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幼なじみに告白したい!  作者: 向井数人
第一章
19/42

第19話 遊園地

 ゴールデンウィーク四日目、今日は昨日と同じメンバー四人で遊園地に来ていたのだが。優人は今、朝日と二人で、並んで歩いていた。

 それは、ここに来て早々、鈴華が、

「この辺りでは、一番怖いという噂がある、お化け屋敷に行きたいわ」

 と言ったのだが、朝日がその意見を全力で拒否をしたため。話し合いの結果、二組に分かれて行動しようという事になり。

 優人は朝日に、宏樹は鈴華に付き添う事になった。そして、目的地が決まっている鈴華たちとは違い、優人と朝日は、特に行きたいコーナーがあったわけではない為。園内を、偶にぶつかりそうになる人たちを避けて、のんびりと歩いていた。すると、

「あ、優人。あれに乗らない?」

 そう言って、朝日が指さしたのは、巨大な色いカップがいくつも回っている、いわゆるコーヒーカップだった。

「ああ。別にいいけど、少し並ぶ事になるな」

 優人は、アトラクションの前に出来ている、十組くらいの行列を観てそう言った。すると、

「こういう場所なら、待つのも醍醐味の一つだよ。それに、一度に五個カップが動いてるから、多分三周目くらいには、私たちは乗れると思うよ」

「そう考えると、そんなに待たなくて済みそうだな。なら、他の人に抜かれる前に並ぶか」

「うん、そうしよう!」

 二人はそう言って、列の最後尾に並んだ。そして、少しの間、二人で雑談をして過ごしていると、あっという間に列が進み、二人の番がやって来た。そして、料金を払い、二人でカップに入って、お互いに正面を向く形で座ると。

「ねえ優人、二人でハンドルを回そうよ」

「……仕方ないな」

 朝日にそう言われ、優人は中央に置かれているハンドルを握り。朝日もそれに続いて、反対側からハンドルを握った。

 そして、ゆっくりと二人を乗せたカップは回り始めた。

「うわ、なにこれ、楽しい」

 そして、初めてマグカップに乗った朝日は、目を輝かせながらそう言った。そして、

「ねえ、ハンドル回そうよ」

「そうだな」

 朝日はそう優人、ハンドルを少しずつ回転させはじめ、優人も、朝日に合わせて手を動かした。すると、

「うわ、早くなった!」

「そういうモノだからな」

 回転スピードを上げたカップを生身で感じ、朝日は楽しそうにそう言った。そして、

「でも、まだ全然ゆっくりだね。これなら、もっとスピードを上げても、大丈夫そうだね」

「いや、待て朝日、そのセリフは多分駄目な奴だから。少し冷静になれ」

「もう、優人ってば怖がってるの? 大丈夫、所詮アトラクションなんだから、多分そんなに大したこと無いよ」

 朝日はそう言うと、優人の忠告を無視して、ハンドルを思いっきり回した。そして……



「うえっつ、きもちわるい」

「……言わんこっちゃない」

 朝日は、少し顔を青くして、園内にあるベンチに座っていた。因みに言うと、優人も結構なダメージを受けていて、気を抜くと少しふらつきそうになっていたが、朝日の前でカッコ悪い姿は見せられないと、平気な振りをしていた。そして、

「何か飲み物を買ってくるから、暫くそこでじっとしてろよ」

「……うん、ありがとう」

 朝日は顔を上げると、力なくそう言って笑った。それを見た優人は、朝日に背を向けて、自動販売機を探しに出た。そして、



「ちょっと遅くなったな」

 優人は、来た道を戻りながらそう言った。自動販売機を見つけるのに、予想外に手間取った事に加え、歩き回ったせいで気分が余計悪くなり、買ったその場で思わずジュースを飲んだ事も合わさり、朝日と別れてから十分以上が経過していた。

 ただ、そのおかげで気分は大分、元の状態に戻り。これなら安心して、朝日の前に戻れるとそう思っていると。

「お、朝日はちゃんと居るな……あれは」

 遠目から、優人は朝日を観つけたが、朝日はベンチに座ったまま、金髪と茶髪の男二人に話しかけられていた。距離があるので、何を言っているのかは分からないが、朝日が嫌そうな感じをしているのは、何故かはっきりと分かった。

 そして、朝日がナンパをされているととっさに理解した優人は、迷わず朝日の元へ走り出し、ベンチに付くと、直ぐに朝日の手を握った。

「あ、優人」

 朝日は、自分の手を握ってきた相手が優人だと分かると、安心した様に微笑んだ。そして、

「俺の彼女に、何か用ですか?」

 優人は、鋭い視線を男たちに向けて、声を低くしてそう言った。すると、

「あちゃー、彼氏持ちだったか」

 茶髪の方の男は、額に手を当ててそう言った。そして、

「何って、ただナンパしてただけだぜ。でも彼氏が居るんなら、相手をされなくて当然だな。仕方ない、次行こうぜ」

 金髪の男は、特に残念がる様子もなくそう言った。

「そうだな。それじゃあね、若いカップルさん。邪魔して悪かったね、それと、精々お幸せに」

 最後に、茶髪の男がそう告げると、男二人は直ぐに背を向けて、その場を後にした。何の策も考えず、思わず飛び出した優人だが、相手が聞きわけがよくて良かったと、心の中で安堵した。すると、

「えっと、その、ありがとう優人……助けてくれて」

 朝日は少し下を向くと、珍しく照れくさそうな表情をしてそう礼を言ってきた。なので、

「いや、俺の方こそ悪い、一人にして。お前は普通に可愛いから、こうなる事くらい予想しとくんだった」

 優人がそう言うと。

「私、優人から観て可愛いんだ。へへ」

 朝日はそう言うと、少し照れくさそうに笑った。なので、

「いや、あくまで客観的に観ての話で、俺の意見じゃないからな」

「まあ、優人がそう言うんなら、そういう事にしといてあげるよ」

 朝日はそう言うと、一旦言葉を切り。

「ところで優人は、いつまで私の手を握ってるつもりなの?」

 朝日にそう言われ、優人は自分の手元を観ると、そこには彼女の小さい手を掴んで離さない、自分の右手があった。なので、

「っと、悪い」

 そう言って、優人は朝日から手を離そうとしたが。朝日がそれを許さず、そのまま優人の手に指を絡め、そのまま強く、握り返して来た。

「おい、朝日!」

 優人は驚いて、少し声を大きくしたが。

「もう、優人ったら焦り過ぎ。それに、ただ並んで歩くよりこうしてた方が、ナンパ避けになるでしょ。私はもう、あんな目に会いたくないし」

「……仕方ないな、今日だけだぞ」

「昨日もしてくれたけどね。でも、ありがとう。やっぱり優人って、優しいね」

「そんな事ないよ」

 優人は直ぐに、その言葉を否定したが。

「ううん、やっぱり優人は優しいよ。一番近くで観て来た、私だから分かるよ。でも、優人にはもっと、自由に我儘に生きて欲しいな」

「……それってどういう事だ」

 優人がそう聞くと。

「えー、私はそんなに難しい事は言って無いよ。でも、分かりやすく言うとね」

 朝日は一度、言葉を切り。

「優人の言いたい事や、やりたい事は、私にははっきり言って欲しいな。優人が私に優しくしてくれる理由はよく分るけど。今更遠慮する間柄じゃないんだし。それに、前に優人の思ってることは、何となく分かるって言ったけど。それでも優人の本当の気持ちは、口に出してくれないと伝わらないから」

 朝日はそう言ったが。

「俺の為にみたいな感じで言ってるけど。結局は朝日の、ただの我儘じゃないか」

「まあ確かに、それもあるよ。でも、優人にもっと自由に生きて欲しいっていう気持ちは本当だよ。だって優人って、本当はもっと意地悪で、口が悪いでしょ。今の寡黙な優等生みたいな雰囲気、正直全然似合って無いよ」

「……言いたい放題言ってくれるな。お前だって、滅茶苦茶可愛いけど、チビでペチャパイなくせに」

「むー、褒められながら貶されて、何だか複雑な気分。でもやぱっり、私は今の優人の方がいいな。偶にムカつくけど、ただ一人の幼なじみなんだから、もっと遠慮なく、言いたい事は言い合いたいし」

「……そうなのか。まあでも、そうだよな。生まれた時からの付き合いで、お互いの良い所も悪い所も。楽しい思い出も苦い思い出も、全部知ってるもんな。そんな相手に、変に取り付くろう必要もないか」

「そうだよ。だから優人が今思っている事、正直に私に教えてよ」

「……そうだな。よし、朝日!」

「うん、なに優人?」

「今日は命一杯楽しもう。折角こんな所まで来てるんだ、偶には童心に帰って、思いっきり遊ぶのも、悪くないだろうしな」

「そうだね。でも、ふふ」

「なんだ?」

「なんでもないよ。ただ、優人が急にテンションを上げたのが、少し面白くて。クラスでもそのキャラでいたら、人気者になれるんじゃない?」

 朝日は微笑みながらそう言ったが。

「馬鹿言うな。俺みたいな陰キャがそんな事をしても、周りからは白い目で見られるだけだ。それに、お前以外の前でこのキャラは、恥かしくて出来ねえよ」 

「キャラっていうか、それが優人の素だけどね。でも、その方が優人らしくていいよ」

「はいはい、とにかく早く行くぞ。昨日より大分時間があるとはいえ、一日なんて、のんびりしてたら直ぐに終わるからな」

「そうだね」

 そうして二人は、新たな楽しみを探しに、手を繋いだまま、園内の散策を再開した。

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