四十八笑 引越す前に
「えー、突然ですが、HRを終わる前に、一つお知らせがあります。では、片桐さん」
先生が、俺に目を向けてくる。俺は、それを合図に立ち上がった。
「えっと、俺、片桐慎之介は、春休みに引っ越すことになりました」
『ええ――――』
クラスメイトの驚愕の声。俺は、目を逸らすように視線を逸らした。
「まだ、去年引越してきたばかりじゃん」
「一年しか経ってないのに!」
「嘘だろ! 二年でも一緒にいられないのかよっ」
みんなから溢れる声。
「はいはい、後二ヶ月もないから、みんな仲良くするように」
先生が、パンパンと手をたたいて、静かにさせる。俺もゆっくりと座った。ちらりと視線をずらして明日香ちゃんを見た。
明日香ちゃんも、こっちを見ていた。視線がぶつかり合い、俺は慌てて目を逸らした。
朝のHRのチャイムが鳴る。先生は何も言わずに出て行った。
「慎ちゃん」
声をかけられ顔をあげた。明日香ちゃんがたっていた。
「引越すんだ」
「うん。昨日、俺も聞いたんだ」
「そっか。じゃあ、たくさん遊ばないとね! 後、少しだもん。……あ、うん。そこにあるよー。じゃあ、慎ちゃん」
俺が答える間もなく、明日香ちゃんは友達に呼ばれ去っていった。
意外にもあっさりした反応だったなー。
ほっとするけど、すっごく悲しい。もうちょっと、悲しい顔してくれても、よかったのにな……なんてね。
「ねえ、片桐君」
また、声をかけられる。俺は顔をあげた。
立っていたのは上田さんだった。
「ああ、上田さん」
「引越すんだ。ねえ、このままでいいの?」
「え?」
「だから、このまま白石さんに告白しなくていいのかっていう話」
「そ、それは」
「もう、一年もすきなんでしょ? 悔しいけどさ、片桐君は振り向いてくれないもの。だったら、応援してあげようとしてるの。」
「あ、ありがとう」
上田さんはさっぱりしていた。秋から性格が変わっている。
「で、ほら、応援してあげるから。早く、告白しなさい。玉砕しても、引越すんだから気まずくならないし、オッケーだったら遠距離恋愛でいいじゃん」
「で、でもさ……」
「もう、じれったいなぁ! わかった、あたしがやる」
「はい?」
意味の分からない事を言い出した上田さんは俺から目を逸らし、明日香ちゃんの方へ近づいていった。俺は呆然としてみていた。
「白石さん」
「え? 上田さん?」
何を言うのかと動けないまま、黙って見ていると、上田さんはとんでもないことを言い出した。
「片桐君が白石さんのことを好きらしいけど、付き合っちゃえば」
「ええっ!!」
「は?」
僕は驚いて立ち上がった。
今日は時間があるので、二つ投稿です!
以上!