表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特別な関係  作者: 夜明け
8/57

六笑 俺の初登校

 心臓がどくんと鳴った。それから、だんだんと早くなっていく。

 俺は、1年C組のドアの前に突っ立っていた。

 すでに、教室では朝のHRが始まっており、廊下は静けさを纏う。

 ドアの奥では、これから担任になる先生が俺の事を紹介していた。俺は、先生の合図を待つ。すると、先生は小さく首を回して、俺と目線を合わせた。どうやら、入っていいらしい。

 俺は、一度深呼吸をすると、ドアを開けた。


「えっと、片桐慎之介です。前は田舎の方に住んでいました。慎ちゃんと呼んでください。よろしくお願いします」


 教壇の上に立ち、軽い自己紹介をしてお辞儀をする。

 俺は、明日香ちゃんがいないかと、視線を巡らせる。そして、窓側の一番後ろの席の子と目が合った。

 明日香ちゃん!

 明日香ちゃんも俺に気付いて、軽く手を振る。後ろに光樹君もいた。明日香ちゃんの反対の廊下側の一番後ろの席には、隼人君もいた。


「えっと、片桐君の席はあそこね」


 先生が席を指す。指された場所は廊下側の一番前の席だった。

 明日香ちゃんとは対角線上に逆になり、一番遠くに離れてしまう。少し、残念の気もしたが、しょうがなく、俺は席に着いた。

 丁度、チャイムが鳴る。休み時間になったらしい。

 チャイムが終わると同時に先生が出て行き、クラスの皆も動き始めた。クラスの皆が俺を囲む。

 自己紹介されたり、質問されたりする。中には、男子だけではなく女子もいた。

 俺は軽く答えて、立ち上がり、明日香ちゃんのところへ行った。


「明日――白石さん」


 いつも通り『明日香ちゃん』と呼ぼうと思ったが、なんとなく、恥ずかしくなり、苗字のさん付けで呼んだ。

 本を読んでいた明日香ちゃんは本から顔を上げ、笑った。


「あ、慎ちゃん。良かったね、同じクラスで」


 明日香ちゃんが小声で言う。明日香ちゃんもやはり、普段どおりは行かないらしい。


「うん。その、良かったら、学校案内してくれないかな?」


 少し大胆に言ってみる。もしかしたら、変な噂がたつかもしれないけど、それなら、それでいいとも思えてきた。

 明日香ちゃんは目を白黒させながら言う。 


「えっ? あ、でも、こういうの男子のほうがよくない? みんな仲良くしたいみたいだし」


 明日香ちゃんが、俺の後ろに視線を向ける。俺も振り返ってみると、さきほど、質問してきたみんながいた。


「その、仲がいい人のほうがいいと思うし。駄目かな?」


 少し、苦しい言い訳かもしれなかったが、なんとなく明日香ちゃんと校内を歩きたかった。

 明日香ちゃんは俺の気持ちに気付かず、きょとんとした顔で言った。

 

「別にいいよ。昼休みでいい?」

「あ、うん」


 良かった。ほっと安堵の息を漏らすと、


「ちょっと、待った!」


 と光樹君が声をあげた。後ろには、隼人君も立っていた。光樹君は少し顔を普通だったら気付かないようなくらい赤く頬を染めていた。


「何だよ、光樹?」


 明日香ちゃんが少しきつい口調で言う。いや、これが本来なのかもしれないけど。


「俺が案内する」

「は?」「え?」


 光樹君の爆弾宣言に驚き、思わず声をあげる。


「俺が案内するって言ってんの。明日香になんか任せたら、片桐がどうなるかわかんねーからな」


 光樹君が、「ふん」と鼻を鳴らして、そっぽ向いた。明日香ちゃんはその言い方が癪に障ったのか、顔を引きつらせて、立ち上がった。


「なっ。テメー、いい度胸じゃねーか。表出ろや!」

「ちょ、明日香、落ち着け」


 隼人君が明日香ちゃんをなだめる。明日香ちゃんはちらりと隼人君を見ると、仕方なさそうに席に着いた。

 少しビビっていた光樹君は少し、驚きながらも、言い張るように言った。


「と、ともかく、俺が案内してやる!」

「え、でも」


 俺は、少し口を挟む。しかし、それを隼人君は止めた。


「あ、俺さ、面白い本見つけてよー。明日香、昼休みにどう?」

「え! マジ?」


 明日香ちゃんが、隼人君の台詞に目を輝かせる。何だか、断れない。


「あー、じゃあ、光樹君にお願いしようかな」


 俺は仕方なく言った。本当は、明日香ちゃんにお願いしたかったんだけど。

 俺は小さく溜息をついた。





 昼休み。給食を食べ終わった俺は、光樹君に校内を案内してもらった。三階まで回り、一階の教室へ帰るために階段を下りていたら、光樹君が口を開いた。


「あのさ、俺は、一番の敵は隼人だと思う」

「は?」


 意味の分からない台詞に俺はすっとんきょな声をあげた。


「そのまんまの意味。……まあ、いいや、忘れて。何でもねーよ。ただの独り言」


 光樹君は溜息をついて、階段を下りるスペースを早めた。俺も、それについていった。

 このとき、自分の気持ちに気付いていたない俺は、光樹君の台詞を意味の分からないまますぐに忘れた。

八時とかほざいといて、これはないだろっ!と思うかたは遠慮なく突っ込んでください。深く反省しているので……。あ、いや、Mではありませんよ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ