三十九笑 それぞれの思い
光樹君が明日香ちゃんに告白したらしい。
その話を聞いたとき、俺は驚いてクラスに響くくらいの声をあげた。
「ちょ、声大きいから! ああ、俺、現場見たんだよ。高橋が告白してるところを」
正直なところ、光樹君は絶対に明日香ちゃんに告白なんかしないと思っていた。幼馴染だし、かなり言いにくいはずだろう。
それでも、光樹君は言ったんだ。
俺はその話をしてくれた友達に訊いた。
「で、明日香ちゃんの返事は?」
「それが、断ってもなければ、いいよとも言ってない」
「嘘だろ……」
俺は大きくショックを受けた。断っていないということは、もしかしたら付き合う可能性もあるんだ。しまった、光樹君に先に越された。
このまま続けて告白はしにくい。どうしよう。
ちらりと明日香ちゃんの席を見ると、明日香ちゃんはいなかった。
「おい、その話本当かよ」
隼人君がやってくる。俺は頷いた。
「あいつ、まじでやったのか……」
隼人君は、光樹君の席を見ながら言った。光樹君は席に座って顔を赤くしながら固まっている。隼人君の視線に気付くと光樹君は席を立って俺らのところにやってきた。
「お前、本当に告白したのか」
「ああ。返事はまだだけど」
「でも、明日香ちゃんには――」
「知ってるってことも言った」
光樹君は顔を赤くしてうつむいた。隼人君は複雑そうに苦笑してから、首を振り、言った。
「すげーじゃん! お前、俺が手伝わなくてもできんじゃん! 返事は、別に断ってるわけ
じゃねーなら、オッケーかもしれないじゃん! 前向きにだぞ。すげー、いわなきゃな」
そう、可能性はあるわけだから、俺も怖い。そして、明日香ちゃんは隼人君が好きなわけで、隼人君は気付いてなくて、それでも光樹君は告白した。
明日香ちゃんの気持ちも揺らぐはず。ずっと片思いでも気付いてくれない隼人君を好きになるより告白してくれた人のほうが、いいんだから。
「隼人」
光樹君が真剣な目で隼人君を見た。隼人君も笑うのをやめ、光樹君を見る。
「……お前、好きなんだろ」
「……」
「ええ!?」
隼人君に好きな人がいたのか! 隼人君はうつむいた。
「いるんだろーが」
「……ああ、いるよ。お前が告白した白石だ」
隼人君は観念するように言った。
「俺は、元々小坂が好きだった」
ええ! 小坂さんを!?
「最初は、小坂に近づく為に白石に近づいた。それから光樹に会って、光樹が白石を好きだっていうのが分かった。俺は、自分の恋を叶えるためにも応援すると言った。で、小坂に夏祭りに告白した」
告白してたんだ。でも、あの日、小坂さんと隼人君は喧嘩をしてたのに。
「振られた。お前みたいな鈍感野郎は願い下げだってさ。何で、鈍感なのか教えてくれなかった。そんな振り方しなくてもいいのにな。小坂だって俺の気持ちに全然気付いてなかったくせに。俺、めちゃめちゃ悔しくて、あいつが嫌いになった。でも、なかなか縁が切れなくて、
ずっと白石たちといたら、何か好きになってたんだ。でも、また断れるのが嫌で告れない」
隼人君は息を吐くと、口を閉じて悲しそうに笑った。光樹君はただ黙っている。
「ひでえな、俺。俺は、自分の為に白石を使って小坂に近づいた。で、振られて今度は白石を好きになった。そのまでに、光樹も片桐も利用した。自分勝手すぎて自分でも笑えるよ」
「……お前は気付いていたか」
ゆっくりと光樹君が声をしぼりだすように言った。
「何をだ」
「気付いていないならいい。隼人」
「何だ」
「俺はお前がだいっきらいだ。今の話を聞いて、もっと嫌いになった」
「……」
「光樹君……っ」
「でも、友達としてはすっげいい友達だと思ってる」
隼人君は大きく目を見開いた。光樹君がにっと笑った。
「だから、これからも遊ぼうぜ。ま、明日香は俺が先に付き合うんだからな」
「……ああ。俺もまけねーぞ」
二人が照れくさそうに笑った。それから、拳を軽くぶつけあった。
何か、俺一人で置いていかれている気がしたのは気のせいだろうか。
2話目です。
実は、隼人も明日香ちゃんが好きだったんですね〜。
隼人の元好きな人が澪にして、ちょっと複雑にしてみました。




