第20話 観覧車
その後、二人は園内を散策しながら、気になったアトラクションを体験して回った。
迷路に入って、中々抜け出せずに、二人で軽く言い争ったり。
二人でメリーゴーランドに乗ろうと、朝日が言ったが。優人は嫌がって、最終的には朝日一人で乗ったり。
お化け屋敷の傍を通り、優人が意地悪で「入ってみないか」と言ったが。朝日が全力で拒否したので、やむを得えずに止めたりと。
仲のいい二人にしては珍しく、偶に言い争いをしながらも、楽しい時間を過ごしていた。
その後は昼食を食べ、宏樹と鈴華と再会しようと、朝日が鈴華にスマホで連絡を取ってみたものの。鈴華が、
「私たちは、のんびり釣を楽しんでるから。二人はもっと、色んなアトラクションを観て回りなさい」
と言った後、園内にある釣り堀で釣りをしている写真が送られてきたので。二人はその言葉に従って、午後からも、まだ行っていない施設に赴き、思いの限り遊びつくした。そして、
「久しぶりに全力ではしゃげたし、今日は楽しかったね!」
少し日が傾き、景色が薄暗くなり始めてきた頃。朝日は満面の笑みを浮かべながらそう言った。そして、
「そうだな。それにこの調子なら、昨日みたいな事故も起こらなそうだな」
優人も少し笑顔を浮かべそう言葉を返した。ただ、
「もう。恥かしいから、その話は蒸し返さないでよ」
その言葉を聞いて、朝日はほんの少しだけ、不機嫌そうな表情をした。
「はは、悪い悪い」
ただ、いつもは朝日の機嫌を少しでも損ねると、全力で彼女のご機嫌とりをする優人だが。
午前中に聞いた朝日の言葉と、遊園地の雰囲気にやれてた優人は、いつもより大分軽い口調で、そう言葉を返した。そして、
「それで、この後はどうする? 大体の場所は探索したし、宏樹たちと連絡を取って、そろそろ帰るか?」
優人はそう言った。満足してそうな朝日の様子からするに、朝日もその言葉には、名残惜しさを感じつつも納得するだろうと、優人は考えていたのだが。
「うーん、優人がそう言う気持ちも分るけど、私は最後に一つ、どうしても乗りたいモノがあるかな」
「お、なんだ。まだ時間はあるし、どうせなら乗ろうぜ。やり残して後悔するのは良くないからな」
「……うん、そうだね」
優人の言葉を聞いて、朝日は何かを決意した様に、静かに、しかし力強くそう言った。そして、
「それじゃあ優人、最後の記念にあれに乗ろうよ」
そう言って、朝日が指さしたのは。この遊園地で一番巨大な建造物である、多くの人を乗せた小部屋を、ゆっくりと回転させているアトラクション。
「観覧車か」
「うん、そうだね。何だって、最後に乗るには定番でしょ」
「そうだな……まあ、お前が乗りたいんなら良いか。行くぞ」
「うん、そうだね。それに、優人に言いたい事もあるし」
「言いたい事? なんだ、ここで言ったら駄目なのか?」
「駄目。それじゃあ全然、ムードがないから。とにかく行こ! 私の話は、乗るまでのお楽しみって事で」
「……分かった」
そう言って二人は、夕日をバッグに静かに動く、巨大な観覧車の元へと向かった。




