第14話 暇つぶし
「……暇だね」
「そうだな」
朝日の言葉に、優人が続いた。
ゴールデンウィーク二日目。今日は昨日と同じく山下家に、渡辺朝日、藤宮鈴華、森川宏樹の三人が来て、四人でゴールデンウィークの課題を片付けていたのだが。
昨日の内に殆どの課題は終わっていた事もあり、今日は二時間たたないくらいで、全ての課題が終わった。
その後は、お菓子やジュースを飲みながら、適当に雑談をして過ごしていたのだが。十五半時を少し過ぎた頃。
「私はもう帰るわ。課題も終わったし、このままここに居てもする事がないからね」
と言って、鈴華はそのまま山下家を後にした。そして、
「藤宮さんが帰るんなら、俺もそうするわ。目の前でイチャイチャしてる所を見せつけられるのは、独り身にはきついからな」
そんな事を言って、宏樹も家を出て行った。ただ、朝日は家に帰っても暇だからという事で、こうして山下家に残っているのだが。
「優人、何か面白い話をしてよ」
「無茶言うなよ」
朝日にそんな事を言われたが、芸人でも、特別トーク力があるわけでもない優人には、急にそんな事を言われても、答えられる訳は無かった。すると、
「もう、情けないね、優人は。そんなんじゃあ女子にモテないよ」
「別にいいよ。どうせ俺には、彼女なんて出来ないから」
優人はそう言うと。
「もう、またそんな事を言って。でも、私に取っては、その方が都合がいいかな。優人がモテモテだったら、私以外の女の子と付き合う事になるかもしれないし、そうなったら嫌だから」
「朝日……」
「って、この話は今はいいか。ねえ優人、ここに居ても仕方ないし、優人の部屋に行こうよ。あそこなら、色々と暇が潰せるから」
「そうだな」
そう言うと、二人は立ち上がり。朝日が先行して、優人の部屋を目指した。そして、階段を上り、優人の部屋のドアを朝日が開けると。
「とう!」
朝日はそう言って、そのまま勢いよく、優人のベッドにダイブした。
「お前は本当、そこがお気に入りだな」
優人はそう言った。朝日は優人の部屋に来ると、大体いつもベッドを占領するので、朝日がベッドに寝転んでいるのは、今では見慣れた光景だった。
ただ、見慣れているだけで、朝日が部屋に来た日の夜は、ベッドからいい匂いがして中々寝付けず、次の日は寝不足になるという、困ったおまけが付いてくるが。そんな事を、優人が思っていると。
「うん、だってここに居ると、優人に抱きしめられてるみたいで、凄く落ち着くから」
朝日は、枕を両手でグッと抱きしめながら、そんな事を言った。なので、
「あんまりそんな事を言うなよ」
優人は目を逸らして、そんな事を言った。しかし、
「えー、何で? 優人が聞いてきたから、私は正直に答えただけなのに。あ、もしかして優人、照れてるの?」
朝日は、意地の悪い笑みを浮かべてそう言った。しかし、
「馬鹿なこと言ってないで、いつもの様に大人しく適当に何か読んどけよ」
優人はそう言うと、朝日に背を向けて本棚を観始めた。そして、
「何か読みたいモノはあのか?」
優人は、本のタイトルを見る為に、背を少し屈め、目線を落としてそう言った。すると、
「うーん、そうだね」
突然、朝日の声が優人の耳元で聞こえ、そのまま優人の腰に手を回して抱き着き。優人の右肩に、朝日は顔を載せてきた。
「……朝日、動きづらいんだが」
「えー、これくらい別にいいでしょ?」
優人の言葉は意に返さず、朝日はそう言った。しかし、
「お前も一応女なんだから、少しは恥じらいを持てよ」
優人がそう言うと。
「……ねえ、優人はもし私が彼女だったら、こんな事されるのは嫌?」
「何だ、藪から棒に」
「別に、ただちょっと気になってただけだよ。それで、どうなの?」
「何でその質問に答える必要があるんだ」
優人がそう言うと。
「いいでしょ。幼なじみ何だから、それくらい教えてくれても」
「それを言ったら、何でも通ると思ったら大間違いだぞ」
「そう。なら、毎日朝早く起きて、優人にお弁当を作ってあげるお礼って事ならどう?」
「その言い方はずるいだろ」
「別にいいよ、ずるくても。優人の気持ちが知れるんなら。それで、どうなの?」
「……正直に言うと、嫌ではないよ」
「そう、良かった。なら、もう少しこのままでいてもいいよね?」
「……仕方ないな。でも、少しだけだぞ。さすがにこれは、俺でも恥ずかしいし」
「分かった、私もこれはちょっと照れるから」
「なら、止めたらいいだろ」
「止めないよ。確かに照れて恥ずかしいけど、それ以上に嬉しいから」
「……そうかい、こんなんで嬉しいんなら幾らでも使ってくれ」
「うん、そうさせて貰うね」
朝日はそう言うと、彼の肩から自分の顔をどかし、背中に顔を埋め、そのまま動かなくなった。そして、
「……そんな事してて、楽しいか?」
五分くらいその姿勢が続いて、それでも朝日は動く様子は無かったので、優人はそう聞いた。すると、
「楽しいって訳じゃないかな。でも、優人の匂いを嗅いでたら気分が落ち着くから、悪くないよ」
朝日はそんな事を言った。
「何やってんだよお前は、恥ずかしいから止めてくれ」
「いいでしょ別に。優人のベッドに居る時は毎回匂いを嗅いでるから、今更恥ずかしがること無いよ」
「何だその暴露話、お前にそんな変態的な趣味があるとは思わなかったよ」
「変態なんて失礼ね。私はただ、自分の欲望に正直なだけよ」
「正直なのはいいけど、わざわざ口に出さなくてもいいとは思うぞ」
「まあ、私もそれは思うけどね。でも、誰かさんが鈍感で、口に出さないと伝わらないから、私も恥を忍んで、正直に気持ちを打ち明けてるんだよ」
朝日はそう言うと、そこで一旦言葉を切り。
「さて、幼なじみ成分も補給できたし、私もそろそろ帰るね」
朝日はそう言って、優人から離れた。その時優人は、もう少しこうしておいて欲しいと思ったが、それを口に出す勇気は無かった。なので、
「お前は本当、自由に生きてるな。さっきまで暇って言ってたのに、いきなり帰るとか。でも、もう少しゆっくりしていってもいいんだぞ」
優人は、遠慮がちにそう言ったが。
「そうしたいのは山々だけど。明日の準備もあるから」
「準備って、そんなにする事ないだろ」
「女の子には色々あるのよ。あ、そうだ。どうせなら明日、駅まで一緒に行く?」
「別にいいぞ。というか、わざわざ別々に行く必要もないだろ」
「それもそうだね……あ、そうだ。」
「何だ? まだ何かあるのか?」
「うん、優人はこの前、私と昔した約束を覚えてるって言ったよね」
「……ああ、そうだな」
優人がそう言うと。
「私は、あの約束を大事に思ってるし、優人の言った事も守るつもりだよ。ただ、あの時言ったよね。あんまり待たせると、私は何をするか分からないって」
「まて、朝日お前、何を企んでるんだ?」
その言葉を聞いて、優人が慌ててそう質問すると。
「それを言ったら面白くないでしょ? ただ、明日はとても楽しい一日にするつもりだから、優人は楽しみにしててね!」
朝日は笑顔でそう言って、優人の部屋から出て行った。
「……不安だ」
一人残った優人は、ぼっそとそう呟いた。
観て頂いた方々、ありがとうございます。ただ、今日の分でストックが無くなったので毎日投稿は難しくなります。それでものんびり投稿は続けて行くので、よかったら今後ともよろしくお願いします。




