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幼なじみに告白したい!  作者: 向井数人
第一章
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第17話 触れ合いコーナー

「ふふ、やっぱり可愛いな」

 朝日は満面の笑みを浮かべてそう言った。現在、優人と朝日の二人は、触れ合いコーナーという、名前の通り、実際に動物に触れる事ができるコーナーに来ていて。

 朝日は、一匹のウサギを抱き抱え、心の底から幸せそうな笑みを浮かべていた。

「おい朝日、嬉しいのは分るけど、顔が緩み過ぎだぞ。一応外なんだから、少しは気を引き締めとけよ」

 そんな朝日に向かって、その様子を間近で観ていた優人は、冷静にそう突っ込んだ。

 しかし、そんな淡白な言葉とは裏腹に、ウサギを抱き抱えて無邪気に微笑んでいる朝日の姿に、優人は見惚れていて。

 癒されに来たはずの動物園で、優人は一人、悶々とした気持ちを抱えていた。すると、

「そんな言葉、このモフモフに触れたら言えなくなるよ。という事で優人、どうぞ」

 朝日はそう言うと、自分が抱きかかえていたウサギを両手に持ち直し、そのまま優人に手渡して来た。それを観て、優人は朝日から、ウサギことモフモフを受け取った。すると、

「ふふ、どう? 可愛いでしょ」

 朝日はそう言うと、優人が抱き抱えているウサギの頭を優しく撫でた。

「……そうだな、可愛いと思うよ」

「へへ、そうでしょ!」

 朝日はそう言った。ただ、優人が言った可愛いは、彼の抱き抱えているウサギに向けたものではなく。

 目の前でドヤ顔を浮かべている、朝日に向けた言葉なのだが、朝日は当然気付く事はなく。無邪気に喜んで。

 優人としても、今の一言で、多少心に溜まっていたモヤモヤを掃けたので、少しは気分を落ち着ける事が出来た。

 その後は、優人が少しの間、ウサギを撫でた後、朝日にそのウサギを返し。朝日もその後、しっかりとウサギを可愛がり、二人とも満足して、触れ合いコーナーを離れた。

「ふー、癒されたわ」

「それは良かったな」

 朝日の言葉を聞いて、優人はそう言った。この朝日の笑顔を観れただけで、優人は今日ここに来てよかったと思うのだった。ただ、本人には決して言わないが。そして、

「じゃあ次は約束通り、優人の行きたい所に行こうよ」

 朝日はそう言った。しかし、

「多分、俺が一番見たい動物は、ここには居ないんだよな」

「柴犬だよね、そりゃあ居ないよ。それならわざわざ動物園に来ないで、近所のペットショップに行けって話だもん」

 朝日はそう言った。因みに、そんな朝日が一番好きな動物は子猫だったりする。

「まあそうだな。だから朝日、後の時間は、まだ観てないコーナーをのんびり観て回りたいと思ってるんだが、それでいいか?」

「うん、優人がいいんなら、それでいいよ」

「そうか、ありがとうな、朝日」

「それを言うのは私の方だよ。優人は私の我儘に付き合ってくれたんだから。それで、私たちが行ってないコーナーで、一番近いのは何処なの」

「えっと、そうだな」

 優人はそう言って、鞄の中に仕舞っていたパンフレットを取り出した。そして、

「まだ行ってない場所で一番近くにあるのは、爬虫類コーナーだな。亀とかワニとか、もしかしたら、お前が苦手な蛇も居るかもな」

「……そこは飛ばして、次に近い所に行こうよ」

 優人の言葉を聞いた朝日は、さっきまで上機嫌だったのに一気にテンションが下がり、苦笑いを浮かべながらそう言った。

「そうだな。なら、少し遠回りになるけど、猛獣コーナーに行くか。可愛いウサギの後だし、次はトラとかライオンとかの、カッコイイ動物でも観ようぜ」

「そうだね」

 そう言って二人は、猛獣コーナーへと向かった。そして、

「あれって、森川くんだよね」

「そうだな」

 二人が猛獣コーナーにたどり着くと、人ごみに紛れて、一人静かにライオンを眺めている宏樹を見つけた。ただ、彼はずっと檻の中を観ていて観ていて、二人に気付く様子は無かったので、二人は彼に話しかけに行った。

「よう、宏樹」

「ん? ああ、誰かと思ったら優人か、それと山下さんも。もしかして、二人はあの後もずっと一緒に行動してたのか」

 宏樹がそう聞くと。

「うん。優人がどうしても、私と一緒に回りたいって言ったから、仕方なく付き合ってあげてたの」

「平然と嘘を言うなよ。お前が付き合って欲しって言ったんだろ」

「えー、そうだったっけ」

「おい」

「へいへい、相変わらず仲がいい事で」

 二人のやり取りを観て、宏樹は呆れた様子でそう言った。

「まあ、私たちの事はひとまず置いといて。森川くんは、ライオンをずっと観てたの」

「ずっとじゃないけど。まあ結構な時間、ここに居るな」

 宏樹はそう答えた。

「そうなんだ。森川くんはライオンが好きなんだね」

「うーん、考えたことはねえけど。言われてみたらそうかもな。強くてカッコいいし、動物なら結構好きな方だな」

 宏樹は、ライオンを観てそう言った。そして、二人も宏樹に続いて、檻の中に居るライオンの様子を観たが。

「……寝てるな」

「寝てるね。動いてる所が観れなくて、残念じゃないの?」

 優人に続いて、朝日がそう聞いた。しかし、

「まあ確かに、それはちょっと残念だけど。これはこれでレアな姿が観れてラッキーだと、俺は思ってるぜ。ライオンの熟睡姿なんて、滅多に観れないからな」

「まあ、そうだな。テレビなんかでも、動いてるライオンの姿が多い気がするし」

「そうだね。それに寝てるライオンって、なんだか可愛いな」

 朝日はそう言って、少し目を細めて檻の中のライオンを観た。なので、

「そうだな、それは俺も思うわ」

 優人がそう言った。そして、

「普段は凛々しくてクールな奴が、時折見せる無防備な姿か。確かにそういうのも、ギャップがあっていいかもな」

 宏樹もそう言って、そのまま三人横に並んで、少しの時間、ライオンの昼寝姿を眺めていた。そして、

「全然起きそうにないな。まあこれだけ天気が良いんだから、昼寝を楽しみたいって気持ちも、よく分かるけどな」

 全く起きる気配のないライオンを観て、宏樹は苦笑いを浮かべてそう言った。そして、

「それで、二人は残りの時間をどう過ごすつもりなんだ。俺はこいつが起きてくれる事に望みをかけて、まだここに居るつもりだけど」

 宏樹は、二人を観てそう聞いた。

「そうだね。優人、どうする?」

「俺が決めていいのか?」

 優人がそう聞くと。

「うん、さっき言ったでしょ。この後の時間は、優人に付き合うって」

 朝日にそう言われ、優人はスマホで時間を観て、少し考えた。そして、

「どうせなら、残りの時間で全部のコーナーを観て回るか。思ったより時間は残ってるから、少し急げば、全然行けそうだから」

「うん、優人がそうしたいんなら、私はそれでいいよ」

 優人の言葉を聞いて、朝日は納得した様に頷いた。

「そうか。ならまたここでお別れだな」

 宏樹はそう言った。そして、

「優人も、山下さんも。こんな場所にこれる機会はあんまりないんだから、残りの時間もしっかり楽しめよ」

「ああ、宏樹も楽しめよ」

「そう思うんなら、このライオンが目を覚ましてくれる事を少しでも願っててくれ」

「了解、それじゃあな、宏樹」

「またね、森川くん」

「ああ、また後で」

 そう言って、二人は再び宏樹と別れた。

 その後は、少し早足で、残りのコーナーを観て回った。そして、

「残りは、爬虫類コーナーだけだな」

「うぐ」

 優人の言葉を聞いて、朝日は露骨に嫌そうな顔をした。そして、

「別に行かなくてもよくない? もうそろそろいい時間だし、最後には、優人の本当に行きたい所でいいんだよ」

 朝日がそう言うと。

「そうか。ならやっぱり爬虫類コーナーに行こう。全部のコーナーを回るのが、今日の俺の目標だからな」

「……優人の意地悪」

 朝日は頬を膨らませ、優人から目を逸らしてそう言った。なので、

「悪いって。全部のコーナーを回りたいっていうのは俺の本心だけど、朝日がどうしても嫌なら、行かなくてもいいぞ。楽しむために来たのに、最後に嫌な思いをするのはよくないからな。それとも、俺一人で行ってこようか」

 優人はそう言ったが。

「……ううん、私も行くよ。ここまで来て、全部観ないのは、後で後悔しそうだから。でも、怖いモノは怖いから、一つ私のお願いを聞いてくれない?」

 朝日はそう言うと、優人に一つ言葉を告げた。   

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