五十三笑 俺のお別れ会
時が経つのは早い。もう既に、春休みになり、後、一週間で俺は引越す。
荷物をそろそろまとめようかと動き始めた時、電話が鳴った。
「もしもし」
『あ、慎ちゃん!?』
「え、あ、明日香ちゃん?」
電話の主は明日香ちゃんだった。俺は驚いて、子機を落としそうになった。
『そ、あたしだけど。今日暇? 慎ちゃんのお別れ会をやろうと思ったんだ。丁度、今日しか皆都合会わなくて』
「お別れ会……」
ゆっくりと繰り返す。胸が熱くなった。
俺のためにお別れ会をしてくれるなんてっ……。
「空いてるよ!」
『ほんとう!? 良かったぁ。メンバーはねあたしと澪と理沙ちゃんと光樹と隼人だよ。もう皆集まってるから、あたしんち集合』
「分かった!」
俺は返事をして電話を切ると、急いで支度して出かけていった。
ピンポーンと明日香ちゃんのインターホンを鳴らす。
明日香ちゃんが迎えてくれた。
「いらっしゃい」
「えっとお邪魔します」
「うん。さ、入った入った!」
明日香ちゃんとともにリビングに入る。すると、パンパンッと派手な音が鳴った。
「うわっ」
驚く俺。隣で明日香ちゃんは耳を塞いでいた。
「びっくりしたか?」
光樹君が代表で出て来る。俺は頷いた。
大きな机の上にはたくさんのお菓子と人数分のお菓子が乗っていた。
「きょうさ、お母さんも誰も遅くまで帰ってこないから、盛り上がれるよ!」
「おう、ほら、菓子あるから」
「あたしたちで作ったのもあるんだよ」
隼人君と小坂さんと星野さんも笑顔で迎えてくれた。
「ささ、席着いて。何する? ゲームしよっ」
「その前にプレゼント」
「「プレゼント?」」
明日香ちゃんと俺の声がはもる。どうやら、俺だけではなく、明日香ちゃんも知らないようだ。
「ほい、俺は、これ!」
光樹君が俺に小さな箱を渡す。俺はドキドキしながら開けてみた。それは写真立てだった。
「うわぁ、すごい」
「これに俺らの写真でも入れてくれよ」
「ほんじゃ、次俺」
隼人君から貰ったのは、サッカーボールのキーホルダーだった。
隼人君、俺がサッカー好きなの知ってたんだ。
星野さんから貰ったのは文房具セットだった。
そして小坂さんは――
「あたしからはこれ!」
――白い封筒だった。
「あ、空けるのは帰ってからにしてね」
小坂さんはにっこりと笑った。
「ありがとう」
「ごめん、あたし……用意してないんだけど……」
明日香ちゃんがきまづそうに目を逸らす。
俺は慌てて手を振った。
「え、全然、いいよ! お別れ会開いてもらったし」
「でも……」
「そそ。しょうがないって。ほら、ゲームしよ」
隼人君が促してくれる。明日香ちゃんはそれでも気まずそうな表情だった。
結局俺らが帰宅したのは午後七時過ぎだった。
帰ってからベットに寝転がる。
ふと、小坂さんから貰った封筒を思い出した。封筒の中を開けてみる。
その中には
明日香ちゃんと俺のツーショットを中心に複数の写真が入っていた。
どれもこれもいつ撮ったんだっていうものばかりだった。
俺はすごく嬉くて、涙が溢れそうになって、唇を噛んだ。
次回はクライマックスです。ここでクライマックスの予告をすると、二人の視点で、慎之介が引越す時の話を書きます。
い、一応、ネタバレのつもりじゃないんですが……。