三十八笑 お前が好きだ。
「……ねえ、何があったの」
あたしは、隣に並んで歩く光樹に言った。今日は慎ちゃんはいない。どうやら、他の人と帰るらしい。
今日、隼人と澪が喧嘩した。何故かは知らないが、二人で怒鳴りあっていた。あたしも、途中で気付いて、隼人と澪の方を見たけど、澪はすっごく不機嫌そうな顔をして隼人たちから離れていった。澪に聞いても何も答えない。隼人は苦笑するだけだった。
「……わかんない」
光樹はあたしから目を離しながら言った。
「はあ? 分からないって、ずっと一緒にいたじゃん。分からないはないでしょ。少しは何か知ってるんじゃないの?」
「だから知らないってば」
光樹が素っ気無く言う。しょうがないから、あたしも「そう」と呟いた。
「それよりさ、お前こそどうしたんだよ」
「え? 特に変わらないけど」
「嘘付け。今日まで、話しかけても上の空だったし。何かあったんだろ」
ああ、あれは実は澪たちが喧嘩している間に解決していた。
「大丈夫。もう、終わった」
「……何、悩んでたんだ」
「言えない。レディーの秘密」
「どこに、女っていたっけ?」
「うわ、ひどっ。ともかく、もういいんだよ」
「そっか」
良かった、訊かれても答えられないから。
ふうと安堵の息を吐くと、光樹が立ち止まった。
「……俺さ、好きなんだ」
「へ? 誰が?」
「…………………………お前」
「なっ!?」
今、こいつ何って言った? 好き? 誰が? お前? それってあたしのこと?
「ちょ、おいおい! 嘘でしょ? 今日、エイプリルフールだったっけ?」
「嘘じゃねーから」
光樹君が顔を真っ赤にしてあたしを見る。
絶対ない。だって、いつもあたしをいじめてるくせに――――
「そ、それだけだから! お前が、隼人を好きだってこと知ってた!」
「え! 知ってたって、何で!?」
「だって、顔が全然違うから。すっげー楽しそうだったから。でも、すす好きなんだよ! だから!」
「俺は、隼人がだいっ嫌いだぁぁぁぁぁぁ! それから、片桐も嫌いだぁぁぁぁぁぁ!」
「ちょ、叫ぶなよ! 何で、慎ちゃんも嫌いなの!?」
「うるせぇ! じゃ、俺、先帰るから!」
光樹が顔を真っ赤にしたままさっていく。
あたしは呆然と立ち止まった。
嘘、あたし、あいつに告白された?
あたしは両手で頬を押さえた。案の定、頬は熱かった。
昨日、投稿しようと思ったんですが、インターネットが何故か繋がらなくて投稿できませんでした。
今日、2話分投稿します。