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幼なじみに告白したい!  作者: 向井数人
第一章
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第12話 失恋と約束

 とある日の放課後、山下優人は、渡辺朝日に呼び出され。昔二人でよく遊んでいた、家の近くにある、小さな公園に来ていた。そして、

「私、優人の事が好き。良かったら私と付き合って下さい!」

 今よりも背が低く、まだ今ほど明るい性格では無かったが。それでも今と変わらない、小動物の様な可愛さをしていた朝日に、優人は告白された。すると、

「……そうか、ありがとう。俺も朝日の事が好きだ」

「優人、それじゃあ!」

「でも、悪い朝日。今の俺は、お前とは付き合えない」

 しかし、優人の答えは、朝日の期待を裏切る、残酷なモノだった。

「……え?」

 それを聞いた朝日は、一瞬言葉を失った。しかし、自分が振れた事を理解したのか、徐々に顔が俯き始めた。そして、

「ぐすっ」

「って、おい朝日」

「その、ごめんね優人。私みたいな暗い女に告白されても、普通に迷惑だよね……でも、振られておいて、こんな事を言うのはよくないけど。もし迷惑じゃなかったら、これからも幼なじみとして、私と仲良くして欲しいな。優人と話せなくなったら、私……っう、う、うわーん!」

 そう言って、朝日は泣き出してしまい。

 優人は、大切な幼なじみを泣かせてしまった罪悪感に苛まれながらも。言葉をかけたり、頭を撫でたりと、必死になって朝日の事を宥めた。そして、



「ぐす……ありがとう、優人」

 現在二人は、公園の中にあるベンチに並んで座り。優人の必死の介抱の甲斐があって、何とか落ち着きを取り戻した朝日は、優人にそう言った。

「いや、気にするな。というか、お前が泣いたのは俺のせいなんだから、これくらい当たり前の事だ」

 優人はそう言ったが、その言葉を聞いて再び朝日が俯いた。

「あ、そうだ。私、優人に振られたんだった。好きでもない相手に告白されて、その上目の前で泣かれるなんて、優人にとっては迷惑でしかないよね……本当にごめんね」

 朝日は、何でもない風を装って言おうとしていたが。その瞳には、再び涙が溜まり初めていた。なので、

「……ごめん、朝日」

 優人はそう言うと。朝日の小さな体に優しく手を絡め。そのまま朝日の事を、力強く抱きしめた。

「え、優人?」

 その行動の意味を、朝日は理解できてない様だった。だが、無理もないだろう。

 さっき好きな人に振られて、深く気づいていた所を、振った本人に慰められ。今度はその相手に力強く抱きしめられたのだ。

 朝日は、好きな人に振られた悲しみと。その人に抱きしめられている喜びの、正反対の感情が混ざり合い。脳の処理が追いつかず、一瞬思考が停止して、何を言っていいのか分からなくなった。

 すると、朝日を抱きしめたままの姿勢で優人が、ゆっくりと話し始めた。

「朝日、一つだけ訂正させてくれ。確かに俺は、お前の告白を断ったが。俺はお前の事は嫌いじゃない……いや、さっきも言ったが、俺もお前の事が好きだ」

「……そうなんだ。でも、私の事を振ったって事は、私の事は、女の子としては好きじゃないんだよね?」

「そんな事ない。俺はお前の事が、幼なじみとしても、女の子としても好きだ」

「……意味わかんない。それならどうして、私の事を振ったの? 優人に振られて、私は凄く傷ついたよ」

「それは、本当にごめん。ただ、今の俺には、朝日と付き合う資格なんてないんだ」

「……もしかして優人。私のお母さんの事を気にしてるの?」

「……ああ、そうだ」

 優人は、少し表情を歪めてそう言った。すると、

「気にしなくていいよって言ってたら、嘘になるけど。あの事は、優人だけの責任じゃないよ。それに、いつまでも昔の事を気にしてるのは良くないよ。じゃないとその内、後ろばかり振り返る様になって、前に進めなくなっちゃうよ」

「……そうだな。ごめんな朝日、振られてて辛いはずなのに、そんな風に言ってくれて」

「本当にそうだよ。でも、いいよ。私は優人の事が大好きだから。困ってる時は、いつでも助けてあげる」

「お前は本当に優しいな。こんな素敵な女の子を振るなんて、今の俺は世界一の馬鹿野郎だな」

「ふふ。そう思うんなら、さっき私を振った事を訂正してもいいよ」

 優人に素敵な女の子と言われて嬉しかったのか、朝日は少し微笑んで、そんな事を言った。しかし、

「悪いけど、今はそれは出来ないな……なあ朝日、今から一つ、酷い事を言っていいか?」

 そう言われて朝日は、少しの時間、黙って考えるそぶりをした。そして、

「……いいよ。本当は聞きたくないけど、断って優人に嫌われるのは嫌だから」

「ありがとう、朝日」

「別にいいよ。それで、優人は私に何を言いたいの?」

 朝日がそう聞くと、優人は一呼吸間を置いた。そして、

「滅茶苦茶自分勝手な話だと、俺も思うんだけど。もし朝日が許してくれるなら、俺が改めて告白するまで、今の幼なじみの関係で居てくれないか。今は付き合えないけど、俺も朝日の事が大好きだし、本音を言うと、今すぐにでも付き合いたいと思ってる。でも、それは出来ない。だから、俺の気持ちが整理出来て、朝日と、朝日の両親とちゃんと向き合う覚悟が出来たら、今度は俺の方から告白をする。だからそれまで朝日には、今まで通り幼なじみとして、待っていて欲しいんだ」

 優人は、朝日の目を真っ直ぐ見てそう言った。すると、朝日は少しの間下を向いた。そして、

「本当に今日の優人は自分勝手だね。自分から振っておいて、そのくせ今度は、自分が告白するまで待ってろだなんて。私じゃなかったら、ビンタされてても可笑しくないよ」

「本当にそうだな。でも、それで朝日の気持ちが少しでも楽になるんなら、いくらでもビンタしてくれ」

「そんな事しないよ。それと、優人の提案だけど、いいよ。私だって出来るんなら、優人と付き合いたいもん。だから、優人の方から告白してくれる日まで、私は待っていてあげる」

「……ありがとう朝日、それと悪いな。こんな情けない幼なじみで」

「本当にそうだよ。でも、あんまり長くは待たせないでね。私はそんなに我慢強い性格じゃないから。あんまり遅いと、また私の方から、何かするかもしれないよ」

「ああ、分かった。なるべく早く告白できる様頑張るよ」

 そう言って、優人と朝日はお互いに抱きしめ合ったまま。一つの約束を交わした。





「……今更、あの時の夢を観るとわな」

 ゴールデンウィーク初日の土曜日の朝、優人は自分のベッドから起き上がり、そう言った。そして、

「あの約束から、もう五年以上たつのか。あいつはあんなり明るい性格に成長したのに、俺はあの頃から……本当に情けないな」

 待ちに待ったゴールデンウィーク初日にも関わらず、優人は一人、大きくため息をつくのだった。 

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