四十七笑 限られた時間
光樹はいつも通りあたしを迎えに来た。
「おう」
「おはよう。ねえ――」
「何だよ?」
光樹はいつもと変わらない。
あんた、理沙ちゃんに告られたんでしょ? 何で、いつも通りなんだよ。少しは、きまずくなったりしないわけ? 仮にもあたしだって理紗ちゃんの幼馴染なんだけど。ねえ、理紗ちゃんが可哀想だと思わないわけ?
たくさんの疑問が頭に浮かぶ。でも、言葉が喉に引っかかって声にならない。光樹は無言のあたしを見て、不機嫌そうに頬を膨らませるふりをした。
「んだよ。用事ねーのに、呼ぶなっつーの」
「ああ。悪い」
素直に謝る。光樹は「えっ」とすっとんきょな声をあげた。
「何で、謝んだよ。熱でもあるんじゃねーのか!?」
「ないから」
軽く返事をして、また歩き続ける。光樹はつまらなそうにしていたが、一緒についてきた。
「……そういやさ」
光樹が学生鞄を背負いなおしながら呟いた。
「俺、星野に告られたんだ」
「うえっ」
あたしは驚いて変な声をあげた。もし、水を飲みながらだったら吹いているところだった。
まさか、こいつから切り上げてくるとは思わなかった。
「な? 少しは嫉妬したか?」
「それはしないけど。ねえ、振ったんでしょ?」
「ん……まあ」
「何で?」
「俺は明日香ひと――」
「理沙ちゃんはずっとあんたが好きだったんだよ」
「だから――」
「付き合えばいいのに!」
「黙れ!」
あたしは喉のつっかえが取れて、思っていたことを全部言おうとした。しかし、光樹が大声で一喝した。思わず、肩がびくりと動き黙った。
「俺は諦めてねーって言ってるだろーが! そんな半端な気持ちで付き合えるかよ! 少しは考えろ! ……あ、悪い」
怒鳴り散らしながらあたしに向かって言ってくる。それから我に返ったように、目を逸らして謝られた。すごい、正論だ。あたしは、考えてなかった。
「いや、あたしこそ悪かった」
気まずい空気が流れる。あたしらは無言のまま歩き始めた。
「おっす、お二人さん。朝からお熱いようで!」
暗い空気を漂わせながら歩いていると、後ろから元気ハツラツな声がした。
「あ、澪」
「おっはようさん。仲いいですなあ」
「いや、今の空気で仲良く見えるのは澪だけだよ」
ちらりと光樹を見ると、光樹も苦笑している。
「よう、光樹、白石」
「おはよう、明日香ちゃん。ええっと……光樹君」
ちょうど、十字路で隼人と理紗ちゃんとも会う。
いつものメンバーで校門をくぐろうとすると、前に見覚えのある顔を見つけた。
「慎ちゃん!」
「あ、明日香ちゃん。おはよう」
呼んでみると慎ちゃんはゆっくりと振り向いた。どこか元気ない。慎ちゃんは小さくあたしに挨拶すると、立ち止まった。
「俺――春休みに引越すんだ」
「え?」
慎ちゃんは無理やりな笑顔を作ってあたしに爆弾発言をした。もちろん、後ろの四人も驚いていた。あたしも唖然とした顔で慎ちゃんを見つめた。
あたしたちが一緒に居られる時間は限られている。
うむむむ。。。クライマックスが間近に迫っているというのに、書くことがないです……。
……宣伝をします。えっと、次回作は
『死神さんが御登場!』
という題名の、ラブコメファンタジー?にしようとおもっています。
この話が終わったら投稿しますので、よかったらそちらも御覧下さい。
まったく感じが違うと思うので、楽しめていただけたらな……と思います。