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特別な関係  作者: 夜明け
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七笑 あたしの放課後

「おーい。明日香ぁ。部活終わったか?」


 声を掛けられ振り返ると、やはり光樹がいた。ジャージが泥だらけになっている。ってあたしもそうか。


「おう。今終わったよ。帰るか」


 あたしは、光樹に軽く返事をして、同じチームメイトの友達に声を掛けた。


「ほんじゃ、あたし帰るね」


 すると、チームメイトはニヤニヤと笑っていた。


「な、何?」

「いいなあ、ラブラブで」


 一人のチームメイト真理ちゃんが言う。


「な、違うって。あたしら家近いし、幼なじみなだけ。真理ちゃんだって、塾一緒に帰ってるでしょ?」

「えー、でも、明日香ちゃんみたいに迎えにきてくれないし」

「そうそう。うらやましー」


 他の皆も茶化してくる。あたしは苦笑しながら「違うってばー」と手を振った。


「おい、明日香。早くしろ」

「あー、はいはい。全くうるさいですね。じゃあね。みんな」

「うん。バイバーイ」


 あたしは、軽く挨拶をして、光樹のところに駆け寄った。


「ごめんごめん。じゃあ、いこっ」

「おう」


 あたしらは、軽く言葉を交じ合せながら、校門をくぐった。






「ねえ。あんたってさ、まだ理沙ちゃんを好きだったりするの?」


 夕日が沈んで行くのを見つめながら、あたしはふと思ったことをくちにした。


「はあ?」


 光樹がすっとんきょな声をあげて、あたしを疑わしい目で見つめてくる。


「何だよ。急に」

「え? 別に。思っただけ。で? 真相は?」

「は、好きじゃねーよ。俺には、野球しかねー!」

「……そうですか。今だったら、ちゃんとくっつけてあげたのに。っていうか、小学校まで好きだったじゃん。野球あるくせに」

「それと今は全然違うっつーの」

「何で? だってさ、少女マンガとかだと、幼なじみと恋が実るーってベタな展開あるじゃん」

「あん? 世の中そんな上手くいかねーよ」

「そんなもん?」

「そんなもん」

「ふーん」


 あたしは小さく溜息をついた。なーんだ、つまんないの。

 しばらく無言で歩くと、今度は、光樹から声を掛けてきた。


「お前は?」

「は?」

「お前はいねーのか? ほら、前まで好きだったじゃん。大地のこと」

「なっ!」


 あたしは大地の名前が出てきて慌てた。本田大地。小学四年の頃、あたしと光樹と大地でよく遊んでいた。光樹と大地も理沙ちゃんと同じ幼なじみだそうだ。その頃、あたしは大地が好きだったんだ。

 でも、それは昔の話で、四年の頃以来同じクラスにならなくて、もう冷めてしまった。


「ちげーよ。いないって今は」


 ほんとはいるんだけど。と小さく心の中で言う。


「ふーん。じゃあ、隼人は?」

「な、ななな! お、お前なんで隼人が出て来るんだよ!」


 隼人という名前に大地の時よりも慌てる。あたしは、半ば切れ気味に言った。


「だってさー、俺がいないときでもお前ら、よく遊んでんだろ?」

「はあ? それはあんたが誘いに断ってんじゃん」

「しょ、しょうがないだろーが! 俺だって忙しいっつーの」

「そう。どうせ、あたしは暇ですよーだ」


 あたしが言うと光樹は急に黙ってしまった。あたしも、話題がないので、無言で歩く。

 しばらく歩くと、家の前にたどり着いた。


「あ、じゃあ。これで。送ってくれてありがとよ」

「いや」

「ほんじゃ、明日ね! 寝坊すんなよ」

「は? お前じゃねーんだよ!」

「何!? あたしより、お前のほうが寝坊回数が多いわ!」

「それはしょうがねーんだよ! 塾行ってるんだから!」

「へー。塾行って、塾に行ってないあたしと同じ学力ってどうよ? 言い分けになんねーよ」

「うるせー! この前、英語勝ったわ!」

「はあ? 一点差じゃだろーが!」

「ふん。勝ちは勝ちだ!」


 言葉が返せなくなり、いつもの言い合いが終わる。

 あたしは、一息ついて、笑って見せた。


「ほんじゃあね」

「お、おう」


 光樹も軽く手を振って歩き出す。あたしはそれを見送ってから、家のドアを開けた。

時間通りってかなり難しいですね。

あの、今回、明日香の視点ですが、次回も明日香の視点で書かせていただきます。

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