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幼なじみに告白したい!  作者: 向井数人
第一章
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第13話 課題

 土曜日の昼間。山下家には、渡辺朝日、森川宏樹、藤宮鈴華の三人が来ていて。優人を合わせた四人が、客間の机を囲って畳の上に座り、ゴールデンウィークの内に出されている課題を、各々片付けていた。すると、

「ねえ、鈴華ちゃん。ここの答え教えて」

 朝日は、隣に座っていた鈴華に、そう言ったが。

「いきなり答えを聞くのは、朝日の為にならないはよ。解き方は教えてあげるから、答えはちゃんと、自分で導き出しなさい」

「……はい」

 朝日にそう言われ、鈴華は渋々ながらも納得したようだった。こうしてみると、同い年の友人というより、しっかり者の姉と、我儘な妹といった風に見えるが。

 まだ高校二年生だが、大学生や、下手したら社会人だと言われても納得できるくらいに、スタイルも顔も成熟していて、物腰が落ちついている藤宮鈴華と。

 それとは対照的に、体つきが小柄で、思っている事を直ぐに口にしてしまう素直な性格をしている朝日とでは、そういう失礼な印象を持ってしまう事も、無理はないだろう。

「……という事なのだけど、分かったかしら」

 そんな事を優人が思っていると。鈴華が簡潔に、しかし分かりやすく、朝日の悩んでいる部分を説明した。しかし、

「うーん、分かんない!」

 朝日は、きっぱりとそう言い切った。

「……貴方、ちゃんと話を聞くつもりがあるの?」

 鈴華は呆れた様子でそう言った。すると、

「あるけど、二時間もぶっとうしだよ。もう集中力が切れてるよ」

 朝日はそう言った。ただ、それについては他の人たちも概ね同じ意見だったようで、特に何か文句が出る様な事はなかった。なので、

「まあ、それもそうね。私はもう少し続けても問題ないけど、男の子たちも疲れが出ている様だし、一度休憩にしましょうか」

 鈴華がそう言うと、少し張りつめていた部屋の空気が一気に緩んだ。そして、

「やっと休憩だ! 優人、お菓子とか持って来てもいい?」

「いいけど、お前は今日は客なんだから、大人しく待っててもいいんだぞ?」

 優人がそう言うと。

「ううん、大丈夫。さすがに四人分を一人で運ぶのは大変だろうから、私も手伝うよ」

「そうか。まあお前なら、家の中に何が置いてあるか、ある程度分かってるから都合がいいな。じゃあ頼むわ」

「うん、任せて」

 そう言って二人は、休憩のおやつを取りに、リビングへと向かった。そして、二人の姿が観えなくなると。

「もう何度言ったか分からないけど、何であれで付き合ってないのかしらね」

 鈴華はそう言うと。

「そんなの、俺が知りたいよ。でも、このゴールデンウィークで頑張って、二人をくっつけるつもりなんだろ?」

「そうよ、森川くんの協力がないから、少し不安だけどね」

「その件は悪かったって。でも、俺も応援はしてるから、頑張ってくれ」

「言われなくてもそのつもりよ。でも、頑張るのは朝日だけどね。私はただ、アドバイスをするだけよ」

「いいんじゃないか、それで。ぶっちゃけあの二人は、何らかの介入がないと、ずっとこの距離で、いつまでも足踏みしてそうだからな」

「それを分かってても、何かするつもりは無いのね」

「まあな。俺も過去に動いた事はあったけど、その時は失敗したからな。だから、今回は上手く行く事を祈ってるよ」

「そう言われると、とても不安なのだけど。今回は朝日も本気の様だし、私もやれるだけの事はやってみるわ」

「そうか。ただ、あの二人はああ見えてかなり頑固な所があるから、正直かなり不安だけど。まあ、よろしく頼むわ。俺も二人の恋路は応援してるからな」

「その気持ちは、私も同じだから任せて置いて」

 鈴華がそう言い終わると同時に、二人が戻ってきた。そして、

「お待たせ、何の話をしてたの?」

 朝日がそう聞いたので。

「何でもないわ。それより、朝日の持っている盆に乗っているチョコを五つ程、貰っていいかしら?」

「いいよ。鈴華ちゃんは相変わらず、甘いモノが好きだね」

「頭を使うと、脳が糖分を欲するのよ。それに、甘いモノ好きという事なら、貴方には負けるわよ」

「えー、そんな事は無いよ。だってこの前、二人でカフェに言った時、鈴華ちゃん滅茶苦茶大きいパフェを頼んでたじゃない。さすがに私は、あんな大きなパフェは食べれないよ」

「仕方ないでしょ。あの時は貴方の相談に乗ってたから、いつも以上に頭を使ったんだもの。それに朝日だって、外に食べに出たら、食後のデザートはいつも欠かさないじゃない」

「いいでしょ。好きなんだから」

「それなら、私だってそうよ。でも、そうね……そんなに甘いモノが好きなら、今度二人で、スイーツ巡りにでも行きましょうか」

「あ、いいねそれ。ただ、ゴールデンウィークは中は予定で埋まってるから、それ以降ね」

「分かってるわよ。朝日にとっては、頑張らないといけない時期だものね」

「……うん、そうだね」

「何を頑張るんだ?」

 優人がそう質問すると。

「何でもないよ。それより優人、さっき分からない問題があったから、今の内に教えてよ」

 朝日は、机を挟んで向かい合っている、優人の隣に向かいながらそう言った。

「別にいいけど、俺じゃなくて藤宮さんに聞いた方がいいんじゃないか? 俺なんかよりずっと成績がいいんだし」

 優人はそう言ったが。

「私は今、糖分を摂取するので忙しいから。悪いけど山下くん、朝日の相手はお願いね」

「って事だって、優人」

「……分かりました。それで朝日、何処が分からないんだ?」  

 優人がそう聞くと。

「えっと、ここなんだけど」

 そう言って朝日は、優人の隣に来て座ったのだが。

「なあ、朝日」

「何?」

「さすがに、距離が近すぎないか?」

 優人はそう言った。朝日は優人の家に居る時は、基本的に優人との距離はかなり近かったが。それでも、お互いに体がぶつからない位の距離を保っていた。

 しかし、朝日は今、優人と腕がぶつかり合う程に密着して座っていて。その上、優人の肩に頭を乗せ、軽く寄りかかって来ていた。しかし、

「別にいいでしょ? 私はこの姿勢がやりやすいから」

「さっきまでは、普通に座って勉強してただろ」

「そんなの当たり前だよ。鈴華ちゃんに寄りかかる訳にはいかないし」

「俺なら良いのかよ」

「良いでしょ。だって私たち、幼なじみなんだから」

「幼なじみだからって、何をしても良いって訳じゃないだろ」

「でも、これくらいは良いでしょ。優人も、嫌がってる訳じゃ無さそうだし」

「……そんなの何を根拠に」

「根拠なんて無いよ。でも、これだけ付き合いが長いと、優人の思ってそうな事くらい、何となく分かるよ」

「そんな事ある訳……いや、あるかもな。俺もお前が思ってそうな事は、何となく予想が付くしな」

 優人はそう言うと。

「そうなんだ。ふふ、何て言うかそれって、通じ合ってるみたいで嬉しいね」

 朝日は、笑みを浮かべてそう言ったが。

「別に、十年以上一緒に居たら嫌でも分かるだろ。そんな事でいちいち何か思ったりしねえよ」

 優人はそっぽを向いてそう言った。しかし、

「とか言いつつ優人、満更でも無いんでしょ。それくらいの嘘じゃ、私の目はごまかせないよ」

「いいや、これは俺の本心だ。さっきはああ言ったが、朝日はまだまだ、俺の気持ちを読めそうに無いな」

「そんな事ないよ。優人は本当は凄く嬉しいんだけど、本心を言うのが恥ずかしいだけでしょ?」

「いいや、俺は本当に嬉しくないぞ」

「嘘ばっかり、素直に嬉しいって認めらた?」

「いいや、嬉しくない」

「嬉しい」

「嬉しくない」

「嬉しい」

「嬉しくない」

「嬉しい」

「嬉しくない」

「……なあ、お前ら。俺たちがいる事を忘れてないか?」

 そんなやり取りをしていると、呆れた様子で宏樹がそう声を掛けてきた。そして、

「そうね。仲がいいのは良いけど、イチャイチャしだすと周りの人が見えななくなる所は、直した方がいいわよ」

 鈴華も続けて、そんな事を言ってきた。しかし、

「イチャイチャって、そんな大げさなモノじゃないよ。これくらいいつもやってる、只のスキンシップだよ」

 朝日は、全く照れた様子もなく、そんな事を言った。

「貴方、本気で言ってるの?」

 その言葉を聞いて、鈴華は少し驚いた様子でそう言ったが。

「そうだな。学校ならさすがに目立つからやらないけど。家ならこれくらいのやり取り、いつもやってるな」

 優人も、何の躊躇いもなくそう言った。

(これだけだとどう聞いても、バカップルのやり取り何だけどな。恋人になるならない以前に、二人の価値観を直した方が良くないか? 今でもこんな様子なのに、恋人になるととどうなるか、想像するだけで恐ろしんだが)

 宏樹は心の中でそう思った。

 その後は、四人で休憩時間を過ごした後。

 十八時前まで、適度に休憩を挟みながら、宿題をして過ごした。ただ、予想してた程、宿題が多く出されなかった事と。

 それなりに集中して過ごせていたおかげで、八割近くの宿題を一日で済ませる事が出来て。嬉しい反面、明日は時間がかなり余りそうだった。

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