五十一笑 バレンタインの彼
慎ちゃんの引越す騒ぎもだいぶ収まった二月。慎ちゃんが引越すまで後一ヶ月。バレンタインデーの日がやってきた。
あたしはお菓子を作るのが好きだ。毎年、光樹と澪と理沙ちゃんにかかさずバレンタインデーに何かお菓子をあげている。今日は、六つ作った。お父さん、光樹、澪、理沙ちゃん、そして……慎ちゃん。
慎ちゃんからの告白(?)を振ってからあたしは、なんとなく慎ちゃんと気まずくなり、慎ちゃんと話すことが少なくなった。
あげようか、どうしようか迷いながら教室の扉を開ける。すると、女子たちが騒いでいた。
一つの場所に集まっている。その女子の間から中心を見ると、そこにいたのは、慎ちゃん
だった。
「あ、慎ちゃん」
こんなにもててたんだ……と思わず呟く。すると、聞こえたのか、慎ちゃんはこちらに振り向いた。
「あ、明日香ちゃん」
慎ちゃんはたくさんのチョコを抱えて、あたしに近づいてきた。
そして、あたしに向かって片手を突き出してくる。
「何?」
不思議に思って訊くと、慎ちゃんはにっと笑った。どこか、光樹に似ていた。
「チョコ、ください」
「は?」
思わぬ発言に拍子抜けするあたし。慎ちゃんはどこからか紙袋を取り出し、女子から貰ったチョコを紙袋に突っ込んだ。
「俺、光樹君のように積極的になるんだ」
「はえ?」
「だから、チョコくれ」
にっと笑ったままの慎ちゃん。あたしは唖然としながらすぐに我に返り、言われたことを理解した。途端に頬が赤くなる。
「ばっかやろぉぉぉぉぉ」
あたしは思いっきり、鞄を振り上げ、慎ちゃんに向かって振り下げた。
「がっ」
不意をつかれた慎ちゃんは回避できず、みぞおちに鞄を喰らった。
呻き声が上がる。
「いっつぅ……」
崩れる慎ちゃんに背を向けて、あたしは自分の席に着いた。
「ちょ、明日香、何があったんだ?」
ちょうど、一緒に登校し、寄り道してやってきた光樹が教室に入ってきて目を丸くした。
あたしはふんと鼻を鳴らして、
「お前のせいだよ、ばーか」
と言った。光樹はますます目を丸くした。
投稿遅れてすみません。今回は二章投稿します。
ぜひ、見てください。




