君を誘って、二人で遊んだりするのもいいんじゃないの?」

「まあ、そうだな。この連休は何だかんだ楽しかったし、今度は俺から誘ってみるよ。ただその時は、また今回みたいに、お前や藤宮さんを誘うかもしれないぞ」

「うん、それは全然いいよ。私もこの連休は楽しかったから、今度は夏休みにも、またどこかに行こうよ」

「ああ、そうだな」

 そんな風に、二人は少しの時間この連休の思い出を語り合った。そして、

「それで朝日。話は変わるけど、俺に言いたい事っていうのは何なんだ。思い出話も済んだし、そろそろ教えてくれないか?」

 優人がそう言うと。

「……うん、そうだね」

 朝日はそう言った。しかし、

「でも、具体的に何から話したらいいのかな? 言いたい事が多くて、分からないや」

「そんなに有るのか? そんな風に言われたら、少し聞くのが怖いんだけど。まあでも、一つずつ、ゆっくり言えばいいよ。まだまだ時間はあるんだし」

「そうだね。それじゃあ、優人」

「何だ?」

「……優人はさ、まだ私のお母さんの事を気にしてるの?」

「いきなりぶっこんで来るな」

「ごめんね。でも、大事な事だから、優人の正直な気持ちを教えて欲しいな」

「……気にしてるよ。というか、この事は一生、俺は思い続けると思うよ」

「まあ、そうだよね」

 朝日はそう言うと、一瞬言葉を詰まらせた。そして、

「それなら、優人が私の気持ちに答えてくれないのは。まだその事が、自分の中で決着がついてないからなの?」

「もしかして、それがお前の聞きたい事なのか?」

 優人がそう聞くと。

「そうだよ。それと、ごめんね。本当なら、優人の方から告白してくれるまで、動かないつもりだったけど。このままだと、優人はいつまでたっても、告白してくれそうになかったから」

「……それに関しては、本当に申し訳ないと思ってるよ。すまないな」

「ううん、謝らなくてもいいよ。それに、私の方こそごめんね。折角楽しい時間を過ごせてたのに、最後にこんな話をして」

 朝日はそう言ったが。

「いや、悪いのは俺の方だ。俺の方からお願いをしておいて、何年待たせてるんだって話だよな、すまん」

 優人はそう言って、朝日に謝り返した。そして、

「俺が告白しないのは、確かにあの事を自分の中で整理出来てないというのもあるんだけど、それだけじゃないんだ」

「え、それってどういう事?」

 朝日はそう聞いたが。

「それに関しては、悪いけど恥かしいし、自分でも情けないと思うから言いたくないんだ」

 優人はそう言って、言葉を濁した。すると、

「そっか……言いたくないんだ」

「ああ、悪いな」

「ううん、仕方ないよ。私だって、優人にも言えない様な事はあるから。でも、私は今引いたら駄目だと思うんだ。だからね、この前優人が言ってた権利をここで使うよ」

「権利?」

「うん、私が弁当を作ったお礼に、何か一つ我儘を聞いてくれるって言ってたでしょ。だから、優人が恥ずかしくて言いたくないその話を、今この場で私に聞かせて」

 朝日は、いつになく真剣な表情で、力強くそうった。そして、

「今日のお前は、本当に強引だし、我儘だな」

 優人が呆れた口調で、少し笑いながらそう言うと。

「へへ、褒めないでよ」

「褒めてねえよ……でも、その約束は俺の方から言った事だし、仕方ないな。正直、しょうもないし退屈でつまらない話だけど、聞いてくれるか」

「うん、勿論。大切な幼なじみの話だもん。ちゃんと最後まで聞くよ」

「ありがとな、朝日」

 優人はそう言うと、窓から差し込む夕日を背に、静かに話し始めた。

「俺がお前に告白しないのはな、自信が持てないからだよ」

「自身? 何に対して?」

 朝日がそう言うと。

「何って言われると、難しいんだけど。自分自身に対してだよ……朝日はこの数年で、随分成長したよな。明るくて、可愛くなって、正直すごいと思ってるぞ」

「え? へへ、そうかな?」

「ああ、背と胸以外はな」

「むー、何で最後まで褒めてくれないの」

「はは、悪いって。でも、それに対して俺はどうだ? 別に明るい訳でも、特別な才能があるわけでもない、その辺にいるモブキャラみたいな奴だ。そんな奴が、今のお前には釣り合わないだろ」

「……もしかして、それが優人が私に告白してくれない理由なの?」

「ああ。お前はどんどん成長してるのに、俺はここ数年で何も変わらないでいた。それを思うと、自分でも情けなくて。そんな劣等感を抱えたままお前に告白して、仮に付き合ったとしても、何処かで駄目になると、そう思っていたんだ」

「それが、優人が私に告白してくれない理由なの?」

「ああ、こんな自分勝手で、情けない理由で悪いな……もしかして、失望したか?」

 優人がそう聞くと。

「ちょっとはね。でも、それ以上に残念だと思ったよ」

「残念?」

「うん、私は優人に少しでもいい風に観られたくて、色々な人と話すようにしたし、お洒落とかも頑張って、自分なりに努力してきたんだけど。その努力のせいで、優人の自信を奪っていたんなら、私の頑張りは何だったんだろうなって、ちょっと空しい気分になっっちゃった」

 朝日はそう言うと、力なく笑った。ただ、

「まて、朝日。お前今、俺にいいように観られたいから、努力したって言ったか?」

 優人がそう聞くと。

「うん、そうだけど。というか、それ以外に私が頑張る理由なんてないよ。今回だって、優人に告白してもらおうと思って、色々とアピールをしてたんだよ……結果的には、優人は告白してくれそうになかったから、私からこうして言い出しちゃったけど」

「それはすまん……でも、そうか。今も昔も俺が知らない間に、色々と努力してたんだな」

「そうだね。でも、辛くは無かったよ。好きな人の為なら、私はいくらでも頑張れるから」

「好きな人の為なら頑張れる、か……」

 優人はそう呟くと、暫くの間黙った……そして、

「なあ、朝日。これだけ待たせて、どの口が言うんだって話だけど。もう一つだけ、俺の願いを聞いてくれないか」

「……聞くだけは、聞いてあげる。OKするかどうかは、内容によるけど」

「ありがとう、朝日」

 優人はそう言って、一旦言葉を切った。そして、

「朝日には悪いけど、今すぐに告白っていうのは無理だ、ごめん。だけど今年中には、頑張って自分に自信を付けて、お前に告白するから。それまもう少しだけ、今の関係のままで居てくれ」

 優人はそう言って、その場で頭を下げた。すると、

「……別に、頭を下げなくてもいいよ。私も期限を決めていた訳じゃないから、これはただの私の我儘だもん。でも、優人には悪いけど、これだけ待たされて、今更そんな事言われても、素直に信じられないよ」

「まあ、そうだよな」

「うん。でも、優人の言葉が本気なら、ここで証拠を見せて。そしたら私は、優人の言葉を信じて、もう少しだけ待っていてあげる」

「証拠?」

「うん、この前は失敗したけど、ここなら誰かに邪魔される心配もないから。だから今度こそ、私とキスして」

 朝日は、真剣な表情でそう言った。

「いいのか? 本当に」

「いいに、決まってるよ。私は優人が好きだし、告白してもらったら、絶対にOKするもん。それとも優人は、約束を守る自信がないから、そんな事はできない?」

「……いいや、こんな事を言った手前、絶対に約束は守るよ。だから」

 優人はそう言って立ち上がると、朝日の両肩に静かに自分の手を乗せた。

「あ、優人」

 すると、朝日は照れくさそうに、少し顔を背けた。しかし、

「……ん!」

 直ぐに意を決したのか、朝日は両目を閉じ、静かに自分の唇を突き出した。そして、

「……」

 そのまま少しずつ、優人は自分の顔を、朝日に近づけて行った。そして、朝日に習い、優人もゆっくりと、自分の目を閉じた。そして、

「……う、ん」

 ほんの一瞬、僅かにしかし確実に、お互いの唇が重なり合い、愛しの相手の確かな息遣いを感じた。

 そして、そのまま少し、お互いに動かないでいると。ゆっくりと、優人が唇を離した。すると、朝日が目を開け。

「ふふ、キス、しちゃったね」

 照れ笑いを浮かべながらそう言った。

「ああ……付き合ってもないのにな」

「今年中には付き合う事になるんだから、何の問題もないよ。それと、これは私のファーストキスだから、苦い思い出にはさせないでね」

「ああ、分かってるよ」

 そんなやり取りをし。二人は残りの時間は黙って静かに。沈んで行く夕日と、徐々に帰路に着き始めている人々が居る、外の景色を眺めていた。



 何年も変わらなかった、二人の距離。それが今日、ほんの少し、しかし確実に前に進んだ。 

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