三十七笑 崩れゆく関係
明日香ちゃんがいつもと違う……。
街探検が終わり、体育大会も終わって数日後。もう、季節は十一月に入っていた。俺は横目で明日香ちゃんを見た。
明日香ちゃんとは街探検以来話していない。俺、明日香ちゃんと喧嘩したっけ?
「おい、明日香!」
「……あ?」
「どうしたんだよ。お前。何かぼけてる?」
「あー、そうかも」
光樹君も不思議そうに眉を寄せた。
隼人君が声をかけても、ただ黙って外をぼーっと見ている。
「あ、明日香ちゃん。どうしたの?」
俺が声をかけると、明日香ちゃんは一瞬反応してゆっくりと首をこっちに向けるが、
「上田さんはどうしたの」
と、いつも同じ台詞を吐いて黙ってしまった。小坂さんに話しかけると、一瞬困った顔をしてから、「わかんない」と呟いた。
「どうしたんだろう」
俺ら、三人組はただただ首をかしげるだけだった。
「もう一回、小坂さんに訊いてみる」
ある日、俺がそう、男子二人に告げてから小坂さんの傍に寄ろうとしたとき、隼人君に肩を掴まれた。
「何で、あいつに訊く」
「え? だって、小坂さんは明日香ちゃんの親友だし……」
俺が答えると、隼人君は眉間に皺を寄せ、俺の肩を掴む手に強い力を込めてきた。
「あいつに訊くな」
「え? なんで?」
「俺は、あいつがだいっきらいなんだよ」
「な……え?」
隼人君から初めて聞いた言葉だった。
「嫌いってどういうことだよ?」
「夏休み以来、意味不明なことばっかり言いやがって」
ちっと隼人君が舌打ちをする。俺は驚いて言葉がでなかった。
「嫌いでけっこうです」
どこからか小坂さんがやってきて、隼人君を睨んだ。
「あんたは、本当に気付いてないわけ? 実は気付いていたりするのかもね」
「どういう意味だ!」
「本当に気付いてないなら最低。女子に好かれてるからって調子乗るな!」
「だから、何を気付いてねーのか言えよ!」
「もっと、周りを見ろ! 可哀想だよ!」
「何がなんだよ! 片桐だって光樹だって分からないだろ!?」
俺と光樹君は隼人君から目を逸らしてうつむいた。
ごめん、分かるよ。小坂さんが言いたい事。
つまり――明日香ちゃんは隼人君が好きなんだ。
「俺だけわかんないのかよ。何事も言わなきゃわかんねーんだよ! なんだよ、なんなんだよ」
「おい、隼人、落ち着けって」
「あんた、勉強ができるだけで、本当は馬鹿なんだ。もう、いい! あたし、鈍感な男子は大嫌いなの。慎ちゃんも、高橋君ももっと周りを見れば?」
小坂さんは隼人君以外にも俺と光樹君を睨んで去っていった。
俺らの関係が砂の城のように簡単に崩れてしまった。
……特に後書きで書くことがありませんね……。
ということで、以上です。(笑)