二笑 俺が見た彼女
彼女と初めて出会った時、俺は驚いた。ファミレスにやってきた彼女は、青のパーカーにジーンズという、シンプルな格好でやってきた。髪もショートで、今時の女の子という感じがしない。それが彼女の第一印象だった。
彼女は明日香というらしい。俺は、急な呼び捨ても変なので、ちゃん付けをして呼んだ。明日香ちゃんは少し苦い顔をしたけど、すぐに微笑んで頷いてくれた。
明日香ちゃんのしゃべり方は、「あたし」という一人称以外、男の子ぽかった。語尾に「よ」とか「わ」とかつけず、ゲームをするときも、普通に暴言を吐いていたりした。でも、弟には優しく接している、不思議な人だった。
そして、俺らに「慎ちゃん」と「敬ちゃん」とあだ名をつけてくれた。少し、恥ずかしいけど。
小学校の話はかなり盛り上がり、緊張も解けて、俺はたくさん話をした。明日香ちゃんは俺にとって初めて、女子の中で話しやすい人だった。
「あ、電話」
明日香ちゃんが、ゲームを止めて、立ち上がる。俺は、明日香ちゃんの後姿から、目を離せなくなった。
電話をしている時、時々冗談を入れて、笑いながら話していた。
明日香ちゃんは、電話を切ると、明日香ちゃんは俺の隣に胡坐書いて座り、ゲームを再開した。
「友達?」
自然に聞いてみる。
明日香ちゃんは小さく頷き、
「そ。幼なじみ」
と素っ気無く言った。明日も遊ぼうと思っていた俺は少し残念に感じた。でも、今考えると何故、女子と遊ぼうと思ったのか考えられない。
「そう。明日は、じゃあ、遊べないんだ」
「うーん……じゃあさ、明日一緒に遊ぼうよ! あいつらならオッケーだろうし。男子だから大丈夫だって」
明日香ちゃんは残念そうに呟いた俺を見て、少し考えて、言った。
思わず、明日香ちゃんの笑顔に見とれてしまう。
ドクン、と心臓が鳴った。何故か頬が火照っている。俺は慌てて視線を逸らした。
「分かった。いく」
俺が言うと、明日香ちゃんは、「うん」と返事をして、ゲームに視線を戻した。
午後八時。俺は、夕食もご馳走になり、明日香ちゃんの家から俺と弟しかいない家に帰ってくると、自分の部屋のベットに寝転んだ。枕に思いっきり、顔を埋める。
「……はあ」
一息ついて、仰向けになる。
明日、楽しみだな。
男友達ができるのは嬉しい、というのもあるが、明日香ちゃんと遊べる事が何よりも嬉しかった。中学生にもなって子供かよと思う。
明日の午後一時に、明日香ちゃんの家に集合ということになっているらしい。でも、俺は、もっと早く来ていいからと誘われた。
「お兄ちゃん、入るよ」
ドアの向こうから弟の声がして、ドアが開く。
「何だよ?」
「ふふ。お兄ちゃん、今日楽しそうだったなーと思って」
「ああ。そのことかよ」
「うん。お姉ちゃん、優しい人だったね」
「……そうだね」
「ねえ。お兄ちゃん、明日、僕も行きたいよ」
「駄目だ。明日は、お前、小学校の手続きが、あるだろ?」
「何で。お兄ちゃんだって、あるじゃん」
生憎、俺は午前中に済ますということになっている。弟は、その後という事で、午後からだ。
それを伝えると、弟は大きく頬を膨らませた。
「むー。ずるいよ、お兄ちゃんばっかり」
「あー、はいはい」
弟は、あの時も、この時も、とたっぷりと皮肉を言ったあと、部屋から出て行った。
明日のためにと、立ち上がり、ゲームの入っている箱を探る。
お菓子も持っていこうかな。
俺は、遠足の前日のように浮かれながら、明日の用意をした。
今回は、慎之介の視点です。
作者の私は、女なので、男子の気持ちとか分かんないんですけど、そこらへんは、私の理想ということでww
あ、でも、これは一応実話のつもりですよ?え?こんなのあるわけない?いえいえ、あったんですよ。実際にww
慎ちゃんの気持ちは分かりませんが。