四十笑 どうすればいいの?
光樹に告られた。まだ、返事は出していない。
あたしは、休み時間になる度に図書室へ出かけた。一年で図書室が近いのがいい。
光樹があたしに告白したのは最初は夢だと思ってた。でも、何故かその光樹があたしに告白したという噂が広まっていて、現実だというのを悟ってしまう。
「はぁぁぁぁ」
あたし読み途中の本を手にして大きく溜息をついた。
返事は今、悩んでいた。好きなのは、光樹じゃない。隼人か――慎ちゃんだ。まだ、はっきりしてなくて、この事は忘れることにしたんだ。
でも、告白されるなんて初めてだし、せっかくあたしを好きって言ってくれたんだから、断るにも断れない。
付き合ってみようかなぁ――駄目だ、そんな半端な気持ちじゃ、申し訳ない。でも、光樹はあたしが隼人を好きだって言う事は知っていたんだ。それでも、告白してくれた。それって、隼人が好きでもいいから、付き合ってくれ。っていう意味だよね。
色々な気持ちがあふれ出し、収拾がつかない。
「あら、どうしたの。白石さん」
どこからか声を掛けられる。あたしは驚いて振り向いた。
立っていたのは、須川美紀先輩だ。図書委員でこの図書室を訪れる度に仲良くなった二年の先輩だ。
「あ、美紀先輩!」
「何か悩んでるじゃない。本のページもあまり進んでないみたいだし」
相変わらず、先輩の洞察力はすごかった。
あたしは、うつむいて、考えた。そして、今までの事を全て話した。
あたしには好きな人がいる。でも、転入してきた男の子の事も好きらしいということ。幼馴染に告白されたという事。幼馴染は好きな人がいてもいいから付き合ってほしいということ。
先輩は、指をあごの下にあてて考える素振りをみせると、すぐに笑った。
「なら、関係を崩さなきゃいいじゃない」
「え?」
「その、好きな人のことを忘れる――っていうのは無理か。そうね、今までのままの関係が好きだからって言う方が幼馴染として付き合いやすいでしょ? 無理に付き合うと、色々ぎくしゃくしちゃうし。ね? どうかしら。まだ、中学一年で付き合うのって早いし」
先輩の言葉はかなり残酷かもしれなかった。でも、確かに、と思うところがたくさんあった。断れなかった理由もわかった。
そうか、あたしは今までの関係が好きだったんだ。いつものようにどつきあいながら笑ってはしゃいぐのが良かったんだ。
「先輩、ありがとうございます!」
あたしは先輩にお礼を告げて、会釈をした。それから、飛び出すように図書室を出た。急いで、教室に向かう。
思いっきりドアを開けて、あたしは、光樹に近づいた。
よくよく見ればもう四十話ですねぇ。自分でも驚きです。読んでくださる方、いつも感想を書いてくださる方、ありがとうございます! これからも執筆頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします。
お知らせですが、次回から、受験生ということで、毎週日曜か土曜に投稿することになりました。だいたい日曜の午後6時〜10時までに投稿します。